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苦しかった自己破産裁判の一年間

私は、会社経営を二十数年間してきた。経営していく中で節税のためグループ会社を作りその社長を妻に任せた。
倒産・自己破産に追い込まれたきっかけは、私が大病をして一か月入院した2年後に社員全員22人から辞表が出されたことだった。年商一億の仕事を残し会社を存続させると言う計画を税理士とまとめた直後だった。グループ会社の社長の妻は「もうこれ以上は嫌です」と言い法律的にも社長である妻の言により会社存続の希望は断たれた。私の一家が生活できなくなる判断をした妻とは即刻離婚した。
私は、自選の弁護士を依頼して2012年に東京簡易裁判所に私の経営していた会社の倒産と自分の自己破産の申し立てをした。申し立てをして最初に裁判所に行った時に裁判の一覧の中に自分の裁判案件を探したのだが、自己破産の裁判の多さに驚いた。一覧の紙は天井から足元まで続いていた。こんなに多くの自己破産者が今日裁判を始めるのかという思いが湧いた。弁護士の助言により特定の債務者と接触しないようにと地元と仕事をしていた地域から3か月間姿を消した。逃避行や逃亡と言うのは、こういうことを言うのだろう。まるで犯罪を犯した犯人が逃亡生活をする様な人との接触は一切せず安ホテルを転々とする3か月生活の生活だった。
漸く免責の結審に至ったのは一年後の2013年の8月15日過ぎだった。私の人生の中でもっとも苦しく不安定な一年を過ごした。逃避行の3か月が過ぎてもまるで犯罪者扱いの債権者からの電話などが続いたので、結審迄の間は、犯罪者の様な生活と面倒を見なければならない介護中の母の介護に追われた。私の人生の中でもっとも苦しく不安定な時期だった。
結審後「復権証明」を区役所に行って取得して、アルバイト生活が始まった。基本、破産者は人に雇われて仕事をすることは問題なく出来ると言うのが破産法により決められている。破産裁判中はアルバイトできない職種もあり「復権証明」は正しくこれからの人生の出発を意味していた。裁判で免責結審され10年たった今も未だに細かい債権者が私を見つけて金払えと迫られ犯罪者扱いされることがある。

「自己破産法」を参考までに以下に転記させていただく。
破産法とは、第一章 総則(目的)第一条 この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的ととなっている。
(破産手続開始の申立て)
第十八条 債権者又は債務者は、破産手続開始の申立てをすることができる。2 債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。
(法人の破産手続開始の申立て)
第十九条 次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。

上記破産法の引用にあるように「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」と言う事が重要で、免責の結審の後で国選弁護からこの裁判に纏わる債権を結審後でも支払らうと「公平性を欠く」ため裁判自体がひっくり返るからこの裁判の債務は、この後も支払らう事が無いよう厳重注意するようにと裁判所を出る時に言われた。しかし債務者が破産法を詳しく知っているわけもなく犯罪者同様の債務の取り立ての電話は、裁判結審後10年たった今でも時々ある。この裁判に纏わる弁護士費用などの総額は600万近くかかりお金を用意するのにとても苦労した記憶がある。自己破産の債務に関しては、支払えないが支払えない事を説明する義務は一生付きまとうのだろう。