見出し画像

馴れ初め編①

19歳の冬、夫になる人と出会った。

ブロードウェイミュージカルが大好きな私はふと一人でNYに行ってみたいと思い立った。
10代ももうすぐ終わるのだ。
二十歳になる前に海外一人旅に行ってみたいと思った。

さっそく親に許可をとりガイドブックで色々と調べて計画を練り、旅行代理店へ赴く。

旅行代理店の担当の女性の方はとても親切で、ミュージカルのチケットや希望のホテルの予約をしてもらい、何度目かの来店で最後に飛行機の予約をとってもらった。

ちょうど良さそうな時間の便があったのでこの便でとってくださいとお願いした。

その場でてきぱきとPCをたたき予約・・というところで

「あっ・・ちょうど今満席になってしまいましたね・・」

「すぐ次の便見ますね」

「はい、今度は無事おとりできました!」


第一希望の時間の便がとれなくて、おそらくその1時間後くらいの便が無事予約できたのだが・・
このほんの数分の差がなければ私と夫は出会えなかったのだ。

この時の僅差で出会った人と結婚したことを当時親切に対応してくださったこの旅行代理店のAさんに是非お話をしてお礼を言いたかったがもう現在その店舗は閉店してしまった。


・・ついにNYに発つ日
たかだが一週間の旅行だが何せはじめての一人海外旅行。ワクワクと不安が入り交じった気持ちで空港に向かう。

無事出国ゲートも抜け、いよいよ飛行機に乗り込む。

2列席の窓際のシートに座る。

ぼんやりと窓の外を見ているとすぐ傍で出張っぽい男性2人組が搭乗して荷物を上にしまったりしている。
雰囲気でなんとなくあの人が隣の席の人だとわかった。

その時の印象は・・『うーん・・隣男性か・・正直女性が良かったな』
というのが正直な気持ちだったのだが、
CAさんとのやり取りなどを見ているととても温厚そうな人で安心した。

思っていた通りその男性が隣に座った。その時は会釈ぐらいしたかもしれないが、特になにか言葉を交わすこともなかった。

そう、、
この隣に座った一回り以上年上の男性が今の私の夫だ。

連れの男性はすぐ前の座席に座った。

飛行機はついに離陸し一路NYに向かう。

私は音楽を聴いたり、ガイドブックを見たりして時間をつぶしていていたが離陸からしばらく経ったときトイレに行きたくなった。

エコノミークラスに乗ったことがある人がはわかるとおもうが本当に座席の前は狭い。
新幹線とは全然違う。
座っている膝が前の座席にスレスレという具合だ。
当然窓際に座っている私がトイレに立つには隣の人にちょっと足をずらしてもらうなどしなければならない。

この時将来夫になる隣の男性はもうスヤスヤと気持ち良さそうに寝ていた。


しかし仕方がない。
私は「すみません、すみません」と声をかけた。

すると彼ははっと起きて少し驚いた様子。

「すみません、お手洗いに行きたくて・・」


「ああ!どうぞ」

朗らかに、本当に朗らかにそう言って足をどけてくれた。

『いい人で良かった・・』

お手洗いに行って帰ってくるとまた嫌な顔ひとつせず足を避けてくれた。

「すみません、ありがとうございます。」

そう言って着席すると

「ご旅行ですか?」

とその人が言った。

これがすべてのはじまりだった。


この後あまり内容は覚えていないがあたりさわりのない会話をしたと思う。

「はい、旅行です」

「へぇ、学生さん?僕は出張なんです」

「学生ではないんですけど・・はじめての一人旅で・・」





こんな感じの会話をしたはずだ。
しばらく話をしていたが、消灯の時間になった。

私たちも会話をやめて眠りに入る。

あまり寝やすい環境ではないがしばらくするとうつらうつらとしてきた。

そんな半分夢の中半分ぼんやり意識があるような状態が断続的に続いたのだがこの時私は不思議な予感めいたことを夢に見る。

夢に見たのか、覚醒していて頭に浮かんだのか正直自分でもよくわからない。

スピリチュアル的なことは全く信じていない私だがこのことは頭に浮かんだ予言のようなものだと今でも思う。

『今隣にいるこの人は私の人生に大きな影響をもたらす人だ』

そう脳の中に浮かんだ。


つづく





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?