鍵穴のセカイ

　今日も不思議な鍵穴からセカイを覗いてみる。そーっと物音を立てずにこっそりと見る。鍵穴から見るセカイには毎回過去の自分が見えた。
　昨日の鍵穴から見るセカイは部活動に情熱を捧げる自分だった。勉強面では、低空飛行な成績なので部活を中心に頑張った。端から見れば汗水垂らす爽やかな青春とは言い難いがそれでも、ゼリービーンズの如く輝く大切なセカイだった。
　今日の鍵穴から見るセカイは緑の自然が織りなすセカイだった。セカイには昨日より幼い自分が元気に走り回った。当時見たアニメのスーパーヒーローの真似をしながら走るが途中で躓いて転んだ。転んで倒れたまま涙を流した。泣きながら痛みを訴えた。その後は見なかった。見ると泣きたくなるので鍵穴から離れた。自分の過去から苦い思い出から逃げるように離れた。
　昨日は青春時代の輝く自分を鍵穴から見た。今日は少し辛い幼少時代の自分を鍵穴から見た。明日はどの時代の自分が鍵穴から見える？