半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語58
「母が私の指を思い切り嚙みます」
「おめでとうございます」
「今年もよろしく」
いつものお正月のように実家の玄関先には
母の得意な煮物の美味しそうな匂いが漂っています。
「ああ、おめでとう」
そういう母の弱々しい声が返ってきました。
部屋を覗くと、ベッドに腰かけている母が辛そうにしています。
「具合悪い?」と聞くと
「ちょっとね、お腹がね」
みると、腹水がたまり、おなかがパンパンに張っています。
「ちょっと診てもらった方がいいね」
「うん、まあ大丈夫だけどね」
と言っていま