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災害ボランティア参加者の話を聞いて考えたこと(2024/02/25)

 令和6年能登半島地震により、夫の地元も被災しました。夫の親族とその家屋は無事でしたが、近隣市街地での被災の影響は大きく、夫も私も心を痛めておりました。

↓地震数日後の心境の記事です。

 発災直後から、夫は「災害ボランティア」への参加を切望しておりました。夫も私もボランティア活動の事前登録しておりましたが、子供もいますので夫婦で同時に参加することは難しく、この度、2月後半の三連休で、夫だけ災害ボランティア(人生初)に参加してきました。このことを通して感じたことを書いてみたいと思います。本稿執筆時点で私自身は災害ボランティア経験はありません。

 まず、「自分自身の経験ではなく人からの伝聞である」、「そもそもn=1の伝聞」というご指摘もあろうかと思いますが、今の時点で私が思ったり考えたことを書き留めておきたかったので、その旨、ご了承ください。約3,700字です。少し長いですがよろしければお付き合いください。


■参加するまでの流れ

 夫は被災地に実家があるものの、被災地支援団体等とのコネクションがあるわけではなく、完全な「個人」としての参加でしたので、石川県公式のボランティアセンターに事前登録し、そこから送られてくる募集の案内メールに沿って参加申し込みをしました。2月後半の3連休なら参加できそうと考え、その日時の募集に合わせて申し込みました。このときは、募集開始時間(平日の正午)に合わせてPC前にスタンバイし、申し込みしていました。募集開始1分くらいで締め切られたそうです。

 その後、センターから参加承認のメールが届き、無事に参加することが決定し、案内メールに記載されていた必要な持ち物などをホームセンターに行って買いそろえました。また、金沢駅に7時台に集合でしたので、関東在住のため当日朝の出発では間に合わず、金沢に前泊しました。

■「注意事項」

 ボランティア当日は、活動に入る前に、「災害ボランティア活動の注意事項」という文書が配付されたり、オリエンテーションで注意事項の説明を受けたようです。
 この配布文書、A4用紙1枚に両面印刷でしたが、ほかの方でブログやSNSなどで画像を上げている方もいらっしゃいましたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが…(あえて、この記事では画像は上げません。)

 全部で14の項目について触れられていますが、特に印象的なものを抜粋します。

3.被災者の立場に立って接する
 「頑張ってください」「大変ですね」など、被災者との立場の違いを明確にするような言葉は慎み、相手の立場に立って接するように心がけましょう。

4.プライバシーを守る
 (前略)
また、被災地の状況等を写真などで記録する際、被災者の顔を撮影するときは本人の了承を得てください。倒壊した家屋なども個人の所有物ですので、プライバシーに気を付けてください。旅行に来ているわけではないのですから、原則写真撮影は禁止でお願いします。

5.ボランティア同士の衝突は避けよう
(前略)
現地でボランティア同士が衝突し、被災者に止められたり、巻き込むようなことでは、何をしに来たのかわかりません。

「災害ボランティア活動の注意事項」より

 おそらくですが、これらの注意事項というのは、実際に過去の事例で問題が発生したために書き加えられたということが推測されます。3番の注意事項に関しては、自分が被災した経験がない人であれば、悪意なく無意識にやってしまいそうなので、こういった指摘はありがたいとおもいます。

 しかし、5番の注意事項を見て、「え?」と思ってしまったわけです。実際に参加した夫の感想だと、「そういう注意事項が書かれるのは分かる気がする。」とのこと。

 本人の言葉を借りれば、「ボランティアには本当に色んな人が来る」とのことです。例えば、ボランティア参加当日に配られる名札シールがあるのですが、これは参加の都度、新しいものを使うので、過去の参加時に貯めてきたシールを目立つところに何枚も貼っている人が居たということでした。また、集合場所から被災地までの移動バスがあまり環境が良くなかったりして、そのことに対して係の人に不満を言う人だったり…実に「いろんな人が居る」というわけです。

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 余談ですが・・・

 「被災家屋」の画像については、所有者に許可を得ずにネットに上げることが失礼という価値観は、徐々に浸透しているように感じています。先日、能登半島地震のボランティア活動に参加した方(個人参加ではなく、団体での活動だったようです)のブログを読んでいたら、被災者の方の許可を得たとのことで、被災家屋の写真や、支援活動中の画像が載せられていました。

 しかし、数枚ならともかく、何十枚も画像が載っていました。いわゆる「不謹慎な画像」ではなかったと記憶していますが、「こんなにたくさん撮影していて、果たして支援活動に支障は無かったのか?」という疑念は持たざるを得ませんでした。

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■被災者と直接かかわるボラが人気?

 被災地での活動拠点に到着すると、「個人宅での活動」に行きたい人の希望を募ったようです。個人宅での活動の需要は、その日によっても違うと思いますし、ボランティアに参加した人全員が個人宅に行くわけではないようです。

 その「個人宅での活動」は、参加したい人が殺到したようで、そのときの雰囲気が、夫の感想だと「独特の雰囲気だった」とのこと。夫本人は、ご自身の家屋が倒壊されて失意にある被災者の方と直接向き合う覚悟がないということで、災害廃棄物の仮置き場での仕分け作業に徹したとのことでした。

 ↓過去記事でも少し触れたのですが、災害ボランティアでは、「被災者の方と直接関わらない作業は人気がないらしい」という話が、この場でも浮き彫りになったと感じました。

 これは、メディアの影響もあるのかなとは思いますが、実際に自分がボランティア参加の経験がない人であれば、テレビニュースなどでよく取り上げられる「ボランティアが被災者の家屋の片づけを手伝った→被災者が感謝の言葉を述べる」の図式のイメージを持つ人が多く(私もそのうちの一人でした)、そういった流れを期待している人も多いのではないかと思いました。言わずもがなですが、被災者の方の片づけのお手伝い以外も、立派なボランティアです。

■無償の「ボランティア」であるがゆえに

 ここまでの話の流れで感じたのですが、ボランティアを受け入れる側としては、「どんな人」が来ても、無償の活動である「ボランティア」であるがゆえ、受け入れを拒めない側面もあるのだなと感じました。アルバイトの採用とは訳が違い、受け入れ側として取りまとめているスタッフの方の心労たるや、想像を絶します。

 もちろん、崇高な気概を持って、どんな条件・作業でも、文句ひとつ言わず黙々と作業に徹して、誰からも感謝の意を述べられなくとも、黙ってその日の支援活動を完遂されて帰っていく方もたくさんいらっしゃると思います。しかし、決してそういう人だけではないという現実もあるということを理解しました。

■それでもやっぱり「行動」が全て?

 ここまで批判めいた記述が多くなってしまいましたが、何より私自身が災害ボランティアという行動に移せたわけではないので、手を動かしてない人間が横から否定的な言葉を言うのは不適切な側面もあると理解しています。よほど迷惑行為をしない限り、どんな形であれ、自らの時間や交通費などのリソースを割いてボランティア活動された人は、価値ある行動をしたことに変わりはないです。

■それぞれが「自分にできる」支援を

 非常に少額ではありますが、私自身は直接支援したい団体・自治体に支援金、義援金などを寄付してきました。報道では著名人の高額寄付や、継続的な炊き出しの支援など取り上げられています。表現が適切ではないかもしれませんが、著名人でなくとも、高収入の方はご自身のお仕事等が忙しく、現地まで出向ける時間はなかなか作れない方も多いと思います。そういった方が金銭の寄付だけを行うことだって立派な支援です。金額の多寡に関わらず、寄付行為も立派な支援です。金銭的に支援するのか、労力と時間を提供して支援するのか、それぞれが自分に出来ることをすればよいと思うのです。

■さいごに

 夫は、純粋に自分の地元を愛する気持ちと、地元に対して何かお手伝いできることはないかという気持ちでボランティアに臨んだと思います。今回は災害廃棄物仮置き場での作業に関わったということで、ほとんど誰とも会話することなく、黙々と作業をやっていたようです。決して見返りを求めて参加した訳ではなかったですが、誰からも感謝の言葉を掛けられるでもなく、何事もなかったかのように解散という流れになったことということで、それはそれでしんどかっただろうなと想像しました。

 私自身、テレビで取り上げられているようなボランティア活動の、ある意味「輝かしい側面」だけ見て参加したいと思っていないだろうか?メディアでは取り上げられない「陰の部分」も含めて、覚悟を持てるだろうか?

 いろいろと考えさせられる出来事でした。

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