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長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 6

コンコン婆さんとわらべ唄の巻

次にミナトが選んだ花火に、みんなが「なんでん いっちょん かんでん いっちょん こんこんこんね!」と呪文を唱えながら火をつけると、今度は閻魔大王の使いで三途の川の番人であるコンコン婆さんが現われました。

この妖怪は昔寺町のあるお寺に棲んでいました。コンコン婆さんは白髪でねずみ色のよれよれの薄い着物を着てしわくちゃ顔のしわがれ声で、「うちはわらべ唄ば教えるけ〜ん。上手に歌わんば2人とも閻魔大王様のおんなるところに連れて行くば〜い」と言って、長崎に古くから伝わるわらべ唄を歌って聞かせました。ミナトとミサキは恐ろしい地獄の門には行きたくなかったので、あとについて懸命に覚えて歌いました。

コンコン婆さんは、「♪あっかとばい かなきんばい おらんださんからもろたとばい」、「♪稲佐ん山から 風もらおう いんま もどそう」、「♪町で饅頭買うて 日見で火もろうて 矢上で焼いて 古賀でこんがらかして 久山でうち食うた」、「♪でんでらりゅうば(が) でてくるばってん でんでられんけん でーてこんけん こんこられんけん こられられんけん こーんこん」などのわらべ唄を歌って聞かせました。

中でもミナトとミサキが一番気にいったのは、昭和時代に流行った階段遊びの、「♪いちりっとらい(ん) らいとらいとせ しん(ちん)がらほけきょ 梅の花」という唄でした。

2人が繰り返し楽しそうに歌っていると、「なかなか上手になったやかね」とコンコン婆さんはしわくちゃの顔でニッコリ笑いました。そして、「2人とも寒うなったら風邪ば引いて喉の痛うならんごとせんば」と言いながら、ミナトとミサキの頭をしわくちゃの手で優しくなでました。実はコンコン婆さんには風邪と喉の痛みを治す神通力がありました。こうやって頭をなでてもらった子どもは、その年の冬、風邪を引くこともなく元気に過ごせるということです。

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