長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 8
うろんちょろんと鬼ごっこの巻
最後にミサキが選んだ花火に、おじいちゃんとおばあちゃんも加わってみんなで、「なんでん いっちょん かんでん いっちょん こんこんこんね!」と呪文を唱えながら火打石を3回こすって火をつけました。
すると、胴長で尻尾の長いかわいい小動物のようなうろんちょろんが現われました。うろんちょろんは、全身が白っぽい毛の、昔諏訪神社の杜に棲んでいたいたずら神の化身です。
「さあ、おいば捕まえきるね? 自分(あなた)達2人が鬼ばい。おいは逃げるけんね」そう言って、うろんちょろんは鬼ごっこをしようとミナトとミサキを誘いました。
鬼ごっこなら学校で遊んでいるので得意です。2人はもう夢中でうろんちょろんを追いかけました、でも、すばしっこくてなかなか捕まえられません。両腕で捕まえたと思っても、するりとすり抜けて逃げていくのです。うろんちょろんは2人を小バカにしながら、「ほらほら、捕まえきるもんなら、捕まえてみんね」と、尻尾をくるくると振っています。ときどきからかい半分に、尻尾の先で2人の頭をさっとなでたりしました。ミナトとミサキは、なでられるたびに頭に血がのぼってしまい、真っ赤な顔をしてうろんちょろんを追いかけ回しました。でもやっぱり捕まりません。
そこで、おじいちゃんとおばあちゃんは2人の孫にある作戦を授けました。それは川岸の角に追い込んで逃げ道をふさぐ包囲作戦でした。さっそく作戦決行です。そしててんやわんやの大騒ぎの末、2人がかりで通せんぼをしてうろんちょろんを取り囲み、ようやくがっちり捕まえたのでした。
「やったー!」2人は大興奮です。ハイタッチして喜びを爆発させました。鬼ごっこを見物していた他の妖怪達もやんやの喝采を送っています。おじいちゃんとおばちゃんも拍手しています。でも、捕まったうろんちょろんだけは地団駄を踏んで悔しがりました。
その横であそびんぼ太郎は「どうね? 2人とも外の遊びはおもしろかやろが?」と、満足そうに笑っていました。
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