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長崎伝習所で誕生した童話 中島川のあそびんぼ太郎 7

ときもどしの不思議な術の巻

こうして、妖怪達やおじいちゃんやおばあちゃんとの楽しい遊びの時間は、あっという間に過ぎていきました。でも、何時間経っても外は夕暮れどきのままです。不思議なことにいつまでも暗い夜にはならなかったのです。

「今何時?」ミサキはたずねました。
「そろそろ帰らんばね。おかあさんの心配するけん」ミナトも不安顔です。
「えっ、まじで? でもまだ、ぜんぜん大丈夫っしょ」あそびんぼ太郎はニヤリとして、なぜか都会風の言葉で答えました。他の妖怪達も笑っています。
「どうして?」ミサキはまたたずねました。
「さっき、ときもどしが時間を止めちゃったみたいだし」あそびんぼ太郎が指さした先には、渦を巻いた線香が細い煙を出してまだ燃えていました。
「時間ば止めるて、どげんこと?」ミサキは不思議そうにたずねました。

すると突然、ときもどしが目をぱっちり開けて、かわいらしい声でしゃべり出しました。
「っていうか、なんか、時計の針とか先に進まないってことでしょ。おたくら2人がここに来てからさ、まだ5分も経ってないっつーの。あたしのカラダに火がついてる間は、何時間遊んでも時間とかちっとも過ぎないみたいな。ぜんぜんオッケーって感じ。だから親には怒られないって話っしょ」
「へえー不思議かねえ」ミナトは首をかしげました。
「あー、っていうか、なんか、やばっ! ええっ、まじで? だんだん渦が短くなってきたよ。この火が消えたら時間とかどんどん進むから、やっぱ、遊びはあと1回で終わりにしてよね。約束だよ」小さな渦になっていたときもどしは2人に忠告しました。

「うん、分かった!」ミナトはどうやらおかあさんに怒られないですみそうなので、安心して元気に答えました。ミサキはときもどしの都会風な言葉がおかしくて、「っていうか、なんか、やばっ! っていうか、なんか、やばっ!」と何度もまねをしました。

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