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3-8. 上の段階に進むには過去の失敗がノウハウになる。

 日本科学技術連盟会長 高橋貞雄

 高橋は1956年、石川島播磨重工業に途中入社して以来、ずっとジェットエンジンの国産化に携わってきた。
 最初に手がけたのは自衛隊のF86-Fジェット戦闘機用のエンジンで、GEから技術供与を受けたライセンス生産であったが、GEでは部品はほとんど外注しており、その分のノウハウは提供されない。

 設備の面でも、生産量が少ない日本ではGEが使っている量産用の機械は使えないので、全部自社で開発しなければならない。国産化の難しさは並大抵ではなかった。
 こうした手探りの中で、失敗を繰り返しながら航空機エンジンを作るための生産技術を一歩ずつ獲得していった。一歩一歩階段を上がるような作業であった。のちにこうした技術が自動車産業に使われ、さらに新幹線のベアリングを磨く技術になった。

 そうした過程で何が役に立ったかと言えば、高橋は「過去の失敗の経験」だと言う。

技術の進歩という階段を上るためには、過去の失敗の経験が貴重なバネの役割を果たす

というのである。


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