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屋根のそりを「たるみ」と呼ぶわけ

                               薬師寺
 
宮大工、西岡常一棟梁の話です。
社寺の屋根は先端に行くほど下がっていますが、直線的ではなく、弧を描いて反っています。この「そり」を、「たるみ」というそうです。
たるみと呼ぶ語源は・・・、
この軒のそりは、江戸式では、1尺目で1分反って、2尺目で3分反って・・・という具合に計算でできるようになっているそうですが、それでは、かたい感じのものしかできないのでダメなのだそうです。
この計算に代わって使われるのが、自然の「たるみ」。
糸を垂らし、下を持ち上げると自然の摂理で糸はぐうっとたるみます。それで、定規ではできない柔らかい線がでるとか。寺社に使われている構造や細工は、微妙な弧を描いています。先端が逆に上に反って見えるのはそういうことだったのですね。
竹を割って細い糸のようなものを造り、それをしなわせて曲線を出し、それを図面にするという方法も使われているそうです。
社寺の建造物は、古いというだけでなく、周囲の環境に溶け込んで、なんとなく癒されるような心落ち着いた気持ちにしてくれますが、自然の摂理に基づいて構造や形状が決められていて、それが人間の気持ちをいやしてくれるのでしょう。そういう仕掛けがあったとは自然の造形力は偉大ですね。そしてそれを取り入れる大工・工人の知恵の柔軟さもまた偉大です。

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