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キムドクス「世界を打ち鳴らせ」岩波書店


サムルノリといえば韓国を代表する民族打楽器の4重奏!チャンゴ・プク・ケンガリ・チンが激しく打ち合う!俺はキムドクスは直接聞いてないが、サムルノリは韓国の大学などでよくきいた。

本来農楽(プンムル)の中の男寺党が激しく踊りながら打ち鳴らすものだったが、彼が新しい境地を開拓した。普通韓国の民族音楽というと「恨(ハン)」というキーワードが必須なのだが、ここでは一度も出てこなかった。

その代わり、「神明」という細胞を生き返らせるような魂の響きを示すことばがキーワードになっていた。キムドクスは実父から「中心を据えろ」という教えを受け、芸人としてそれを徹頭徹尾実行していく。彼の場合、サムルノリという新しいジャンルを生み出すだけの燃えたぎる情熱が中心にあって、その魂の響き<神明>は国境を越えて人の心を打ちならし続けてきた。

中上健次氏をして「韓国の世阿弥」と言わせしめたキムドクス!彼は坂本龍一ともセッションをしている。彼は「腹が膨らみ背が温まることを恥と思え」という幼少時の師匠の教えを今も守り続けている。

しかも「伝統とは守るものでなく、創造を通じて発展させていくものだ」という柔軟な思考の持ち主だからこそサムルノリを作りだしたのだ。ある意味農楽の異端児!といっていい。

グローバルな<乱場>、グローバルな<神明>を目指して「音の世界の編集」をし続ける彼の存在は、韓国民族音楽史にその大いなる価値を刻んでいる。これからも注目していきたい。

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