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【弱点を武器にっ!】#2 孤独なアル中&アラ50ライターの仕事獲得術 

(その1から続く)

SNSを使った営業活動はしていない一方で、私は暇さえあれば求人を検索して応募している。要は、自分からは積極的には営業を取りにいかない。あっちからは来てほしくない。期待をされたくない。ただし、あっちが必要するタイミングならダメモトで応募してみよう、という考えだ。このスタイルを、積極的営業ではなく受け身的営業とでも名付けようか。

もちろん、求人があってこその営業(応募)なので、1つの求人に対して応募者が殺到すると、私なんかはとにかく普通に落ちる。AIが書類の段階で年齢で振り落としているんじゃないかな? と思うレベルで落ちる。書類が奇跡的に通っても面接で必ず落ちる。これだけ落ち続けると、さすがに落ちるのにも免疫がつく。いちいち落ち込まなくて済む。そうした意味で、私にとって営業は、人から受け入れられないことを自分の中で改めて咀嚼する修行のような役割を果たしている。

芸能界などでは「枕営業」なるものも存在しているのか、いないのか。真相は分からないけど、ライター業界にも「枕」まではいかなくても、異性の編集者に気に入られるタイプとかいうのは存在すると思う。例えば、ビジュアル。就活でもビジュアルが重視されるのは暗黙の了解なのだから、当然と言えば当然か。

若くて可愛くて独身ならば、たとえライティングが下手だとしても手を差し伸べてくれる編集者はいる。そこに編集者の下心があるにしろないにしろ、ライター的にはそんなもの、採用されてから無視を決め込めばいい。しかしこの手口が使えるのは20代までだろう。

アラ50、おひとりさまの私が何を営業、とりわけ面接で武器にするか。キャリアやスキルもあるが、私の場合「離婚」が武器の1つだと思っている。仕事に応募する際や面接で必ず尋ねられる「志望動機」。私の一番の動機は「安定収入が欲しい」なのだが、それをストレートに告げたら間違いなく落ちる。そこで企業研究やらに時間を費やし、志望動機を「創作」する。

このへんはライターだからお手の物。しかし、面接時に必ずボロが出てしまう。相手はありとあらゆる応募者を見てきた採用担当者なのだから、当然と言えば当然。取り繕った志望動機など、すぐにバレてお見送りになるのだ。

一方で、「離婚」はどうだろう。離婚すること自体が志望動機なら「ああ、はい、大変ですね」で話が終わるけれど、企業への貢献性とともにアピールすれば(面倒を見る家族がいないから24時間働ける、とかね)、「やる気」と「必死さ」が増し増しで伝わる。事実、一昨年新規で案件を獲得した2つの企業は、離婚アピールで面接の関門を突破した。

一般的な不幸をチャンスに置き換える。


これもライターに求められる資質の1つで、例えば「〇〇は××だから特に問題ない」という原稿を、「〇〇は××だから快適!」と置き換えれば、ネガティブなイメージもポジティブなイメージに様変わりする。このテクニックには、退職や病気など、相手がネガティブに感じがちな事柄をプラスに変換できる可能性があるので、ぜひ逆境を逆手に取ってほしい。

そしてこれはかなり極端な話なのだが、私は新規案件獲得に伴う面接対策の1つとして、軽く整形をした。というのも、オンライン面談などでPCの画面に映し出される自分の姿があまりにも老化がすぎてショックだったからだ。コロナ禍もあり、外出する機会が減った私は、鏡を見て化粧をするという習慣から久しく遠のいていた。オンラインの面談・取材・打ち合わせの画面に映った動く自分。その惨状を目の当たりにして、顔のたるみを一部切開する決心をしたという訳だ。

整形することを心に決めた瞬間

28万円と結構な支出にはなったものの、後悔はしていない。整形以前よりはオンラインで顔出しをすることにためらいがなくなったし、美容医療にも詳しくなって、そんな原稿も受注できるようになった。しかし、そもそも日頃のメンテナンスをちゃんとしておけば、こんな支出はなかったはず……。そこは反省するが、プラマイ0と前向きに考えよう。

気を取り直して、営業方法について。アラ50の私が受け身の営業しかしていないのは前述の通りだが、私の場合、求人に応募するはするでも、アプローチの方法をちょっと工夫している。それは、フリーランス(業務委託)の求人ではなく、あえて正社員の求人に応募する方法だ。

これはあくまでも私の感触だが、正社員のライター求人の場合、煩わしいテストライティングの設定があまりない。書類の時点で振り落とされる可能性はもちろん高いとはいえ、即戦力を求めている企業の場合は年齢よりもキャリア重視で面接まですんなりと進む場合が多いように感じる。

書きたい媒体の「お問い合わせ」にいきなり営業をかけるよりもよっぽど建設的だ。たとえ正社員としては採用されなかったとしても、面接が「人脈作り」の一環となり、業務委託で仕事を受注できる可能性もあるのだ。だから私はどれだけ求人に応募して落ちてもめげない(笑)。

新規案件獲得に伴走してくれる存在として、フリーランス専門のエージェントもある。私もいくつかのエージェントに登録しているけれど、案件を紹介してくれたりするのはありがたい。何より、孤独ではないと思える。エージェント側とは初回で既に面談済みなので、私の年齢や得手不得手を考慮した上での紹介になるのも話が早い。

最後に、「待ち」の営業について。転職エージェントに登録してスカウト待ちや、SNSやブログを開設してお声がかかるのを待つなど、「待ち」の営業にもさまざまなスタイルがあると思う。しかし、アラ50ともなると、来るスカウトは「生命保険外交員」とか「警備員」とか「FCショップのオーナー」「介護施設職員」とかライターとは関係ない案件ばかり。SNSやブログでの営業は「目立ちたくない」という理由で署名原稿を避け続けてきた私にとってあまり意味を成さない。

万が一、署名原稿を書いてしまったら、今後、大っぴらに「アル中でーす!」なんて言えなくなってしまう。例えば、医療原稿を署名で書いて、別の記事でアル中を自称する原稿を署名で書いていたら、どんな弊害があるか? 署名原稿を書かないからこそ、私が私で自由でいられる場所を確保していられる。その場所がなくなるくらいなら、別に売れっ子になる必要はない。というのが私のスタンス。

私が新規営業獲得で苦労かつ対策しているのは上記のような点だ。同業者の参考になれば嬉しいけれど……。

これだけライターが増えた今、新規案件獲得はとても難しいと思う。クライアントによっては、何のライター知識もないまっさらな人材を求めることもあるし。元々専門的な業界にいる人をライターとして育てるという流れもさらに加速している。 

そんな中で、アラ50、アル中、おひとりさまの私が新規案件を獲得するのは至難の業だ。まあ……きっとどうにかなるかな、今月の収入はなんとか大丈夫かな……。自転車操業の毎日。今日も求人情報を漁りながら豆菓子「いかピーナ」と焼酎ハイボールを交互に口に入れつつ、ひとりぼっちの日曜の平和な午後が過ぎていく。(完)
 


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