鑑賞後のもやっと感が強かった『大吉原展』。
開幕前からの炎上事件の記事やら、それに対する東京藝術大学大学美辞術館側の広報、さらに今回展覧会の学術顧問である田中優子先生のご著作『遊郭と日本人』にも目を通して見ました。
「『大吉原展』開催にあたって:吉原と女性の人権」という資料
展覧会の一般公開前に、プレスに対して田中先生による「『大吉原展』開催にあたって:吉原と女性の人権」という資料が出されていたそう。
大事な内容なので全文引用。
ご著作『遊郭と日本人』にも上記と同様の主張がありました。
”遊郭”が現代までもたらした負の側面
田中先生によると、江戸時代から373年間続いた”遊郭”の存在が、
・男性上位で権力やお金で女性を意のままに扱えるという固定概念を作り上げた
・男女間の賃金格差や、女性の職業における選択肢が少なく、非正規労働者の割合が高い遠因にもなっている
いうのです。
確かにそうかもしれない…。
浮世絵などに残された”遊郭”の様子があまりにも能天気で華やかなため、そこがそもそも売買春の場であり、女性蔑視や人権無視によって成立していたことを失念してました。
また、最近では『鬼滅の刃』の舞台になるなど、フィクションでもあでやかな場として描かれるため、現代においても”遊郭”のダークな側面は脇に追いやられ、ある種退廃的かつ魅力的なイメージが固定化されてつつあるようにも思います。
当時でも現代においても、”遊郭”が”日本文化の集積地”であったことが、実態は後ろ暗い場所であったことを覆い隠しているとも言えます。
これは反省しなければ。
結局のところ、遊郭の二面性を表現したかった監修した田中先生やキュレーターさんの思いと、
展示できる作品、商業面のバランスが整わなかった。
ゆえに、遊郭の明るい側面に偏らざるを得なかった。
そんな風に思いました。