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ベルリンの壁が崩壊しても解決しなかった問題

ベルリンの壁が崩壊してから、先日で34年を迎えた。

当時、壁が崩壊してから数ヶ月の間に欧州の社会主義体制が次々と連鎖的に崩壊。これによって東西冷戦も終結。世界史に刻まれる大きな出来事だった。

でもいま振り返って考えると、壁は崩壊したものの、だからといって壁が建設されたそもそもの原因が解決した訳ではなかった

「そもそもの原因」とは何か?

それは、人というものは「富の格差」に不満を持つものであり、資本主義経済ではその不満をうまく解決できていないこと。

今回はそんな社会の根本的にある問題について考えたことを。

では、まずは時代を産業革命の起こった18~19世紀頃までさかのぼってみよう。

資本主義の拡大と富の差の拡大

当時、科学技術の発展などによりイギリス発の産業革命が起こり、工業が急速に発展した。しかしその結果、工場経営者などの資本家だけが更に裕福になり、実際に働いている工場労働者については、劣悪な労働環境で非常に少ない賃金しかもらえなかった。つまり富める人はますます裕福に、貧しい人はますます貧しく。

その構図に対して労働者の間で不満が溜まり、各国で「平等な社会」を目指して社会主義/共産主義革命の考えが広がっていった。そして、1917年のロシア革命を経てソビエト連邦という世界初の社会主義国家が誕生。

さらに第二次世界大戦を経て、ソビエト連邦がドイツの東側を占領し、東ドイツという社会主義国家を誕生させた。

機能しなかった社会主義国家

しかしソ連や東ドイツといったソ連型の社会主義国家は、人間の性質からすると、あまりに自由が無く不便な社会。それが嫌になって東ドイツから西ドイツへ脱出する人たちが相次いだため、東ドイツ国家は自国民を逃がさないように壁を建設した。

でも最終的には、自由がなく、経済もひどくなっていく状況の中で、この国家体制はおかしいと考える人々がますます増えていき、最終的には壁が壊されるに至った。

今も残しているベルリンの壁

このように、そもそも壁ができた原因をさかのぼると、「資本主義経済の下で富の分配に不満を持つ人々が革命を起こした」というところまで立ち戻ると僕は思っている。

そしてその壁が1989年11月に崩壊し、連鎖的にヨーロッパの社会主義国家は瓦解していった。

けれども、それが意味するところは、単純に「ソ連型の社会主義体制が機能しなかった」ということだけ。

根本的な原因である「資本主義経済では富の格差に対して多くの人が不満を持つこと」については、解決できたわけではなかったと僕は考えている。

そして約30年を経て、現代。

解決していない不満

ここ何年かよく言われるのが、「富める人のわずか上位1%の人が全体の富のxx%を持っている。富の格差がどんどん広がっていて、貧しい人々がその富の格差に不満を膨らませている」。

それって、産業革命の時に労働者が持っていた不満と、数百年経った現代でも本質的には何ら変わらないのでは。

そういう富の格差に不満を持っている人が、現状を変えたいと熱望し、結果的にアメリカでトランプ大統領を誕生させたり、イギリスがEUから脱退する動機の一つになったとも言われている。

つまり、昔ようやくベルリンの壁が崩壊したものの、それから30年経ち、結局はまた富の格差に不満を持つ人々が増え、改めて彼らの意見が大きな政治的な変化を生んでいるように見える。

資本主義経済は「自分が得することについては、人は一生懸命頑張る」という人の性質に極めて合致した自然な仕組みだとは思う。

けれど、その結果として成果を配分した状況について、人は不満を持つものだということもまた、人の自然な性質なのでしょう。

ひと世代

興味深いのが、僕がドイツで生活していた数年前にちょうど「自国第一主義」「ポピュリズム」が脚光を浴びた。今もアメリカではトランプ元大統領が次の選挙に向けて人気を集めているという。

30年ってちょうど一世代が入れ替わる期間だから、昔の教訓や後悔が一通り風化する期間。30年経って再びその問題が再燃してきたのは、偶然ではないような気が。

日本の傾向

ちなみに国際機関(OECD)の統計によると、日本人は貧困や社会の格差については「自己責任」と位置付ける傾向が他の国の人たちより強いとされている。

つまり日本人は、社会全体としてみると豊かになっているのに、自分が豊かにならない状態の場合は、社会のシステムに問題があるとは考えず、自分に原因があると位置付ける傾向があるらしい。

逆に言えば、世界の人たちは必ずしもみんな日本人のように自己責任とは考えず、そもそも「社会の制度が不公平で正しくない」と考える人の割合が多いことを意味している。

世界全体が豊かになっていたら、その恩恵をもっと人々へ平等にいきわたらせるべきだ、と信じる人たちが世界にはそれなりの割合でいる、ということだと思う。

旧東ドイツ、ドレスデンの教会

終わりに

考えてみると当たり前だけど、いま僕たちが生きるこの社会の制度は、誰か異星人から強制されて導入されたものではない。それぞれの国が、自分たちで決めて導入している。

もし、自分たちがもっと平等な社会にしたいとか、もっと格差をつけて社会の活力を生み出したいと思えば、社会制度を自分たちで変えれば良い。

できればその時には、自分自身が得をするからこうしたい、損をするからこっちでないと、といった視点から自由になって、自分が好きな社会はどんなだろうか、と考えてみるのもおもしろい。

ということで、あなた自身としては、現在の世界や日本での富の分配は理想的な社会だと考えますか?

それとも、今よりもっと平等な社会が好きでしょうか。もしくは、今より差をつけた社会の方が好きでしょうか?

by 世界の人に聞いてみた


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