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「旅先で現地の人に話を聞く」の舞台裏

僕が「旅先で話を聞く」という旅行のスタイルを始めたきっかけは、ジョージア(グルジア)を一人旅していた時の経験だった。

たまたま喫茶店で隣に座ったグルジア人と会話が始まって、その中で「グルジア人ってどんなメンタリティーの人たちか」といった会話をしていたら、とにかく面白く感じた。

フト冷静に考えてみると、

旅行に来ておいて、その国の人たちと話をしないで帰っていくって、もったいないな

と思うようになった。


国というものは、別に名所旧跡や街で出来ているわけではなく、あくまでも人が主役で、それを国土や街が収容しているだけ。名所旧跡も、あくまでも現地の人々のこころが創り上げた文化が形となって表れているもの。

逆に、外国から日本へ旅行に来るケースを考えてみよう。外国人が日本へ旅行に来て、京都のお寺を観光したり、富士山を見たり、アキハバラでメイド喫茶を経験して帰っていくのも、それはそれでいいけど・・・、でも現地の日本人をとっ捕まえて、膝を交えて日本や日本人についてガッツリと話をしていけば、面白く感じる人もいると思う。

例えばヨーロッパの人だったら、普通に日本を旅行しただけではわからない「日本や日本人にとっては当たり前の日常だけど、ヨーロッパの人たちは知らないこと」って山ほどある。

子どもの生活で言えば、例えば塾とか、部活とか、先輩・後輩とか。

大人の生活について言えば、食事づくりに大きな労力をかける家庭が多いとか、就職活動とか、単身赴任とか、お客様は神様ですとか、同調圧力とか、ホンネとタテマエとか。

旅行者が日本に来たら、そういった斬新な日本文化の話をいくらでも聞くことができる機会。せっかくだから、そういった話を聞いて帰るのも旅行の一つの形だろう。日本社会について理解するには、日本人に話を聞かないと絶対に分からない。


と思ったので、グルジアの次に一人旅をしたセルビア旅行からは、旅行先で現地人を捕まえてガッツリ話をするようになって・・・、そして今では観光なんてそっちのけで、「現地の人と話をするために旅行する」ようになった

自分にとっては、観光して得られる記憶や感動よりも、現地の人と話をして得られる記憶や感動の方がずっと大きいから。

で、僕の記事を読んで下さっている人の中にも、この旅行の方法に興味を持たれた人もいるので、今回の投稿では「旅先で現地の人に話を聞く」とは具体的にどんなことをしているのか、その舞台裏を書いてみる


何を聞くの?

基本的にはストレートに聞きたい質問をぶつける。

「僕は旅行者で、〇〇人がどんな人たちなのか興味があるので教えて貰いたいんだけど、一般的に〇〇人ってどんな国民性?」

という質問から入っていくことが多い。自国に興味を持っている旅行者がいれば、みなさん喜んで説明してくれる。

そうやって話を聞くと、だいたいその国ならではの歴史的な背景や文化に繋がっている話が出てくる。それに対して、自分もその国について知っている知識を使って、話題を膨らませていく。

そしてある程度話を聞いたら、次に、

「そんな〇〇人たちは、どんなこと考えて日常生活しているの?人生で大切にしていることは?」

といった話題に移っていく。

どこで誰に聞くのか?

一番バランスの良い話を聞ける確率が高いのは、博物館の説明員。本来の仕事ではないので申し訳ないんだけど、人に説明する職業だから、みなさん説明が上手。そして、そもそも国民性だとか文化的な話に興味を持っている人が多いから、喜んできっちり整理された内容を話してくれる確率がとても高い。あと、バランスよく客観的な内容を話してくれる。英語に堪能な人が多いことも助かる。

但し、もちろん説明員の本職は、展示品を来場者のみなさんへ説明すること。あまり独占しないように気を付けている。でも、僕が訪れるような国の博物館は、そもそも来場者が非常に少ないことが多いので、30分とか1時間とか独占できるケースもよくある。

他にも、宿屋のホストやホテルの受付の人に聞く機会が多い。ただ、彼ら/彼女らも他のお客さんへの対応をしないといけないから、深夜とかうまくタイミングを見計らって話をしてくれる時間帯を選ぶ必要がある。

それ以外では、バーやレストラン・喫茶店で隣に座った人だったり、長距離バスで隣に座った人お土産屋の店員さん街で通りがかりにたまたま会話が始まった人などなど。

・・・でも改めて考えてみると、これが成り立つのは、自分が旅行している国が旅行者が少ないからなんだろうなあ・・・。

何語で?

僕の場合は英語で会話する。きっちり意思疎通できる外国語は英語だけだから。ただ最近は、グーグル翻訳を使って文字ベースでお互いに自国語で会話できるケースもある。

どれくらいの時間?

だいたい平均すると、一人当たり30分くらい話をするケースが多い。会話しながら相手に信頼感を感じてもらって、それで相手の説明のエンジンが掛かるまでには、それなりの時間が必要だから。

一ヶ国で何人くらいと話をする?

もちろんできるだけ多くの人と話をするようにしている。だいたい一つの国で少なくとも5人は話をして、その中から共通的に挙がる話だけに絞って書くようにしている。あんまり突飛で個人的な話を書いてしまうと、その国のイメージに迷惑を掛けることになるから。

そのため、僕の投稿では、まるで一人の人が話してくれたように表現している会話もあるけど、実際は何人もの人が同じようなことを言っている内容を整理してまとめて書いているケースが多い。

で、実際にこれまでたくさんの国で聞いてみる経験を重ねると・・・、同じ国の中で話を聞いていくと、不思議なことにだいたい3人目くらいからは同じキーワードを何度も聞くようになって、話の展開が読めるようになってくる。既に見たビデオを何度も見るような感覚。これまで旅行した国の中で、答えがバラバラで国民像がブレてまとまらない、という経験は一度もなかった。

コツは?

「聞いてみた」とは言うものの、やはり会話は会話。だから、質問ばかり投げかけて、聞いて終わりにしないことが大事だと個人的には思っている。

相手が話してくれたら、まず自分がそれを理解したことを示すために、「僕はあなたの話をこう理解した」と、自分の理解を要約して相手にフィードバックする。これは、仕事の時もいつも心掛けている。

そして、その内容に対して自分はこう思った、と伝える。場合によっては「日本の場合はこうだ」とかの情報を与える。

こういった、ごく普通の双方向の会話を繰り返し行うことが大事だと思う。別にオーバーリアクションして相手の歓心を買う必要はない。

そういったごく普通の会話を続けることで、相手も僕に信頼感を持つようになって、より突っ込んだ話をしてくれるようになる。きっちりと話を聞くには、信頼感は絶対に不可欠。

あとは、話が終わったら、できるだけすぐに詳細なメモを書くようにしている。記憶は時間とともに失われるから。以前、30分くらい会話した人がいて、後日自分の書いたメモをメールで送ったら、「驚愕するくらい正確にメモされている」とお褒めの言葉をいただいた。

モルドバで聞いた話の「答え合わせ」

ところで。

先日「モルドバで聞いてみた」シリーズを投稿したところ、Pflanzenjägerさんから貴重なコメントを頂いた。

「世界しあわせ紀行」(エリック・ワイナー著)という本で、著者はいろんな国を訪れて、その国の人たちから話を聞いている。その中でモルドバを訪れて聞いた話に関する記事があるとのこと。

著者は、「幸福とはなんぞや」という疑問を持って幸福な国々を巡る中で、その対極にある幸せ度合の低い国を訪れて、それを通じて逆に幸福とは何かを炙り出そうとしたらしい。それがモルドバだった。

早速、この本を購入。読んでみると、著者がモルドバに滞在した期間は2週間。現地の人々からモルドバについて聞いた話が約50ページにわたって記載されている。

この著者はジャーナリスト。そういうプロの人が書いた内容は、果たして僕が話を聞いて書いたことと似たような内容になるのか?それとも全然違うのか?

プロの書いた本を、「自分の答案と答え合わせする」ような心地で読んでみた

この著者がモルドバで聞いた話

記載されていたモルドバについてのポイントを列挙すると、以下のとおり。太字の部分が、自分の投稿した内容でもカバーしていた。

①モルドバの人々は金銭的に困窮していて、海外へ出稼ぎに行かないと生活が成り立たない。モルドバ人の年金は月々4000円月収25,000円で働いている人は高給取りの部類に入る。

②人々は絶望していて無力感を感じている。不幸を感じている主な理由は以下。
 ・人々の社会や政府に対する信頼の欠如
 ・縁故主義や汚職が全てに優先されている
 ・固有の文化がない

③他人の不幸によって自分の幸福を得る傾向

沿ドニエストル地方は政府の支配が届かない奇妙な状況

⑤モルドバの良いところは、野菜と果物が新鮮

⑥モルドバの女性の服は超セクシー


あいにく・・・最後の⑥については、僕は見落としてしまった。痛恨。

でも、それ以外の①~⑤までは、幸い自分が聞いた内容で概ねカバーされていた。

僕はプロのマスコミの人でもなく、ジャーナリストでもない。そんな単なる一般人が数人に聞いた内容であっても、プロが現地で話を聞いた上で書かれていたポイントを、だいたい網羅できていた。

つまり一般人であっても、現地で話を聞いてみたら、専門家と同じような話が聞ける、ということのようだ。


はい、こんな感じです。

こうやって旅先で聞いた話は、僕のマガジン「旅先で聞いた話」にまとめている。ただ、かなりマニアックな国ばかりだけど。

そして、まだまだ投稿していない「旅先で聞いた話」シリーズがあるので、今後また時期を見て投稿していきまーす。

by 世界の人に聞いてみた

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