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ドイツ人の日常の食事風景

人間は何かを食べて生きている生き物。食べること自体は、世界中の人々に共通している行為。

でも、その食べる様式や中身についてみてみると・・。例えば、いつ、どうやって、何を食べるのかについては、必ずしも世界中の人々が同じような食文化を共有しているわけではない。

食べること自体は共通しているから、つい「自分の常識は、世界中の人にとっても常識だろう」と無意識に思い込んでしまう時もある。

でも、自分の常識は、必ずしも世界中の人々の常識ではない。

ということで、僕が住んでいたドイツで周りのドイツ人たちの日常の食事風景について書いてみる。既に書いたことのある内容とかぶっているところが多いこと、ご容赦願います。

なお、このテーマは特に「ドイツ人であっても、人や家庭によってとても大きな違いがあるけども」という前提で読んで頂ければ。あくまでも「ドイツ人にとっての一般的な食事習慣ってこんな感じだよね、って言われていること」を書いています。

まず、日本人の食事の常識とは

ドイツ人について語る前に、まず「日本人の食事の常識とされているもの」について。僕の感覚では・・

■ 食事は日に三食
■ 夕食に一番多くの分量を食べて、時間もかける
■ 一汁三菜などバランスよい内容が望ましい
■ 伝統的にはお米が主食。ただし現代はかなりバリエーションが広い

ざっとこんな感じだろうか。もちろん、人によって食習慣が相当違っているのは当たり前だけど。

ドイツ人の食事の常識とは

(1) 朝食

フルーツ、パン、シリアル、食べない、など。共通しているのは、基本的に冷たいものを食べている。

まあ朝食については、ドイツのものであっても自分の常識とそんなに違うわけではないかな。その理由は、米欧の朝食文化が日本に入ってきて日本人に浸透した結果、と言った方が正しいのか。

(2) パオゼ(間食の時間)

ドイツの学校では一般的に午前中の休み時間にパオゼという時間があって、その時間にみんなで軽食を食べる。

例えばパン。もしくは、野菜(人参、パプリカ、キュウリ、トマト等)、果物(リンゴ、チェリー、ブドウ等)、サンドウィッチといった食べ物をタッパに詰めて持ってきて、みんなで小腹を満たす。

(3) 昼食

一日のうちで一番きっちり食べるのが昼食、という人が多い。とはいっても、「ソーセージ+ポテト」「ピザ」「豚ステーキ+ポテト」「スープ+パン」とか、日本人から見るとあまりバランスが良いとは言えない食事内容が多い。

ある日の同僚の昼食。一人で「ポテト+ポテト」のパターン ↓

そして、会社の食堂などで食べる昼食が、一日で唯一の温かい食事。

または、持参したお弁当を食べている人もいる。典型的なのは、タッパに切った野菜を詰めてきて、それをポリポリ食べるパターン。電車の中でも、おもむろにタッパを取り出して、このスタイルで食べている人を結構見かけた。この食習慣は、学校でパオゼ文化を経験した名残りではないかとみている。

他には、会社でスーパーで売っているパスタをチンして食べる人とか。僕の周りの人たちはイタリアン系の食事が比較的多かった。

(4) 夕食

パン・チーズ・ハムだけで済ます人が結構多いみたい。例えば、同僚が昼食後にゴロンとした100円くらいのパンを買っていた。

僕が「明日の朝食?」って聞いたら「いや、今日の晩メシ。これとチーズで」って。

しかも、そういった「夕食」は、テーブルではなく、台所の冷蔵庫の前で立ったまま食べることが一般的、とよく言われる。

(5) 立食文化

立ったまま食べる文化は、登山したときにも見ることができる。

山頂でよく見かける光景が、ドイツ人たちがみんな揃って仁王立ちで、持ってきたサンドイッチをほおばっている姿。みな自分の世界に浸って虚空を見つめながら、黙々と胃に詰め込んでいる

初めて見た時は、恵方巻を食べてるのかと思った。

せめて座って食べたり、喋りながら食べたらいいのに、といつも思う。たぶんみなさん普段から台所で、こんな感じで食事をしているのかしら、と思って見ていた。

でも多分、昔と比べると今はだいぶ変わってきたんじゃないかな。昔はその様式が標準的だったはずだけど、今では夜であってもソーセージを焼いたり、スープとかパスタをつくったり、一品だけは温かい料理をつくるという家庭も特別ではなくなってきているような気がする。

(6) 料理の定義がちょっと違う

以前ドイツ人同僚(女性)が普段の夕食について説明してくれた。

「私は働いているけど、ちゃんと夜は家で旦那に晩ご飯を料理してあげてるよ!」って。

どんな料理をするのか聞いたら、「晩ご飯はだいたい野菜スティック。人参はこんな形に切って、きゅうりはこんな形に切って、大根はこんな形に切って・・・、でもこんな感じの形に切ることもあったり、ちゃんと料理にもバリエーションを付けている」。

多くの日本人が一般的に想像する「料理」のイメージと、必ずしも同じではないかも知れないと感じた。

(7)キッチン

そもそも一般的なドイツのキッチン(シンクや調理場所)は、日本人の感覚からすればかなり小さい。日本でいえば一人暮らし用程度の大きさ。

というのも、伝統的には野菜やフルーツを水で洗うくらいしか使っていなかったからだと思う。大きなキッチンはそもそも必要ない。あと、どの家のキッチンもピカピカにきれい。なぜって、そもそも料理しないから。

あと、換気扇もついていない家が多い。僕の借りたアパートでは大家さんが鼻高々だった。

大家さん
「この部屋にはちゃんと換気扇をつけているんだ。しかもそれだけじゃないぞ。なんと換気扇の管は部屋の外へ繋がっていて、空気を外に出すことができるんだ!ここは質の高い特別なアパートなんだ」

って。別に大家さんはオーバーに言っているわけではない。通常は換気扇がついていても、空気を通す管がついていなかったり、またはちゃんと管がついている場合でも、寝室とか他の部屋に空気を逃がすだけのものが多い。

(8) 「毎日料理しやがって!」

それゆえ、アパートの大家さんは日本人や中国人などアジア人に部屋を貸すのを嫌がる人もいる。

大家さんが「入居人がキッチンで毎日料理をするんだ。しかも料理に油まで使って!キッチンが汚れてメチャクチャにされた!」と怒ってしまい、アパートから追い出された日本人もいた。

まとめ

さて、どうでしたでしょう、ドイツの食事事情。

繰り返しになるけれど、このテーマは、特に「ドイツ人であっても、人や家庭によって大きく違いがあるけど」という前提です。

改めて考えてみると、思うことが2つ。

まず、ドイツ人と日本人は、そもそも体質からして違っていると言わざるを得ない。

日本人の僕が彼ら/彼女らと同じ食習慣を導入したら、やっぱり体にも心にもよくない影響があると思う。精神面では異文化へ柔軟に合わせることはあまり苦ではないけれど、食事など物理的な面で合わせることは、さすがに無理を感じる

あとは、女性の社会進出と食事との関係。

いつも書いていることではあるけれど、社会の中では全てが影響し合いながら回っている。

上の記事「ドイツ人の食べる能力」で書いたように、こういった食事についての違う常識があって、それが前提となってはじめてドイツ女性たちの社会進出が進んでいる面がある。

日本でも社会で働く女性のいる家庭で、時間のやりくりに苦労している場合は、たとえば食事を外注化するといった何らかの対策をすることによって、はじめて成り立つことになる。

これまで日本人女性は、日本の超絶豊かな日常の食文化を支えてきた。その力を今後は社会の中で活かしていくためには、従来のいろんな慣習を社会全体で調整して変えていって、しっくりと動くようにしていくことが必要なんだろうと思う。

by 世界の人に聞いてみた

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