見出し画像

「ほら、何を信じるのかって、母親の影響が大きいから」

今回の記事は何を書こうかなーって思って・・、ドイツで生活していた時に聞いたキリスト教にまつわる話を。きっかけは、昨年末に先代のローマ教皇であるベネディクト16世が亡くなったニュースを見たから。

ざっとキリスト教の概要みたいなものを整理した上で、最後にはドイツ人から聞いたキリスト教と家族のお話へ。

そうそう、あと僕はキリスト教徒ではありません。そして宗教関係の記事を興味持って読んでくれる人はあまりいないので、できるだけ感覚的に分かりやすそうな内容を中心に書いてみる。興味ない場合は教会の美しい写真だけでもざっと見ていっていただければ。

バチカンの心臓部、サン・ピエトロ大聖堂の内部

ローマ教皇とは

さて、みなさん先ほど挙げたローマ教皇ってどういう立場の人かご存じでしょうか。

ローマ教皇は、キリスト教の中の大きな3つの宗派のうち、最大の信者数を擁する「カトリック教派」のトップに位置する人。普段はイタリア・ローマの中にあるバチカン市国という世界最小の国で生活している。

カトリック教派は13億人の信者を抱えていて、極めて組織化されているのが特徴。ローマ教皇をトップにしてピラミッド型の組織を形成しており、世界各国の殆どのカトリック教会は、ローマ教皇の指揮系統の下にある。

通常であればローマ教皇は亡くなるまでその地位にあり、亡くなってから後継者が選ばれて就任する。しかし、今回亡くなった先代のローマ教皇は、実に700年以上ぶりに「生前退位」した。日本でいえば、ちょうど今の上皇陛下と同じように。

この写真に写っている目の前の芝生や林の部分だけで、既にバチカン市国の面積の3割くらいを占める。それくらい面積は小さい

なぜローマに?

キリスト教は、地理的には中東エルサレムあたりで生まれた宗教。なのに、なぜカトリックのトップがイタリアのローマ(の中にあるバチカン市国)にいるのか?ということを知らなかったので、数年前に家族でバチカン市国へ旅行で行った時に、調べてみた。

理由は、キリストが生きていた時代までさかのぼる。キリストの12人の直弟子のうち、ペトロという人が信者のリーダーに指名されていた。

そのペトロは、キリストの死後に布教活動に従事した末に、最後はローマで処刑され、そこに彼のお墓が建てられた。後年、ペトロのお墓を守るために、お墓を中心にしてそれを覆うようにサン・ピエトロ大聖堂(聖ペトロ大聖堂)が建築された、とされている。そのサン・ピエトロ大聖堂を含む周辺の場所が、現在はバチカン市国として独立して、ローマ教皇の領土となっている。

サン・ピエトロ大聖堂

そういう経緯で、信者のリーダーであるペトロが「初代ローマ教皇」と位置付けられて、その地位が現代まで綿々と受け継がれている。だから「ペトロの地位を引き継ぐローマ教皇が、ずっと世界中のカトリック教徒のリーダーの地位を継承している」ということになっているらしい。知らんかった。

まあ実際、僕の個人的な感覚では、カトリックはやっぱり「キリスト教の保守本流」のイメージが強い。本流とか本家があるわけではないけど。

サン・ピエトロ大聖堂の中、この天蓋の下にペトロは眠っているとされている

さて、それでは次に、主要な3つの教派の概要をざっと整理してみよう。

なお、以下では感覚的な分かりやすさを重視してまとめた僕の個人的な印象を記しており、あまり厳密性は追求していないことご了承ください。

主要な3つの教派

(1) カトリック

既にある程度書いたけど、少し追加情報を。

カトリックは、ヨーロッパ南部(イタリア・フランス・スペイン等)や南米で信者が多い。南米はスペイン・ポルトガルの流れを汲んでいるから。

僕の印象では、カトリックは神に対する信仰というより、「キリストやその母親のマリアに対する信仰」という面が強いように感じる。なぜなら、神父さんのお話は「キリストがどんな一生を生きたのか、そしてその一生を称えよう」というメッセージが主題になることが多い印象だから。実際、カトリック教会の十字架にはキリストの像が架かっているし、マリア像が置かれている。

あとは人々と神の間を、教会組織が仲介する関係性にある。そのため教会が重要な役割を担っており、教会の中も荘厳で儀式が重視されている。教会のミサは一体感があって感覚的に満たされた気持ちになることが多い。

(2) プロテスタント

それに対して、「原点である神への信仰に立ち返り、聖書を読んでどう生きるべきか考えよう」といった主張をドイツ人のルターが展開し、16世紀に成立したのが「プロテスタント」。ちょうどこの時代にドイツで活版印刷が発明され、聖書が教会だけでなく一般の家庭にも一気に普及していったことが後押しした。

信者は約6億人で、ヨーロッパ北部(ドイツ北部・イギリス・北欧等)の地域に信者が多い。僕の個人的な印象では、理詰めで考える傾向があるように感じていて、少し哲学に近いような。個人個人が聖書を介して神と直接向き合う関係性とされている。

十字架はシンプルに十字架だけのもの。イエス・キリストの像は張り付けられていない。その理由は、原点である神への信仰に立ち返る、という考えが背景にあるのだろうか。マリア像も置かれていない。

ということで、教会内部はシンプルなものが多いことも相まって・・・探してみてもプロテスタント教会の写真が見つからない!そう、プロテスタント教会はお話を聞いたりお祈りに行くところではあっても、観光客が入って写真を撮るような場所が少ないからなのか。

ちなみにドイツでは「プロテスタント(抗議者)」という表現は殆ど聞いたことがなく、ルーテル(ルター派のこと)とかエヴァンジェリストとかの表現をよく聞いた。

(3) 東方正教会

3つ目のメジャーな教派は「東方正教会」。元々はカトリックと同じルーツだけど、11世紀頃に意見の相違があってカトリックから分離した。信者は約3億人で、ヨーロッパの東部地域が中心。この東方正教会は、教会の内部も礼拝の様子も、とにかく何もかもが美しい。すごいよ。

正教会は英語で「オーソドックス・チャーチ」という表現が使われていた。

セルビアのノヴィ・サドという街の小さな教会。フラリと入ったら、周りの人がぜひ写真を撮っていけと。
正教会では金色がよく使われる

さて、こういったネットで調べたらすぐに出てくるような話はさておいて、僕らしく「聞いた話」を書いていこう。

カトリックとプロテスタントにまつわる家族模様

以前、ドイツで働いていた時のこと。お昼ごはんの時に、60歳のドイツ人同僚と話をしていたら、カトリックとプロテスタントにまつわる家族のアレコレについて教えてくれた。

ドイツ人同僚
「僕は子どものころ、信仰心のあつい母親に毎週教会へ連れて行かれてたんだよ。だけどね、その教会の十字架には、心臓を矢で射ぬかれたキリスト像が架かっていて。その像が子どもごころに、怖くて怖くて。だから教会は好きじゃなかったなぁ」


「十字架にキリスト像が架かっていたってことは、カトリックですか?」

ドイツ人同僚
「そう、僕が育った地方はカトリックばっかりだったから、僕ももちろんカトリック。でもね、僕が結婚した家内はドイツ北部出身。だから彼女はプロテスタントでね。結婚式では、神父(カトリック教派の聖職者)と牧師(プロテスタント教派の聖職者)に一人ずつ来てもらったものだった」


「ドイツってプロテスタントばっかりかと思ってましたけど、意外とカトリックも多いですよね」

統計によると、ドイツはカトリックとプロテスタントがそれぞれ30%弱ずつで同じくらいの割合。南部はカトリックの牙城で、北部にプロテスタントが多い。

実は、ドイツでは無宗教に属する人が40%弱も占める。その理由の一つは、旧東ドイツ出身の人たちがいるから。旧東ドイツは宗教に対して否定的な社会主義国家だったため、心理的に距離を置いている人たちが多い。

他にも無宗教が増えている理由がある。ドイツ国民は自分の宗教と教派を国へ申告する必要があり、その際にキリスト教信者と申告すると、教会税を徴収される。それなりの金額。そのため、実際には「心の中に信仰心が無いわけでもない」という人であっても、無宗教で登録して納税義務を回避するケースがある。

ただ、やはりみんな口を揃えて言うのが、若い世代の人たちや都市部の人たちは概して宗教心が薄くなってきているね、と。

ドイツ人同僚
「でね、僕の息子は、カトリックとプロテスタントのどっちだと思う?答えは、うちの奥さんと同じプロテスタントなんだよ。ほら、そういった『何を信じるのか』って、やっぱり母親の影響の方が大きいもんだから」

ということで、彼の見方によると母親の教派を受け継ぐ割合が高いんじゃないか、と。

ドイツ人同僚
「ちなみに、こないだ息子に彼女ができたんだけど、彼女は逆にカトリックだった。で、息子は最初にそれを聞いたとき、彼女に言ったらしいんだ。『僕はプロテスタントだけど大丈夫!父さんがカトリックだから!!』って。何が大丈夫なんだか。ホント適当なもんだよね、ハッハッハ」

前述のとおり、宗教離れが進んでいると言われているドイツ。でも、未だにプロテスタントだ、カトリックだ、と言って微妙にお互いを意識し合っている。みんなこだわりがないような、それでいて、あるような

さて皆さんは、何を信じるか、何を人生の規範にしているかといったことについて、ご両親のどちらからの影響が大きいでしょうか。

僕は・・・そうだなぁ、考え方とか世の中の見方とかは父親のものと近いけど、一方で日常の具体的な行動とか人との関わり方といった「生活の土台」みたいな部分は、やっぱり母親の影響が強いかな。

by 世界の人に聞いてみた

この記事が参加している募集

多様性を考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?