音楽に寛容な母のこと
幼少期の音楽体験は、大人になってもベースになり続けるのではないかと思う。
幼少期ということは、親が聴いている音楽がそのまま礎になることも多いのではないだろうか。
母の日は、母がたりしても良い日だと聞いたので私の母の話を。
私の両親はジャズがきっかけで出会ったくらい、どちらも音楽好きで、私のレコード好きは父、雑食なところは母に影響を受けたのかもしれない。
しかしふたりは私が幼い頃に別れていて、父とも交流はあるものの、私にとっては一緒に暮らしていた母から受け取るものが非常に大きかったと思う。
忙しかった母本人にとっても幼い私にとっても、母が家にいる時間はとても貴重で大切だった。
家ではCDやJ-WAVEの番組を流しながら家事をするのが母のスタイル。
その後ろにくっついて、母のすることを見ながら自分のことをするのが私のスタイルだった。その時流れていた音楽には特別な思いがある。
70代になった今も音楽が好きで、SEKAI NO OWARIの新譜情報は私よりも詳しいし、SixTONESやSnowManなど好きなグループもたくさん。カラオケではあいみょんを歌ったりするらしい。
この間も「さすがに最近の音楽はYOASOBIまでしか分からない」って言ってたけどそこは先頭です。
そんな母に自分が書いた記事を見せることは少ないけれど、アーティストにインタビューした時は「今回はこの方にインタビューしたよ」とLINEで記事を送ったりする。
「こんな方とお仕事できるようになりました、育ててくれてありがとう」という気持ちで知らせているのですが、直接口にしているわけではないので、伝わっていないかもしれません。
母のすごいと思うところは、もし知らなくても「知らない」と素通りせず「どんな歌歌ってる方なの?」と必ず関心を持ってくれる。
YouTubeでチェックして、全力で褒めちぎる!
反応が薄かったことが一度もないし「すごいかっこいいね〜!ダンスも上手だね(絵文字絵文字絵文字…スタンプスタンプの嵐)」
言い出した私ですら、もうええて…と思ってしまうほど褒めちぎる。
「こんなに踊ってすごいね。よく覚えられるよね。疲れないのかなぁ。」
…まぁ、疲れるだろうけど、そういう仕事だから。
そして推し曲も選出してくれる。
以前THREE1989にインタビューした時は「UMBRELLA」にいたく感激していた。
「ねぇこれは何ていうジャンルなの?」
…分かるよ、THREE1989の音は発明だよね。
BALLISTIK BOYZの時は、グループのことは元々知っていた母、いろいろ曲を聴いた結果「All Around The World」がお気に入りらしい。
「衣装も良い」のだとか。母は視覚的に音楽を判断する感覚が優れているように思う。だからYouTubeが合っている。
しかし記事の内容だとか、私が書いた文章についての感想をもらったことがなく、照れてるのか、言うに値しないということなのかは分かりません。
記事の感想が聞きたくて報告しているわけではないので、良いのだけれど。
そんな母、時代ごとに流行するPOPSを聴く一方で、演歌や歌謡曲も聴きこなす。
昔から、一緒に紅白歌合戦を観ると、演歌歌手でもロックバンドでもアイドルでも楽しそうに歌うので、本当にすごい人だなと思っていた。
どんなジャンルの音楽も愛する母のことを、誰かに自慢したい気分だった。
その反面、懐メロの番組みたいなものにはあまり興味を示さず、理由を聞くと「昔の曲を振り返っても何とも思わない」という答えが返ってくる。
記憶のシナプスどうなってる? でも過去にすがらないところが好きだ。
思えば母に「これをしてはいけない」「もっとこうしなさい」と正されたことは今まで一度もなく、何をしても否定せずに肯定してくれる。
どんなに成績が悪くても「頑張ったね」と結果よりも過程を評価してくれたし、出来の悪い私でも、できているところを探して褒めてくれた。
そもそも母自身は、祖父に厳しく育てられたが、競争というものにまったく興味がないのだそうだ。
先日も「昔から競走とか順位とかどうでもよかったし、なんでみんなあんなに競うのか分かんない」と笑っていた。
生まれてくるのが何十年ばかり早すぎた人なのかもしれない。
ひとり親で本当に大変だったと思うけれど、周りと比較せず、姉と私を育ててくれた母。
音楽に対しても寛容な姿勢を、私も見習っていきたい。
年齢を重ねると視野が狭くなっていく気がするが、寛容でいられれば興味を持つことができる。
何事もそこから始まっているのだと感じる。
寛容でいれば何が得られるのか、母から直接教えられたことはないけれど、その優しい背中からいくつも学んできた気がする。
▼このnoteに出てきたTHREE1989のインタビューはこちら
▼BALLISTIK BOYZインタビュー
▼noteで書いているYOASOBIライブレポート
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