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【突撃!隣のCTO】事業者・依頼者の目線に立ち、プロフェッショナルが本業に注力できる世界をつくりたい 株式会社ミツモアCTO・柄澤 史也さん Vol.3

様々なCTOにキャリアや原体験、これからの野望などをインタビューする、techcareer magazine(テックキャリアマガジン)とのコラボレーション企画「突撃!隣のCTO」。

今回は株式会社ミツモアの共同創業者 兼 取締役CTO・柄澤さんにお話を伺いました。インターンとしてIT業界に飛び込んだ経緯から、Yahoo!へ就職、ミツモア起業に至るまでのお話です。プロダクト作りに対する真摯な姿勢に迫ります。

※お話内容や経歴等は全て取材時のものです。


■プロフィール:柄澤 史也さん

ヤフーにて4年間勤務、ヤフオクにてプロダクト開発、オフショアマネジメントに携わったのち、CTO室に異動。ヤフー全体を横断した技術支援などを担当した後、ミツモアを共同創業。東京大学大学院 理学系研究科卒

■自分の理想をやり切るチカラ スティーブ・ジョブズに憧れて・・・

ーエンジニアを志した原体験とキャリアの出発点を教えてください

ベタですがスティーブ・ジョブズに影響を受けています。特に印象に残っているのが、iPhoneが発表された時のジョブズの基調講演です。理想のプロダクトに対するこだわりが強く、当時の技術では不可能と思われていたUX改善の突破口を見つけていく姿勢に感銘を受けました。タッチスクリーンの精度に問題があると言われてましたが、精度を高め続けるこだわりによって、ユーザー体験を違う次元にまで引き上げた点は凄いとしか言えません。スティーブ・ジョブズの部下の方々は大変だったと思いますが(笑)、自分の理想をやり切る力に勇気をもらいました。彼の持つ革新的な考え方に衝撃を受け、憧れと共にIT業界に興味を持ったのがエンジニアを志した大きなきっかけです。

プログラミングを始めたのは東京大学に在籍していた頃です。サークルのメンバーが使う、管理ツールのようなWebサイト・iPhoneアプリを個人で開発していました。その後、大学院在籍中に小さなベンチャー企業へインターンとして入り、Androidアプリなどを開発。それがキャリアのスタートです。

ーそのベンチャー企業で学んだことを教えてください

少ない人数で良いものを作っていると思ったのですが、利用者が増えずに苦戦し「どうやったら多くの人に使ってもらえるものを作れるのか」が自分の中で課題として残りました。技術的な成長実感とともに、苦戦した経験から自分のやりたいことは「プログラミングをする」ことより「世の中に新たなサービスを提供したい」ことだと気付きました。ここでプログラミングを学べたことは大きなステップにもなり、今でも本当に感謝しています。その後、新卒でYahoo!に入社しました。

ーYahoo!に入社されてからのエピソードを教えてください

Yahoo!入社直後は、ヤフオクの開発に配属されました。当時のヤフオクは、トラフィックの量も多く、100人ぐらいのエンジニアが関わる今まで経験したことがない規模のサービスで、歴史があるシステムでした。最初に担当したのは古くなったシステムのリニューアルです。また、一部オフショアで開発しており、ベトナムチームをまとめる開発マネジメントも自分で手を挙げて担当しました。それが初めてのマネージャー経験となります。一般的には、ベトナムのエンジニアは日本のエンジニアと比べて開発することに対しての姿勢や考え方などが違い、特殊なマネジメントが必要と言われていましたが、幸いにも大きな苦労はありませんでした。Yahoo!ではエンジニアとしてのスキルはもちろん、マネジメントスキルを学ばせて頂きました。本当に感謝しています。

次にCTO室のSWATチームに異動しました。SWATチームとは、困っている部署に派遣されてヘルプするチームで、長引いているプロジェクトの「火消し」をすることが多いです。私が担当になった業務は新しいアプリケーション基盤の選定と導入で、PoC、セキュリティー検証、導入サポートなどを行っていました。

ーCTOを意識したのはCTO室に異動してからですか?

CTO室のSWATチームに異動しCTOの仕事ぶりを間近に見て「組織の全体を見るというのは大変だ」と感じました。正直に言えば、当時は「CTOになりたい」というより「自分のプロダクトを世に出し、多くの人たちに使ってもらいたい」という漠然とした感じを抱いていていましたね。その想いが起業のきっかけにも繋がります。

Yahoo!では新規開発よりも既存のプロダクトの開発が多く、あまり新しいプロダクトを作れる環境ではなかったことから、自分のプロダクトを作り「価値を提供して喜んでもらう」これを次のチャレンジに考え、ミツモアを立ち上げました。

ー「ミツモア」についてと、ミツモアを作ったきっかけについて教えてください。

ミツモア」とは暮らしからビジネスまで、色々なプロと出会えるサービスです。例えば、ビジネスでは、税理士や行政書士、社会保険労務士など、企業の管理部門において必要とされる専門家がたくさん登録しています。専門家たち(事業者)は自身の情報を登録すると、ユーザー(依頼者)から依頼が届き、見積もりを送ることができます。マッチングされると受発注契約が成立するといった内容です。

プロダクトのアイデアは、創業者 兼 代表取締役CEOの石川が持ち寄ったものです。まず、会社のビジョンである「日本のGDPを増やす」に共感しました。日本のGDPは、個人事業主や中小企業が占める割合が大きいにもかかわらず、個人事業主や中小企業のIT化が進んでいるとはいえません。そこで、「効率的な働き方ができていないのでは?」という問題意識を持ちました。個人事業主のプロの方たちが、専門的な業務をしている時間は3割ぐらいと言われており、残り7割は他の業務(例えば集客や経理など)に追われています。彼らがプロフェッショナリズムを発揮する時間が長くなれば、世の中により多くの価値を提供でき、売上も増え、最終的に日本のGDPを底上げすることに繋がります。このような課題を解決したいと強く感じ、一番の課題だと考えた集客を効率化することがスタートになりました。プロフェッショナルが本業に注力できるシステムを作るイメージです。

■CTOとしてのキャリアジャーニー

ー技術責任者として今取り組んでいること、これから取り組みたいことを教えてください

現在取り組んでいるのは、1.  新しいカテゴリ立ち上げのプロジェクト、2. 社内のデータ分析基盤の更なる整備と拡充、3. 開発チームの組織拡大です。これから取り組みたいこともたくさんありますが、まずはこの3つにフォーカスしています。

ミツモアは戦略的に対応するカテゴリを拡大しています。新規業界についてどのようなプロダクトを展開していくのかを技術的な観点で考え、プロジェクト開発・進行を推進しています。

2つ目のデータ分析に関しては、「ミツモア」のほぼ全てデータがBigQueryに集約するようにし、適切な変換や結合などの前処理を行っています。今後はその基盤を継続的に整備して、ビジネスの意思決定に有効活用していくように進めていきたいです。

最後の組織に関してですが、現在の事業の成長スピードに開発組織が追いついていない状態で、プロダクト開発チームの拡大が急務だと考えています。採用の強化とともに、プロダクトマネージメントや開発フローに対しての方法論をトライし、開発体制をブラッシュアップしていきたいです。この部分はまだまだ発展途上で、模索しつつ進めています。

ー経営陣の一員として今取り組んでること、これから取り組みたいことを教えてください

会社全体の事業戦略や目標管理です。一方で、株主との定例会議の準備や、再拡大が懸念されているCOVID19への対応を行っています。社員の状況を踏まえて対応方針を検討することはもちろん、席を離し消毒液を設置するオフィス環境の整備など、ベーシックなところから手を動かしています。

ー柄澤さんが考える、これからあるべき技術者(エンジニア)像とは?

エンジニアとして、最新の技術をフォローするのは大事ですが、ベーシックなアルゴリズムやアンチパターンを人に説明できるぐらい理解していることが重要だと考えています。あと重要なのは、エンジニアのコミュニケーション能力ですね。そもそもプログラミングは人も読むもので、ある意味コミュニケーションだと考えています。エンジニア同士のコードレビューもコミュニケーションの1つです。コードも実装によっては他の人が理解しづらかったり読みづらかったりするとメンテナビリディが下がり、担当者しかわからないブラックボックスになってしまいます。共同作業の開発では「コミュ力の高いコード」を意識した開発ができるのが重要だと考えています。

■悲観的にならず、信じて動き考え続ける

ー柄澤さんの「信念」「価値観」「大切にしていること」は?

プロダクトに関わるときに大切にしている想いは、「Keep it simple」「Less is more」です。複雑なものをシンプルにしたり、シンプルに見せたりすることは、それだけで価値があると考えています。プロダクトは成長と共に機能が追加され、肥大化していくのですが、「シンプルに保つ」ことを信念としています。

加えて、会社が大きくなるにつれて大切にしていることは、オープンでポジティブな姿勢です。声を掛けやすい、情報の分断がないことが大事だと思います。ポジティブであることは、世の中で難しいとされる課題や、技術的に解決するのが難しい問題に対しても「何らかの解決方法があるだろう」という姿勢に繋がります。悲観的にならず、信じて動き考え続けるのが私の価値観ですね。

ーオープンな姿勢やポジティブな思考の源を教えてください

ポジティブ思考の源は両親なのかもしれません。私の両親は明るくポジティブで、マイナスな発言をしていませんでした。放任主義の家庭であまり怒られず、やりたいことあった時に「ダメ!」と言われたことはありません。肯定的にサポートしてくれた両親にも感謝しています。

■プロダクトを大きくする

ー柄澤さんの目標や野望を教えてください

現在のプロダクトである「ミツモア」をより成長させることです。現状ではNPS調査で良い数字が出ており、依頼者目線で「ミツモアは使いやすかった」「ミツモアは便利だね」と喜んで頂いています。事業者目線でも年商や収益が増えている企業様から温かい言葉を頂けているのはうれしいですね。これからも良い結果を増やしていきたいと思います。そのためにもサービスのトラフィックを増やし、より洗練されたシステムを構築しながら成長させていき、ミツモアをさらに大きくすること、それが今の目標です。

ー最後に読者へお知らせしたいことがあったら、教えてください

ミツモアでは、プロダクトチームの組織拡大フェーズに入りました。エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーを募集をしているので、気軽に話を聞きに来てください!

■取材を終えて

取材中も言葉を丁寧に選び、わかりやすくシンプルな表現を常に心掛ける柄澤さんの真摯な姿勢に感銘を受けました。決して雄弁ではなく、謙虚で朴訥(ぼくとつ)としながらも、シンプルに本質を語る姿勢は職種を越えても必要とされます。そんな柄澤さんの休日の過ごし方はSF系のRPGやパズルゲームをすること。映画もSF系が好きで、特にクリストファー・ノーラン監督「インセプション」がお気に入りだそうです。お気に入りの理由は「夢が多重構造になっている部分の映像表現や、時間が過ぎる速度の違いの表現が上手い点です。途方もない世界観にロマンを感じました」と話してくれました。次なる柄澤さんのロマンに期待しています。

(取材・執筆:techcareer magazine