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『カルタグラ ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》』感想

 どうもです。

 今回は、2023年4月28日にInnocent Greyより発売された『カルタグラ ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》』の感想になります。

OP「孤独の海」
作詞:六浦館、作曲:MANYO、歌:霜月はるか
コーラス:霜月はるか/真理絵

 MANYO×霜月はるかは名曲確定演出なんよ…。そしてもれなくクリア後に聴く方が化ける曲でしたね…本当に泣ける。付属CDにもフル尺が収録されており、すぐに余韻に浸る事ができました。心地よいエモーショナル。
 プレイしたキッカケですが、『殻ノ少女シリーズ』が最高だったので、以上。『カルタグラ』が時系列的には前に当るとの事だったので、一日でも早くやりたかったのですが、FHDが出るならばと我慢してた次第です。因みに、『殻ノ少女シリーズ』の感想は以下になるので、よければ読んでいただけると嬉しいです。

 では感想に移りますが、受け取ったメッセージと、キャラクターの印象を主に書けたらなと。こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。

1.受け取ったメッセージ

 本作は"人を信じる事から始まる愛の尊さ"を描いてくれたと思っています。ですが、この文だけだと、薄っぺらいのでキーワードで掘り下げていきます。キーワードはズバリ「盲目・盲目的・盲信」辺り。お馴染みキリスト教や千里教と云う宗教団体が登場し、信仰を捧げ盲目的な信者がいました。また、由良は盲目であると云う大前提が覆され、これはある意味(気付いていなければ)プレイヤーである私達も盲目的になっていたとも言えます。そして、由良は例え盲信と言われ様とも秋五に執着していました。以上より、先のキーワードを上げた次第です。では結局、これらを通して何を伝えたかったのか自分なりに色々想う事があったので、少しずつ紐解いてみます。

 いきなりですが、"盲目"って悪い事でしょうか。本作を体験すると100%悪いとは言い切れない気がします、少なくとも自分はそう。だって、由良の盲目さが無かったら秋五へのあの愛の深さは無かったはずだから。【海の光】ENDを見てしまったら最後、愛されたいとずっと願っていた彼女の愛を否定したくはないから。
 でも、だからと云って全肯定するのも違う訳です。では何が悪かったか。実際には盲目的になって自分を見失う事が良くなかった。盲目的に何かを誰かを信じた結果、思考停止になり、そこに自分が存在しなくなった事が良くないんだと思います。つまり、誰かの操り人形みたいになってはいけない。
 ただ正直、人がその様な盲信状態になっている事は線引きが難しいと思います。最初はただ普通に信じているだけだったのに、やはり信じている状態は気が付かない間に人の声が聞こえない程に行きすぎる事もあります。一旦行きすぎれば気付く事も難しくなるし、奥深くなればなるほど我に返りにくく、周囲と距離ができ孤立し、抜け出す事も容易ではなくなる。行きすぎた愛を相手に押し付けてしまったら、それはもう呪いとも言えます。

 考えれば考える程難しい線引きですが、本作では一つの答えを提示してくれていた様に思います。自分が存在しているかどうかは、自分が責任や罪と向き合えているかどうかであると。つまり、信じる事を他責にしてはいけないんです。信じる事に必ず付き纏うのが裏切られる事。裏切られた事に対して、他責ではなく自責にできる、受け容れられる覚悟があるかどうかです。

 終盤、秋五が有島さんを追い詰めたシーンが"信じる事と裏切られる事"が描かれた代表的シーンに挙げられますかね。まず、有島さんは妻と国に裏切られた訳です。でも彼は裏切られた事を受け容れられず、あの様な事態を招いていきました。そして、あのシーンに於いて、秋五は言わば有島さんに裏切られたも同然。ただそれでも秋五は有島さんに対して"まだ堕ち切っちゃいない"と信じていました。恩人で憧れで理想だったから、全部がウソだったなんて思えないからと。そして、秋五は信じてもらえるか解らないけれど、八木沼を信じていました。結果、彼は駆けつけてくれましたね。
 有島さんの気持ちも確かに解らんではないんですが、やはり裏切られた側の痛みを身に染みて感じているにも関わらず、秋五達にそれを強いてしまった事が他責的行動になってますよね。一方で秋五は彼がそうする事も覚悟の上で信じ続けました。少なくとも自分と一緒にいた"有島さん"はいつだって間違っていなかったから。有島さんを信じると云うよりも、そんな自分の中の"確かさ"を信じた。そしてこれは、"絶対的な確かさ"なんて一つも無いからこそ、その曖昧さを受け容れたとも言えるかもしれません。

 やはり、”裏切られてもいいと思えるような人を信じる"みたいな形が美しいのだと思います。よく耳にしますが、裏切られたのではなく、他人に期待しすぎた自分が悪いと考える方がずっと良いです。事実と認識が完璧に一致するはずがなく、そこに対して盲目的になってはいけない。当たり前ですが相手は自分ではないのですから。でも裏を返せば、その認識に確たる証拠が無いからこそ、人は信じる事を止められないのでないかと。だから、そんな時に自分を支えてくれるモノは絶対に必要で。それが先述した、曖昧さをどれだけ受け容れられるか。器の大きさみたいなモノですね。それこそが自分や相手を信じられるパワーなんじゃないかと思います。

 若干脱線気味になりましたので、再度"責任や罪と向き合う"とは何か掘り下げていきます。ひとつ特別印象的だった言葉がありました。

「お前は、自分の運命から逃げ出して、安易に他人の人生を望んだ。たとえどんな境遇にあろうとも、それは許されることではない」
「結局の所――、お前は弱かったから、運命に屈した。それだけのことだ」

蒼木冬史-『カルタグラ ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》』

 生まれながらの障害を背負った冬史の言葉。由良にとっては突き刺さる言葉だったはずです。でも全員が全員、冬史みたいに強い訳ではないのも事実なんですよね。由良みたいな人も普通にいる。そーゆー人にとっては空っぽの虚しさを感じながら生きるよりは、"何か"でその虚しさが埋まっている方が楽。もっと言えば、そうしないと生きられないのかもしれません。

「自分を保ち、生きる力を持ち続ける為には、憎むべき誰かが必要だったんだろう」

高城秋五-『カルタグラ ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》』

 だから、例え何と言われようとも対象に執着するんだと思います。由良は和菜を取り込もうとしたし、秋五に縋り続けた。そうするだけの理由や想いがやっぱりあって、引き剥がす事も難しく、故に冬史みたいな人になるのも凄く難しいのだと思います。ただ、その果てに待っているのは破滅しかないから、彼女は警告してくれた。何時かは何処かで見失っていた自分を取り戻さなければならない。秋五が由良との時間を重ねていく中で自分を見失いかけていたシーンもありました。

由良の言った通りかもしれない。オレは、自分の心を押し殺していた。
違和感を、無視し続けていた。
何も考えないように、ただ彼女を愛することだけを考えていた。
はっきりと答えを知るのを、恐れていた。

高城秋五-『カルタグラ ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》』

 今作を体験した方なら解ってもらえると思いますが、ここで絶対に言えるのは虚しさや恐れ、苦しみは外部からは埋めることができない事。結局は、自分と向き合い、内部からの意思や感情で埋めるしかない。でもそれで空白が隅々まで完璧に埋まるかと言われると、そうではないですよね。だから、ここで先の話が絡んできて、最後の最後は信じるしかないんだと思います。

 改めて、"信じる"というのは、目の前の現実や自分自身から目を背けることの免罪符では無いと思います。繰り返しますが、まずは"絶対的な確かさ"なんて一つも無いからこそ、その曖昧さを受け容れる事。その為に必要なのが、自身の不安や疑念、執着等と徹底的に向き合う覚悟。そして、執着等を少しずつ手放した先で、最終的に自然と生まれるのが"信じる"なんだと思います。

 秋五も10年前に由良から離れ、彼女の願いに応えられなかった責任と向き合いました。そして、由良も秋五と快復を経て暮らしていく中で、執着を少しずつ手放していく事ができました。【海の光】ENDに向けて必須になる「不安は無い」「信じる」なんかも非常に印象的な選択肢でしたね。そうして由良は"憎む"以外の生きる力、自分を保つ力を得る事ができていました。生きている事全てがこんなにも面白いのかと。

面白いのだ――全てが。
生きている事が。

上月由良-『カルタグラ ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》』

 ずっと監禁され、研究所へ連れて行かれ、千里教で祭り上げられ、普通の生活を一切してこなかった彼女。人形みたいな扱いをされた苦しみや、孤独の辛さが痛いほど伝わってきました。だから、彼女が笑顔で過ごせる"何気ない日常"を見ているだけで涙が出る程嬉しかった。そこに詰まった幸せをずっと感じていたかった。
 でも、彼女は一度それを手放す選択を取りましたね。きっとこのままではいられないから。この幸せを手放す訳にはいかないからこそ、一度手放す。幸せを噛み締めて、改めて自分と徹底的に向き合い、罪を償わなければと。胸を張って母親として入れるように、優しく人に手を差し伸べられるように、そして、この幸せを再び噛み締められるようにと。そんな由良の想いを受け容れた秋五は帰ってくるのを信じて待つのでした。

どれだけの時間が必要かは、分からない。
待ち続けた先に、オレたちが幸福になれる保証なんて、どこにもないだろう。
だけど――。
真っ暗な闇の中で由良が待ち続けたように。
オレたちも、ただ信じ続けよう。

高城秋五-『カルタグラ ~ツキ狂イノ病~《REBIRTH FHD SIZE EDITION》』

 軽くまとめます。
"信じる"というのは大切だし素敵な行為です。注意すべきは、自分を見失わない様にする事。その為には徹底的に自分と向き合い、どんな現実と対峙しても受け容れられるだけの器を持つ事。そうして、振り返ってみたら自然と"信じる"事ができていた。それが美しい形だと思います。だから、もし何か"信じる"事に対して執着が絡んでいる気がするのであれば、一度その"信じる"から離れてみる事で、本当に"信じていたモノ"や"信じるべきモノ"に気付けるかもしれません。誰かに愛されたいのであれば、一旦その執着を手放して、まずは自分を愛してみる。その先に幸福は保証されていないけれど、それも受け容れられる様になってるはずで、可能性はある。最高の笑顔を魅せて由良が帰ってきてくれた様に。そして、"信じて良かった"と思えたのならその瞬間がきっと幸福になる事でしょう。

 受け取ったメッセージは以上になります。何か少しでも感じ取って頂けたり、考えのヒントになっていたりしたら、嬉しいです。


2.キャラクターの印象

 個別√あったヒロインはその話も交えながらキャラクターの印象を書いていきます。相変わらずキャラ描写は丁寧で本当に作品内で生きていると感じられたのが良かったです。※登場キャラ全員いないのはご了承ください

高城たかしろ 秋五しゅうご
 良くも悪くもまだ若いと云うか『殻ノ少女シリーズ』で感じた印象とは違って新鮮でしたね。この頃はまだどちらかと云えば感情的で、少し危なかっしくて、頼れる主人公像とは決して言えないけれど、理性と本能の狭間で揺らぐ感情を大切にしてる人間臭さが好きでした。時には自分を顧みず、人の痛みや苦しみに敏感な、とことん優しい人だったと思います。

上月こうづき 和菜かずな
 
和菜の印象は殻ノ少女シリーズと然程変わりませんでした。本当に強い人。由良に刃物を突き付けられるシーンで、"もう充分、好きなことをさせて貰った"と言える強さは本当に凄い。それだけ今を全力で生きてきた証拠だと思いますし、由良への想いも。そんな行動力の凄さ以外にも、表情豊かでポンコツな処が好きでした。和菜ENDでは、秋五と共に由良を失った悲しみと向き合い乗り越えていく姿がやはり印象的でしたし、『殻ノ少女』への繋がりも綺麗に思えるエンディングでした。

初音はつね
 幼い頃の初音ちゃんも可愛かったです。この頃からドジっ子だけど頑張り屋さんで健気で気丈な娘で。雨雀さんへの恩に溢れ、自分にできる事は無いのかと精一杯に行動する姿が本当に立派でした。初音ENDでは娘の桜も生まれて、憧れていた家族の形を築けていて嬉しい気持ちになりました。

高城たかしろ 七七なな
 ヤバい事には変わりないんだけれども、彼女みたいな突出した何かを持っていると問答無用で人としての強いなと思わせてくれましたね。目的の為ならば手段を選ばない強欲さと行動力、そして探偵顔負けの推理力。秋五とは違って、良くも悪くも相手への当りが強いのも実に爽快でした。

蒼木あおき 冬史とうじ
 『殻ノ少女シリーズ』でも大好きだったので、冬史ENDがあって嬉しかったに尽きる。ブレない芯のあるカッコイイ姿はこの頃から健在で、その上女性としてちゃんと可愛いのズルすぎる。照れると云うか、秋五への想いだけは偶に露呈するのがやはりツボでした(あと味噌オタク)。簪を使ってのトドメだったり、濡場での左腕だったり、彼女のアイデンティティみたいなモノが真っ向から描かれていたのもとても印象的でした。

りん
 
彼女の生還√は無いのかと朝まで必死に探した記憶。個別√で命だけは救えて良かったです。隻眼になってしまったけれども、最後には「なんでも楽しいんすよ」と、由良ENDと同等とも云える形で帰結したのは美しいと思えました。底抜けの明るさと、人懐っこい性格が本作の雰囲気に於いては救いであったし、そんな姿が堪らなく好きでした。

綾崎あやさき 楼子たかこ
 "ですの"口調良いかもしれない。そんな風に思われる程可愛らしい娘でした。とても誠実で育ちの良さが出てる一方で、フワフワした雰囲気と甘えん坊さんな処が守ってあげたくなる系だったと思います。再会した際のラストCG、秋五目線の破壊力は中々にヤバかったですね。

雨雀うじゃく
 
面倒見良い頼れるお姐さん。人生経験も人脈も豊富なんだろうなと人間力の高さが窺える程でした。頼られる側で困る事もあるはずなのに、そんな弱さを安易に見せてはいけないと自覚と覚悟がある強い姿が好きでした。秋五に手料理を振舞いまくるシーンが好きです。むっちゃ可愛い。

有島ありしま 一磨かずま
 
秋五が有島さんを慕う理由が伝わってくるからこそ、恨み切れない存在でした。直接描写は無くとも、裏切られた時の悲しみや怒りは計り知れないモノだと思いますし。秋五との対峙で動揺を魅せたり、彼を責めなかったり、自身の手で最期を迎えたり、覚悟と優しさが垣間見えたのは良かったです。

八木沼やぎぬま 了一りょういち
 
まだ丸くない、尖りまくってた時の八木沼キレキレで最高でした。『殻ノ少女シリーズ』を未プレイだったら違う印象を持ってたかもしれませんが、事情を解っていると彼の仕事スタイルを否定し切れない。そして、ベストタイミングでやっぱり駆け付けてくれる八木沼最高!!

上月こうづき 由良ゆら
 由良ENDの物語はひたすら彼女の事が愛おしすぎて、【海の光】ENDは涙無しで見れませんでした。愛と狂気は表裏一体とはよく言いますが、狂気的な部分に"こうなってしまうのも解らんでもない"と感情移入を誘ってくるのが本当に巧い。人の原動力と云うのは割とネガティブでマイナスなモノが根底にあるのが殆どでその方が強靭だとも想ってるんですが、彼女が再び愛する娘と秋五の為に罪と向き合う事を決めたのも、その原動力があってこそだと想いました。彼女の行いは間違ってもいたし、間違ってもいなかったと云うか、長年に渡って彼女を突き動かし続けた想いの強さは称えるべき側面も間違いなくあるなと。少しずつその強さの形や質を変えていく事ができた訳ですし、彼女自身は報われたいなんて少しも想ってないだろうからこそ、笑顔を見る事ができた時には本当に良かったと心の底から想えました。この先の貴女の人生に幸あらんことを祈っています。


3.短編小説「八重の櫻の樹の下で」について

 今回購入した製品版に同梱の短編小説「八重の櫻の樹の下で」についての感想とかを書いていきます(※ネタバレ注意)。

 約87ページに渡る物語で、時系列的には本編より5年前になる終戦後、綾崎家で起きた後継者争いに関する事件と、併せて楼子の掘り下げになる過去エピソードが描かれました。有島さんの紹介で警察官になった秋五と玲人。やっぱり有島さんの事はかなり前から慕っていたんだなと解りましたね。
 出雲の綾崎家の方に飛ばされた秋五、そのまま秋五視点で何事も起こってない、起こらないはずは無く、当主からは楼子達の警護を任されながらも殺害事件の真相を追っていく事になります。本編よりも秋五の推理力が際立っており、どんどん読み進める事ができました。無事犯人を特定し事件自体は収束に向かいました。晴れて東京へ帰還するかと思いきや、京都行きの列車内で夏目さんと鉢合わせて結局実家に寄る事になり、最後には七七とも久々の再会。七七から秋五の上を行く推理を告げられて幕を閉じました。秋五の推理で納得できてはいたので、舌を巻きましたね。ゲイ同士ってそんなまさかと俄かには信じられませんが、政夫さんが相手にしてくれなくなったらと…蓑笠さんの悔しさが憎しみに変わってしまったんですかね。やはり異常な嫉妬心ほど恐ろしいモノは無いです。

 楼子ちゃんが末っ子なのは解釈一致すぎたと云うか、通りで甘えん坊さんな訳だなと。この頃からしっかり者で、やはりと云うべきか"ですの"が止まりません(余裕の脳内再生)。てか、楼子ちゃん以外の姉は"ですの"多用してないですねw 彼女の目撃情報も役に立ち、最後には秋五と東京でまた逢って欲しいとロマンチックな約束をしてお別れ。櫻が舞う中で秋五と手をつないで隣を歩いたり、頭を撫でて貰ったり、一緒に寝たりと、忘れられない想い出になっただろうなと思います。それを糧に再会を夢見て勉強を頑張ってきたのだと想うともう胸が一杯になりましたね。

 毎度の事ながら特典小説とは思えない、とても満足感ある内容でした。読まなくても本編に影響は無いけれど、ファンアイテムとしては欠かせない絶妙なラインが本当に良き。


4.さいごに

 紛れもない名作。
 ライターさんは飯田和彦さんと、鈴鹿美弥さん。『殻ノ少女シリーズ』同様、事件を追っていく緊張感や没入感を楽しむ事ができました。その過程で遭遇せざるを得ない光景はどれも目を背けたくなるモノでしたが、乗り越えなければならないと、そっちの気持ちの方が勝るのがやはり醍醐味ですね。救われない話が殆どの中で、ifを楽しむ事ができる個別√の数々もボリュームがあって良かったです。繰り返しになりますが、"この決断で良かった"、"信じて良かった"、辺りがどの√にも通ずるメッセージなのかと思います。信じる事からきっと何かが始まる事を忘れない様にしていきたいですね。
 正史の物語としては、主人公である高城秋五の物語(和菜との【トゥルーエンド】)になるんですが、本編単体で見ると個人的には上月由良の物語として捉える方がとても好きです。プロローグが由良の語りだったのもあり、ずっと彼女の存在が気になっていましたし、【海の光】ENDに辿り着けた時の感動は何物にも代え難く本作で一番心に残っています。
 他には殻ノ少女シリーズに引き継がれている要素が色々発見できて良かったです。解体死体や印象的な翼の飾り、由良が和菜を取り込む事とか。空木や荒田の名が出たのも同じ世界観として繋がりを感じれて良かったです。

 原画は、スギナミキ(杉菜水姫)さん。美しいイラストの数々、濡場も含めて非常に眼福でした。恐らくコレがFHDの新規描き下ろし分だろうなと一目で解るのも多かったので、当時のCGと併せて楽しむ事ができました。お気に入りはやはり【海の光】ENDの「ただいま」を告げる由良ですね。白いワンピースを身にまとう成長した月子ちゃんも綺麗な娘でした…。

 声優さんも当時と変わらないラインナップと云う事で、結構イノグレ作品でしか聴けない声優さんもいらっしゃるので本当に有難い限り。本作ではやはり秋城柚月さん、二役の演じ分け素晴らしかったです。あと、設定のキャラクター別音声の遊び心も相変わらず搭載されていて安心しました。

 音楽は、安心と信頼のMANYOさん。ピアノ主体の素朴で美しい叙情的な音楽が多く大変満足です。緊迫感を煽るには欠かせない楽曲達も健在でしたね。付属のサントラでフル尺を堪能していますが、「夕凪」「艶」「月の涙」「慟哭」「恋心」「海の影」「海の闇」「海の光」が特に気に入っています、ボーカル曲は1曲選ぶなら「孤独の海」が好きです。

 とゆーことで、感想は以上になります。
改めて制作に関わった全ての方々に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。年内に開催予定の『殻ノ少女画展』を楽しみにしております。

 ではまた!


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