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『Geminism 〜げみにずむ〜』感想

 どうもです。

 今回は、2023年11月24日にCRAFTWORKより発売された『Geminism 〜げみにずむ〜』の感想になります。

主題歌 「twyndyllyngs 〜不具合のアリス〜」
作詞・作曲:さっぽろももこ、編曲:deli.
歌:廣杣桔梗(中家志穂)・廣杣深紅(中家菜穂)

 主題歌「twyndyllyngs 〜不具合のアリス〜」むっちゃカッコイイ!ダークな雰囲気、シンフォニックなサウンドと美しいメロディに引き込まれますね。緩急の付け方が良い、さっぽろももこ先生さすがです…。ヒロイン2人のお声を実際に担当されている中家姉妹の歌声も好き。
 プレイしたキッカケですが、電波ゲー界のレジェンドCRAFTWORKの新作が22年ぶりに出る!とニュースが出て、単純に興味が沸いたため。代表作『さよならを教えて』は未プレイですが、PVや雰囲気的に今作から入っても問題なさそうだったので、ミドルプライスだし思い切って挑戦しました。

 では、感想に移りますが、受け取ったメッセージと、雑感をなるべく簡潔に書けたらなと。こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願いします。


1.受け取ったメッセージ

 と題してるのに申し訳ないんですが、メッセージ性に重きを置いてる作品ではない気はしました。ただプレイ後には考えさせられると云うか、根底にある哲学はこの辺りなのかなぁとか思う処はあったので、今回はそれをありのまま書いてみます。

 凄く端的に言うと、””幸せになりたい””って難しいよなぁと。そんな事を改めて考えさせられましたね。

 桔梗と深紅、不幸せであると思ってた2人。でも、淡墨と月白に拾われてから少しずつその想いが変わっていきました。ただ単純に幸せを求めていくだけでなく、最期には私達は元から幸せだったんじゃないか…って処まで。

 2人の生活は明らかに対照的でありましたが、どちらも其々の幸せの形を手に入れていました。足るを知る的な幸せもあれば、有り余る過ぎた幸せもあって。共通していたのは、外の世界が思い描いていた様な幸せばかりでは無かった事。それに気付けたからこそ、私達は幸せだったんじゃないか…って思いにも至ったはずなんです。

 五体満足と云うだけで充分幸せなのではないか。逆に、五体満足でなくても実は幸せだったのではないか。桔梗と深紅で云えば、そもそも結合双生児だった状態でも幸せだったのではないか。少なくとも"幸せな瞬間"が全く無かったって事は"ない"はずだと。実際、お祭りの"思い出"の味だって、充分幸せだったと気付けましたし。

 不幸せだと考えていた原因の一つが、母(紫)に裏切られた事でした。最後まで娘2人を愛せるはずだと信じ切る事ができなかった母の気持ちも解らんではない。けれども、裏切られた側の深紅がずっと錯覚していた"普通じゃない"に気付いてしまった瞬間の辛さ方が辛かった。私達は忌み子だと。この時から、信じると裏切られる、だから最初から信じない。みたいな考え方が根付いてしまったのも頷けます。

 それでも、淡墨や月白への警戒心は少しずつ晴れていってるのが伝わってきました。やっぱり、先の考え方は実は心理的錯覚で、本当は信じたいからこそ、そうなってるジレンマ的な感じだと個人的には思っています。深紅がそんな葛藤の末に、夢を叶えてくれた月白への恩を返すまでは頑張ってもいいかも、と最後の仕會わせに挑むのも印象的でしたし(あれは何より、大切な桔梗の事を想っていたのも胸に来るポイント)。

 何が言いたいかと云うと、良くも悪くも"今あるモノ"を見つめ直す機会、錯覚していただけかもと気付く機会は大切にした方がいいのだと思います。例えば、自分としては普通だと思っていたのに、実はとても魅力的であると改めて気付かされる事もある。言い訳として利用していた錯覚をキッカケに何かの存在に気付いて、次への希望に繋がる事だってある。錯覚であるとした"幻肢"を通しての経験もそうですね。最後2人での溶け合った会話は、正にそう言った気付きの答え合わせをしている様でした。

 我慢して赦してあげなければと思っていた桔梗。
 痛くても守ってあげなければと思っていた深紅。
 別離を受け容れ、喋りたかった桔梗。
 寂しさから、一緒にいたかった深紅。

 どちらも事実だと思う一方で、お互いにそう錯覚してるだけで逆の本心が眠ってもいたはずで。気持ちも記憶もあの頃から其々が持っていて、お互いにとって一部であり、全部だった。別々になって初めて、元々何処かに存在していた気持ちに気付けて、気持ちを伝え合う事ができた。哀しい結末ではあったけれど、哀しいだけじゃなかった。だから、エンディングを迎えた時に、切なくて寂しいのに心温まる何とも言えない余韻が私には残りました。

 2人とも幸せを追い求める中で相対的幸福感とかではなく、個々の純粋な気持ちが保たれて、守られていた事が本当に良かったなと。唯一の救い。お互いに色々あったねと言い合いながら、更なる夢も描ける様になって…。お互いがお互いの幸せを願って感じている。同じ境遇だった淡墨と月白も、桔梗と深紅に出逢う前よりはずっと幸せそうに感じられました。

 結論に戻りますが、やっぱり””幸せになりたい””って難しい。既にある幸せに気付く事も大切だと思いますし、次の新しい幸せを願ってもいいはずなので。本来「仕合わせ」と云う言葉が良いことも、悪いことも、全て含めて「しあわせ」としていた様に見方を変える事もできますね。幸福か不幸かは本人にしか解らないからこそ、自分にとっての”幸せの基準”とか、"幸せな状態"って何かを考えて。そんな"幸せ"が長く続くように、胸を張って"幸せ"だと言えるようにしていけたら良いよなと。人間って意外と単純なので、笑顔が溢れる日常なだけで脳が幸せと錯覚を起こすと思いますし、逆にね。錯覚だとしても、そこからまた別の幸せのループが回り出して、積み重なっていくのが理想かもです。

細やかでもそういう事を経験して積み重ねていくのが、もしかしたら"幸せ"なんじゃないかな。

深紅

 今作を通して考えさせられた事は以上になります。今回は本当にまとまりが無くて申し訳ないのですが、何か少しでも感じ取って頂けたり、考えのヒントになっていたりしたら、嬉しいです。


2.雑感

 シナリオは旭さん。想像していたよりもアッサリしていたのが正直な処でした。作風も物語も。でも「幸せの追求」と云う普遍的なテーマに対して、ユニークなアプローチで斬り込んでいったのはオリジナリティがあって良かったなと思います。それに、先述した様に、切なくて寂しくて少し心温まる何とも言えない余韻を残してくれたのも大きかったです。好きか嫌いかは置いといて、間違いなく心に刻まれる作品ではありました。
 桔梗√後に深紅√が解放され、テンポよく2人の関係性が浮き彫りになっていく中で、愛着も湧いていきました。もっと姉妹2人で生きていて欲しかったなと…。

 原画は、長岡建蔵さん。ちゃんとイラストを見るのは初めてだったんですが、古風な雰囲気とハッキリとした表情が良かったです。カットインで入ってくる瞳だけで表情や感情が読み取れるのリアルで非常に好みでした。

 声優は、杯榴万花さん(山家 淡墨)、皇帝さん(月城 月白)、中家志穂さん(廣杣 桔梗)、中家菜穂さん(廣杣 深紅)。男性2人はお馴染みの声で安心感。女性2人はリアル双子声優さんって事で、掛け合いも自然でしたし、絶妙なニュアンスが出ていた気がします。桔梗と深紅も可愛かった。

 音楽は、さっぽろももこさん。昨年の『BLACK SHEEP TOWN』ぶり。色褪せないクラシカルなスタイルで、多彩なサウンドを聴かせてくれて最高でした。物語のテンポ自体が良いので、ころころ変わっていくのも楽しくて。一瞬で雰囲気を変える舞台音楽っぽさがあったのも良かったなと思います。

 とゆーことで、感想は以上になります。改めて制作に関わった全ての方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。『さよならを教えて』も興味が無い訳ではないので、いつかやるかも…⁈

 ではまた!


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