差羽ナガレ

歌ってくれないか、どうか私の為だけに

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カナリアイエロー

掛け違えたボタンは 元に戻らず 孤独を一人歩む 不良少年は カナリアイエローの マッハⅢを 手放さなかった 何かに呪われながら 公道を走り続ける夜に 黒いカラスとすれ違った 黒いカラスは 白いマッハを飛ばし カナリアイエローの 塗装を剝がして消えた 不良少年が愛した カナリアイエローの 優しく美しい色を

    • 貴方の右手を

      静まり返った夕暮れに 突き刺さる初夏の風が 私の體に絡み付き 決して解けないまま 貴方が居る筈の 病室へと足を向けた 機械と点滴に繋がれ 漂白されたシーツの上で 貴方は唯々呻くばかり 混濁した意識の貴方の 弱々しい右手を 握る事しか出来ない私は 睡眠導入剤の投与を医師に告げ 見えない錘の付いた病室から 逃げるように出て行った 程無く貴方は永遠を掴んで 二度とそれを離さなかった 私が離した右手と真逆に

      • 幸せな人

        誰にも見つけられず 朽ちて逝く人 家族に看取られて 死んで逝く人 戦争に駆り出されて 消え逝く人 信仰に命を懸け 燃え尽きて逝く人 幸せな振りをする人は 山の様にいたけれど 幸せな人など 何処にもいなかった

        • マキリ折り

          鞘に彫った模様は 美しい誰かの祈り カムイに見限られるまで マキリは折れない 人が紡いできた 無数の感情すら 貴方は見えないと笑い 今日も毒を飲み込み 吐き出して明日へ向かう その足は同じ筈なのに 私達は分かり合えない すれ違いながら 傷つけあうばかりで 涙がこぼれそうだ

        カナリアイエロー

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        記事

          リボルバー&ガール

          美しい見た目には 棘があるのよと言って 笑う偽名の娼婦 ヤクザの下ではなく 独自の制度に守られ働く 彼女の細い腰には いつもリボルバーが ぶら下がっていた オートマチックの方が 銃弾も多いし 安心じゃないかと尋ねると 確実に当てる覚悟が決まるし ライフルも隠してるわ そう言って笑った 彼女はリボルバーガール 誰の物でもなく 自分の為だけに その淡い命を燃やす 真っ白な灰に為るまで

          リボルバー&ガール

          神の両手

          世界を創造した神は その両手を使い 土くれから人を作った やがて人は増え 神の存在を忘れて 天に届きそうな 塔を作った まるで自分達が 全てを手に入れたと 思い違えて 人の驕りを嘆き 神はその両手に雷と 竜巻を携えて 天に届きそうな 塔を破壊しつくし 人に見切りを付け 天へと去ってしまった しばれる冬の夜に

          Γ500は燃えているか

          孤独に慣れた夜の街を 気違いの様に走るΓ500 売れないパンクスが愛する あのガンマは燃えていた 時は矢を放つように 無常に駆け抜けて 売れないパンクスは二度と Γ500に火を入れない 鉄塊と化した単車は 錆びて朽ちて逝くだけ もう二度と走る事が 叶わないのなら せめて跡形もなく 消し去ってくれないか 夢の残骸など 余りにも空しすぎるから

          Γ500は燃えているか

          灼けた太陽

          煤けた背中を晒す男 夜の海を眺め泣く女 赤過ぎるサイレンが 二人を追い詰めても 彼らは変わる事なく 破滅へと歩んでいった

          エバの背骨

          アダムの肋骨が 掌から零れ落ち エバの背骨と 混ざりきらなかった 不完全な形で 生まれた命は やがて大罪を 犯すのだろう 12枚の羽根を 拡げたまま この世の終わりを 目指しながら 雷に包まれた ケダモノに跨って

          ハズビンズ・モーテル

          甘い夜空に 浮かぶ赤い月が ハズビンズ・モーテルを 包み込んだなら 悪魔達は歌い出す 十字路のブルーズを 失くした魂達を スポットライトにして ルシールの弾くギターが 震え出したなら 天使達が降臨するだろう ハズビンズ・モーテルへ 特別なカクテル キーモンヴェルガを 注文する為にだけに ハズビンズ・モーテルは 決して客を選ばない 定められた掟を守れば どんな者だろうが 平等に扱い一時の夢を貸し出す 客がチェックアウトするまで

          ハズビンズ・モーテル

          不良少年の死

          多人数の 喧嘩の時は 躊躇なく 短鞭を振るう 不良少年 Z750FXを 手足の様に扱い 公道はまさに 彼だけの ステージだった ロックンロールに合わせ ステップを踏めば 朝が迎えに 来てくれる その筈だった 些細な事故で 不良少年は死んだ その體は もう二度と 単車を瞬かせず 季節外れの 雪によく似た 灰へと変わった

          不良少年の死

          消えて逝く

          秘密を隠せない男 何かに感づいた女 言葉には出来ない 感情を願い抱いて 暗い海へ消えて逝く

          秘密のダンスホール

          深夜に開く 秘密のダンスホール ロカビリーに合わせ 皆が踊り続ける 本当の事は 見えやしないけど パレードグロスで 仕上げたブーツが ミラーボールの光で 輝いたなら 愛しき人よ共に踊ろう 手を取り合って

          秘密のダンスホール

          サルベージ

          恋をしていた 吹けば飛ぶよな 恋をしていた 私の為だけに 恋をしていた 遊びですらない 恋をしていた サルベージ出来ない 恋は唐突に 終わりを告げた 何のドラマも無く

          燃える蝶

          審判の日を終え 再生する世界の中 鳴り響く美しい 津軽三味線と 燃える紙の蝶が ゆらりゆらりと現れ そっと消えた 傷痕を癒すように

          白い朝

          ラム酒を 飲み過ぎた夜は 白い朝が ちらつきながら 私を迎えに来る それは遠い 過去の様に 曖昧で 何時も思い出ずに 私は独り 白い朝の扉を開ける どんなに 寂しかろうとも