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第1回 IT業界にプロジェクトマネージャが少ないのは何故か?

こんにちは!
株式会社クリエイションラボの平澤です。

私の会社はマネジメント業を主体に事業を展開しておりますが、
よくクライアントやエージェントと商談をする際に、
「案件やプロジェクトを仕切れる人がいないんだよね」
「PMを募集しても人材が現れてくれません。よい人いませんか?」
といったお悩みやご相談を受けることがあります。

私はそのお悩みに対して、結論「IT業界の構造的な問題です」とお答えしております。

まさにそれが真実であり、歯痒い思いを抱えながらそう回答するしかございません。
勿論、この本質的な問題は会社員時代に認識しており、小さなことから業界を変えていこうと志して、独立した経緯もございます。

ここではIT業界においてなぜ「プロジェクトマネージャが少ないのか?」について、あらためて説明させて頂きたいと存じます。

・IT業界の分業構造
IT業界にプロジェクト全体を俯瞰的に理解し、各ステークホルダーと円滑なコミュニケーションを取り、物事をスムーズに進められる、いわゆる「マネジメント人材」は多く存在しておりません。残念ながらそこには、業界の構造的な問題が影響しています。

皆さまご存知の通り、IT業界は以下のスキームで進められる案件が多いと思います。

・クライアント(発注元)
 →1次請(大手SIer・コンサルファーム)
 →2次請(大手SIerのグループ会社・独立系SIer)
 →3次請以降(再委託ベンダ)

よく建設業界とIT業界は似ていると言われますが、こうした多重請負の構造は日本独特のものといってよいでしょう。

「これでうまく進んでいるケースも多いし、問題ないのでは?」という意見もあると思います。私も目的を果たす(システムをリリースする、サービスをローンチする)ことだけを目的とするのであれば、とても合理的な方法だと考えます。

しかしこの多重請負の構造こそが、経験豊富なプロジェクトマネージャを生み出しにくい状況を作りあげてしまっているのです。

・分業の長所、短所
業務上の役割を分けることは悪いことではなく、目的を果たすことを考えた場合は非常に合理的な方法と言えるでしょう。この通り役割別に分業することの長所とは、「注文された物を作り上げ、世に出す」ことを目的とする場合にかなりの効率性が認められることです。

その反対に短所としては、人材が役割に応じて固定される方式であるため、身につけられるスキル・経験がその範囲に限られるというものがございます。

・マネジメント人材が多く育たない要因
その短所を補足説明させて頂きますと、業界の構造として明確に分業化されてしまっているために、その人材が習得できるスキルや経験は、役割下に置かれているその範囲「のみ」に制限されてしまうのです。

さらに問題はそれにとどまりません。

大中規模以上のプロジェクトに関わった方ならご存知かと思いますが、プロジェクト体制の要員割合は概ねマネジメント層1〜3割、その他大勢といった形になります。この通り裾野がやたらと広く、上層につれて狭くなる(形にするとこの様な形 → 人)体制が主流です。

ここでとどまらない大きな問題に繋がります。プロジェクトの体制上2次請・3次請領域に関わる人材が多数派なのですが、この多くの人材がマネジメントの根幹に関わることで、「プロジェクトマネジメント」学の研鑽を積む機会に恵まれないことになります。

その結果として「プロジェクトマネジメント」に深く携わり、その知見をフィードバックできる人材も育たないために、2次請・3次請領域を担う会社にマネジメント人材が増えない要因となってしまっているのです。

よくIT業界は人材を使い捨てると揶揄され、世間から叩かれたりすることもございます。ただこうした根本による、構造問題も絡んでいることもご理解いただけると幸いです。

※尚、補足としてマネジメントの根幹に携わる大手SIerやコンサルファームの人材は、PMの経験を積める機会「には」恵まれることになります。ただし、「には」とあえて表現させて頂いたのは、ここでも問題が存在していたりするからです。

今回はまず2次請・3次請の領域にフォーカスした記事としておりますので、またの機会にご説明させて頂きます。

・まとめ
いかがでしたでしょうか?
これまで朧げに認識はしていたものの、あらためて読むと納得いく部分もあったのではないでしょうか。

ちなみにこの記事では『分業化は悪!』『マネジメント人材を育てない会社はダメ!』という良し悪しを述べたいのではなく、「マネジメント人材が少ない本質的な要因は?」について、1つの構造の問題として捉えているに過ぎないことをご認識ください。

以上となりますが、次回は『上流領域と下流領域間のとてつもない壁』について綴っていきたいと思います。

皆さまお忙しいなか、お読み頂きありがとうございました。

■自己紹介
株式会社クリエイションラボ
代表取締役  平澤 富輝

エンジニア歴28年(マネジメント歴20年)
インフラのエンジニアとしてキャリアをスタート。内資外資、業界業種問わず多くのお客様先でプリセールスやフロントSE、プロジェクトリーダーからプロジェクトマネージャを歴任し、大中小百以上の案件やプロジェクトに携わる。

会社員時代は最終的に30名を束ねるグループリーダーも担い、その長い経験の中でマネジメント人材育成の重要性を感じ取り、裾野拡大を志して独立する。
「エンジニアとは才能ではなく、学ぶ姿勢と少しのセンス」が持論。


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