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映画配給会社の仕事⑤~古ぼけた写真が見違えるほど美しく変身?

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買い付け、ブッキングが終わったら次は権利料の支払い、そしてようやく上映用、宣伝用の素材を入手することができます。この宣伝用の素材が大変重要で、いいビジュアルが作れるかどうかはこれにかかっているのです。
素材調達では他のどの作品よりも紆余曲折があったのは「山猫」でした。
1963年製作のリマスター版『山猫』を公開するにあたり、いままでの古風なイメージからぐっと新しくしたいと考えていましたが、なんと宣伝用写真がないに等しかったのです。
メジャースタジオの旧作、それもフランスとイタリアの合作映映画であり、素材が散逸していました。契約した会社から渡されたものは古びたスチール写真数点、真っ青になりました。どんなに頑張ってもこの写真では古色蒼然としたポスターしか作れない。
どうしよう。。。万事休す。そこで、イタリア映画界に太いパイプを持つエージェントに事情を説明し、なんとか写真をさがしてほしいと頼み込んだのです。

山猫 53

捜索には時間がかかり、やきもきしましたが、そのエージェントの人脈でチネチッタに保存されていた素晴らしい写真の数々を入手することができたのです!(ネチッタとはイタリア映画の黄金期を彩るフェリーニやヴィスコンティなど多くの映画が生まれた映画撮影所のことです。)
古ぼけたアラン・ドロンもくすんだクラウディア・カルディナーレも垢を落としたかのような見事な美しさを放つ写真の数々。ホントにため息が出る美しさでした。眼光鋭いヴィスコンティの写真まで。「しっかりやれよ」と睨まれている心持でした。

山猫3 - VISCONTI

さらにはそのエージェントはいろいろ動いてくれたにも関わらず報酬も必要ないと!嘘のようなホントの話で、いまでも感謝の気持ちでいっぱいです。
こうして、『山猫』の目も覚めるような美しいポスター、チラシが出来上がったのです。

山猫チラシ

美しいと言えば、オリヴィエ・アサイヤス監督の『夏時間の庭』のティーザーチラシも好評でした。ティーザーチラシとは、ポスタービジュアルができる前に、イメージ優先で作るチラシ(上の写真左側)です。『夏時間の庭』はタイトル通り、庭が影の主役とも言える作品でしたので、ビジュアルのイメージが最初からあり、まずどんな庭の写真が提供されるのか権利元に確認のうえ契約しました。学習しましたね。

庭写真

『山猫』は新宿タイムズスクエア、『夏時間の庭』は銀座テアトルでの封切りでした。どちらの映画館も今はありませんが、ともに弊社の大ヒット作となりました。
次回は日本語字幕版の仕事についてのお話です。


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