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映画配給会社の仕事⑨〜マスコミ試写会の裏で繰り広げられる宣伝合戦とは?

連載<映画配給会社の仕事> ⇒前回の記事はこちら⑧心強いクリエイティブの面々

昨日、夢にうなされて自分の叫び声で飛び起きた宣伝スタッフKです、こんにちは!(元気)

さてさて、頼もしき仕事人の方々と共にビジュアルや予告編も完成!(ヘッダー写真は仕事人たちの素晴らしきビジュアルたちです)  次に取り掛かるのはマスコミに向けての“宣伝”活動。ということで今回は私が担当します。

いわゆる映画誌などの専門誌だけでなく、女性ファッション誌などにもカルチャーページがありますし、雑誌に限らず、テレビ・ラジオ・ネットなどなど、いろんなところで新作映画紹介を目にしますよね。
こうした映画紹介枠をできるだけ多く獲得するべく、日々涙ぐましい努力をしているのが私たち宣伝マンで、その活動をパブリシティと呼びます。

毎週ものすごい数の映画が公開されていて(2019年の年間映画公開本数はなんと1278本!!)、それぞれに映画宣伝マンがいる。そのみんなで限りある映画紹介枠をかけて宣伝合戦を繰り広げるわけですから、バチェラーどころの話じゃありません。

ではどうやってその枠を獲得するのか? それにはまず映画評論家の方や、映画ライターさん、各メディアの映画担当者に新作映画をご案内し、マスコミ試写会で観てもらわなければなりません。考えに考え抜いた映画の見所と「来てくださいね」という念を込めたご招待状を発送するのですが、ここでどこまで興味を引けるかが最初の勝負です。観る方も年間1000を超える試写状が届くわけですから。とある映画評論家の方は、届いた時点で「A B C」ランクで振り分けるそうです!

次なる一手は、電話・メール・お手紙などによる呼び込み合戦。「この映画は男性読者にぴったりですよ」と言っていた舌の根も乾かぬうちに「これは女性映画の真骨頂です!」と言ってみたり、相手によって戦術を変え、いかにこの映画が観るべき1本かをアピールするんです。もちろん相手もプロですから小手先の宣伝文句で簡単には騙されません。

最終兵器は「なんでもいいからとにかく観に来てくださいよ~」の泣き落とし。意外とこれが効いたりして、CランクからAに格上げ!なんてことも(笑)

ピエタ プレス&試写状

マスコミ試写会で思い出深いのは、『嘆きのピエタ』です。『魚と寝る女』『サマリア』『うつせみ』など数々の衝撃作を送り出してきた韓国の奇才キム・ギドクの最高傑作と評される本作。その前代未聞の“愛”の結末に世界が言葉を失ったという宣伝文句は大げさではなく、マスコミ試写でも上映後にしばらく席が立てなかったというライターさんや、絶句したまま帰られる来場者が続出しました。あの、“言葉にならない熱気”は今でも忘れられません。その熱気は様々なメディアでのご紹介につながっていきました。

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宣伝の仕事はこうしたマスコミ試写やパブリシティ以外にもてんこ盛りです。映画の仕事って、華やかな世界に思われがちですが、その実態は「地道に、実直に、地味な作業を」の3G。

例えば、作品イメージに合った著名人に応援コメントを依頼したり、想定するターゲットが集まりそうなお店やイベントにタイアップ企画を持ち込んだりしますが、これ、両方とも本当に大変なんですよ。タイアップ持ち込みなんて電話口で門前払いくらうのも日常茶飯事。電話を切った後、「二度と行くもんかっ!」と毒づいたことは数知れずです(笑)中でも最も地味な作業といえば…チラシ配りでしょうか。

カフェ、書店、レコードショップや語学学校などに、飛び込み営業よろしく「チラシ置いてくれませんか?」と出向くんです。もうね、肩ちぎれるんじゃないかってくらいの量のチラシを担いで渋谷の街をさまよい続けたこともあります(遠い目)

チラシ配りは草の根活動の最たるものですが、でもこれこそ宣伝の基本のき。宣伝コンセプトを練り上げ、それを基にデザイナーさんたちと心血注いでビジュアルを作り、あーでもないこーでもないと話し合いを重ねた映画の見所を詰め込んだチラシの重みを感じながら、それを「届ける」という行為こそ、“宣伝”ということなんだろうなと思います。

さてさて気になる次回のお題は…? いよいよシリーズ最終回!?お楽しみに!!


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