見出し画像

〈後編〉【累計260タイトル超制作】好きを仕事に得意なことを活かす、電子書籍に特化した「漫画LABO」の魅力とは

設立から4年目、ついに大ヒットを飛ばした『漫画LABO』。
前編からつづいて、いよいよその制作の特長と売れる作品を生み出す秘密にせまります。

特長の分業制と働き方とは

今でこそ多くなり始めていますが、設立当初から「漫画LABO」は漫画家の働き方と作業に注力していて、分業制(旧来のように一人で最後まで担当する場合もあります)をとっています。分業制を理解するために、漫画制作工程について説明します。初めに原作の有無ででちょっと変わりますが、漫画制作の工程には次のような流れがあります。

(1) ストーリー、キャラクター、舞台設定
  (原作小説などがある場合その肉付け)

  主人公やサブキャラの性格や容姿などのディティール調整、参考画像・
  資料集め、参考時代背景、小物や服装、身長差、よく使う舞台の間取り
  などを決める
(2)文字ネーム
  誰が何をどんなセリフを言うのかなどを踏まえ、1話内に構成される要
  素をまとめる
(3)キャラクターラフ
  主人公やサブキャラのディティール調整、建物、参考時代背景、小物や
  服装、身長差などを決める
(4)画ネーム(絵コンテ)
  文字ネームを基に、コマ割り、構図、セリフ、キャラクターの配置など
  を大まかに設定したものを作成する
(5)下書き(下絵)
  本番前の下書き線を入れて細かな点を確認・調整する
(6)線画(ペン入れ)
  本番の実線を入れる。小物などの2D・3Dも入れる
(7)仕上げ
  建物や背景などのほか、髪や洋服などのベタやトーン※、効果や影など
  の細かな部分を仕上げる
(8)写植
  セリフやモノローグ※など、フォントや文字サイズを指定して、すべて
  のコマに反映する

※文字ネーム:プロット(設計や構想)のようなもの。
※画ネーム:漫画を描く基になるコマ割りやセリフ、キャラクターの配置を
      表したもの。絵コンテ。
※ベタ:指定された範囲を黒く塗りつぶすこと。
※トーン:「スクリーントーン」という画材のこと。 細かな点が集まった     
      アミやキラキラなど色々な模様がある。
※モノローグ:声に出さない心情や考えを述べるセリフのこと。

この(1)~(7)までを多くの場合は漫画家が一人で行います。文章もキャラクターづくりも、画を描くことも、細かな作業もすべてが得意という人はほとんどいません。苦手だったり不得意なことも時間をかけて一人で黙々と仕事をしていたら心と体に良くないですよね。

そこで「漫画LABO」はそれぞれの得意な人に仕事を任せる「分業」というスタイルをとっています。

「漫画LABO」での制作のワンシーン

谷口さん:「話の企画を考えるのが得意な人はプロットを、漫画を描くことは難しいけどキャラクターイラストは得意、もしくは画を描くのが好きな人は画を、着彩が好きな人は着彩をというように、好きや得意なことを担当して、ずっと漫画作りを続けられるようにしています。夜はしっかりと眠る時間がとれるようにライフスタイルに合わせたスケジュールを組んでいます」

「対価については、それぞれの業務に関わった分の原稿料や電子書籍印税をお支払いしています。この仕事だけで生活することは望んでいないけど、副業程度で少し稼ぐとか、毎月お小遣い分だけ稼ぐという働き方をしたい方はたくさんいらっしゃるんです。そんな方たちと一緒に作品作りを行ってヒット作を生み出していく醍醐味もあります」

売れる作品を生み出す秘密とは

漫画家を大切にしている「漫画LABO」は、働く環境の整備だけでなく、手がけた作品をより多くの人に届けて売り上げをしっかり作ることを意識しています。電子書籍で売り上げをしっかり作らなければ、作家の皆さんへ還元する印税は増えません。たくさんの人に読まれる作品を数多く生み出していくことが求められる中、いったいどのように作品作りをしているのでしょうか。

漫画LABO

谷口さん:「一番大事なのは、原作者や漫画家といった作家の皆さんをリスペクトして作品作りに向き合うことです。例えばノベル原作のものをコミカライズさせていただくとき、原作をしっかり読み込んで、大事にしたいところを押さえ、かつ漫画化したときにもっと面白くなるように仕上げるということを意識しています。そのため、原作者にすべてをお任せしていただいています。私たちなら原作の面白さを押さえ、読者が求めているニーズを加味してより面白くて売れる作品へ仕上げることができると、丁寧にしっかりと伝えます」

「最初の頃の作品は、『漫画LABO』メンバーの企画や作家の独自性を大切にしていたのですが、残念ながらそのままでは電子書籍市場ではヒットしない場合がほとんどです。電子コミックは紙の書籍といろいろ異なっているので、電子書店の読者ニーズを意識して、丁寧にワンシーンを見せたり、イベントを付け加えたりと、物語に私たちならではのアイデアやエッセンスを加えて、さらにいい作品にしていくことを心がけています。その結果、現在では以前に比べて販売額が格段に上がり、お支払いする印税も増えているので作家の皆さんにも喜んでいただけるようになりました」

「ですから、売れる作品にしていくために、書店のチェックは毎日しますし、販売を伸ばせそうな新しい施策を企画・実施することはもちろん、日々、新しい作品や作家のリサーチをしたり、面白いと評判の作品は必ずチェックして週末にまとめて読んでいます」

今後も仲間を増やしていく

これからのことや、目標について聞いてみました。

谷口さん:「3人で立ち上げた『漫画LABO』は、14人体制にまで大きくなりました。海外からも面白いWEBTOONがたくさん入ってきていますが、まだまだ日本の漫画を作る手法、見せるテクニックはとてもすごいと思っています。ですので、両者の良いところを取り入れて業界が活性化するようなお手伝いや、私たちと関わる作家(漫画化・ラノベ作家・構成者・編集者など)の人たちや出版社をどんどん増やして、みんなで幸せになっていきたいと考えています」

「『漫画LABO』は自社開発の漫画もライトノベルも制作しています。今、ライトノベルの編集者と女性もののコミック編集者、そして韓国語の小説をリライトするライターなどを採用中です。推し活の話題を含めて、みんなが好きなことを好きと言える楽しい職場で一緒に仕事をしたいという人がいたらぜひ『漫画LABO』まで連絡してください」

「私の目標は、国内外で『漫画LABO』に関わるクリエイターを増やし、一緒に仕事をする輪を広げて、日本発のコンテンツが紙書籍でも電子書籍でも後世にしっかりと残るようにすることです」

漫画家が、作家が、編集者が、ライターが、出版業界が良くなるようにと純粋に思い、ロマンとソロバンをしっかり考えながら進む谷口さんに、一点の曇りもない空が広がっている気がしました。■CR

取材後、すがすがしい青空を見た気分になりました

前編の記事はこちら

【CREEK & RIVER 公式note編集部 TK】

漫画LABOはこちら



この記事が参加している募集

仕事について話そう