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歯車のイタミ 2

<1からのつづき>

その店長が言うには。

彼女の人件費は、精肉課では、
カウントされていないから、
なんとか使ってくれないか、
というのだ。

店全体の人件費、
という扱いになってるらしい。

チーフの仕事として、
売り上げや利益の確保もそうだが、
限られた人手で、
売り場を回さなければならない。

売り上げに対して、
必要な業務量が計算されていて、
それに見合う労力分だけが、
与えられている。

その労力を、社員、パート、
アルバイトで割り振る。

必要な労働力は、
無尽蔵にもらえる訳では無い。

例えば。

バックルームの、
毎日の終わりの掃除が、
2人で2時間かかる、とする。

アルバイト2人で2時間割り当てるか、
1人なら4時間を割り当てるか。
そういった計算をした上で、
仕事を割り振っている。

業務がこなれてきて、
成長すると、早くできるようになる。

2時間かかってた掃除が、
1.5時間で出来るようになれば、
その分、労働力が増えることになる。

いままで、できなかったことが
できるようになる。

たとえば、他に明日の仕込みを
してもらったりできるようになる。
それは、売上に直結する。

人の成長は、売上に直結する。

だから、チーフは、
パートさんやアルバイトさんには、
時に厳しく指導する。
早く、上手くなって欲しいからだ。

それは、今まで出来なかったことが
出来るようなったり、
出せなかった商品が出せるようなる
ことに繋がる。

売り上げに直結するのだ。

栗田が、えみちゃんの仕事振りを
シビアに見ざるを得ないのは、
そんな理由がある。

1人でも、想定されている能力より
低ければ、その分、
他の人がカバーしなければならない。

しかも、成長どころか、
いつまでも進歩せず、
労働力としてはマイナス、
のようなものは困る。

しかし。

それが、人件費として
カウントされていないなら、
話は違う。

労力としてはゼロと考えて、
少しでもプラスになるなら、
まぁいいか、とも思えた。

そういうことなら、
なんとか出来る範囲で、
頑張っていきましょう。

栗田と店長で話はついた。

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