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コンセプトワークとストーリーボードのプロセスを紹介します[14] 動画生成AIで自主映画制作は可能か? - Blog 2024/03/05

「動画生成AIで自主映画制作は可能か?」シリーズの第13回目です。


映画制作プロジェクトの概要(2024年1月に更新):

  • 生成AIが今後クリエイティブ業界に与える影響を検証する目的で実施

  • 最長2分20秒のビデオプロトタイプを制作する

  • ストーリー構築からビジュアルデザイン、映像制作(音楽を含む)まで全てのプロセスで生成AIを活用する

  • 生成AIを最大限に活用して「1人」で制作する

  • 生成AIポリシーを遵守する


画像生成・動画生成ポリシー(2023年12月に更新/題目変更:2024年3月):

  1. プロンプトに作家名や作品タイトルを入れない(映画監督の名前や映画タイトル、登場人物、俳優の名前等も同様)

  2. プロンプトに著名人の名前やブランド名などを入れない

  3. 他人の著作物を Describeしない

  4. 特定の歴史的、文化的に重要な作品に対する敬意を表し、その再現を控える(著作権の問題でなく作品がもつ文化的価値や影響を尊重するため)

  5. Nijiモデルの生成画像は自分の作品として公開しない

  6. 生成した画像は作品の素材として利用する

  7. 公開する場合はAIで生成したことを表記する




コンセプトワークとストーリーボードのプロセスを紹介します

昨年の12月28日から作り始めた「Another Tokyo - GenAI Parallel universe」シリーズ、21本目のビデオを投稿しました。
以下、直近のvol.19 アップスケール版と vol.20~21 を掲載します。
今回は、vol.21のコンセプトワークをご紹介します。

Another Tokyo - GenAI Parallel universe

「Another Tokyo」は、自分の記憶の断片や睡眠時の夢などを、生成AIによって映像化する試みです。

  • 企画: ChatGPT-4 / Copilot Pro / Gemini Advanced / Adobe Express

  • 画像生成:Midjourney V6 (alpha)

  • ビデオ生成:Runway Gen-2

  • 音楽生成:Suno AI

  • ビデオ編集:After Effects / 画像処理:Photoshop

  • データ管理:Adobe Bridge


19本目:

心は遥か彼方 Upscale version

1960年代の日本の高度成長期を背景にした人間ドラマ。大企業を率いる若き女性経営者と、彼女を取り巻く個性豊かなサブキャラクターたちの活気ある日常と、時には葛藤する心情を描く。

  • vol.19 再生時間:51秒

200% アップスケール版 (BCC+ UpRes ML)

※生成AI活用において「歴史の再現はしない」というポリシーを遵守するため、あくまで「日本の昭和時代をモチーフにした架空の世界観」を表現しています。


20本目:

時空を超えた絆

1970年代の日本とそれと平行する別の世界、二つの異なる日本を舞台に展開される物語。この二つの世界にはそれぞれ、美月という同名の女性がおり、互いの存在を知らずに生活している。しかし、彼女たちの選択と行動は、予想もしない方法で互いの運命に深く影響を及ぼしている。

  • vol.20 再生時間:48秒


21本目:

「Another Tokyo - GenAI Parallel universe」シリーズ、21本目はバンパイアの青年の苦悩を描いた儚いストーリー。

Crimson Awakening

エリアスは孤独と不死の苦悩に苛まれるバンパイアの青年。彼は偶然出会った18歳の人間の女の子リリーとの間に予期せぬ深い絆を感じ始める。バンパイアと人間の激しい戦闘が続く中、エリアスはリリーを守るため、そして彼らの愛を守るために、自らの仲間との絆を裏切る決断を迫られる。

  • vol.21 再生時間:25秒


それでは、vol.21 の「Crimson Awakening」を例にして、ストーリーボード作成やコンセプトイメージのプロセスを紹介していきます。

ストーリーボード

昨年は、作成したストーリーボードをプリンターで印刷し、ルームの壁に貼っていましたが、現在はデジタル・ストーリーボードに切り替えています。全てのシーンを一覧したかったので、印刷していましたがアセット管理ツールの「Adobe Bridge」で概ね代替できることが確認できたので、デジタルに移行しました。

Adobe Bridgeの特長:

  • サムネールと強力なプレビュー機能で、あらゆるアセットを視覚化

  • ラベル、評価、メタデータ、キーワードでアセットを整理

  • 高度なフィルター、コレクション、検索機能を使い、目的のアセットを素早く特定

ストーリーボードはAdobe Expressで作成しますが、生成される画像が膨大な数なので、仮組をAdobe Bridgeのライトテーブル・ワークスペースで作成しておきます。
ワークスペースをライトテーブルに切り替えると、サムネイルをドラッグして順序を変更でき、サムネイルのサイズもスライダーバーで自由に変更することが可能です。一覧性を確保しながら作業を進めることができますので、効率的です。

  • ストーリーボード作成:Adobe Express

  • ストーリーボードの仮組:Adobe Bridgeのライトテーブル・ワークスペース

Adobe Bridgeのライトテーブルでストーリーボードの仮組

動くストーリーボード

生成したビデオも大量なので、Adobe Bridgeでグルーピングしながらシーンごとにまとめていきます。動画コンテに近い役割を担うプロセスです。

Adobe Bridgeによる生成画像および生成ビデオのチェック

Adobe Bridgeは、複数選択した生成ビデオを並べて表示できるため、比較検証を効率よく進めることができます。
以下は、6つのサムネイルを選択しているので、右側に6つの生成ビデオが同時表示されています。ビデオは再生しながら比較したいので、この仕様は大変役立ちます。

複数の生成ビデオの同時表示が可能

※動画生成AIによる映像表現は「1人で制作すること」を条件としたプロジェクトなので、Adobe Bridgeを使用していますが、チーム作業の場合はクラウドベースのアセット管理が適しています。
今後、もしAdobe BridgeがFrame.ioに対応すればチームでも利用可能。


コンセプトイメージ

ストーリーボード作成後、もしくは同時並行でコンセプトイメージを作成します。生成画像を使って、Photoshopでさまざまなビジュアルイメージを作成していきます。
画像生成AIは、意図したイメージを生成するのが難しいので、難易度の高い表現はPhotoshopによる画像処理で対応します。コンセプトイメージのクオリティは妥協しません。このプロセスで映像表現の骨格が決まるからです。作品の「絵づくり」には徹底したコンセプトワークが必要になりますので、Photoshopはイマジネーションを熟成させる重要なツールになっています。

  • コンセプトイメージ作成:Photoshop

Photoshopによるコンセプトイメージ

Midjourney V6 (alpha) のプロンプト:

sad sad sad. full body view, side view profile photography, He has beautiful red eyes, Super cool 18 year old Russian fashion model, He has long hair and wears a white leather jacket, film still --no freckles --ar 3:4 --s 250 --style raw --v 6.0

Midjourney V6 (alpha) による生成画像

Red, film still, Colorful paints flow like rivers --ar 16:9 --style raw

Midjourney V6 (alpha) による生成画像

複数の生成画像のコラージュは、Photoshopの生成AI機能(生成塗りつぶし)をフル活用します。
完成度の高い「作品づくり」が目的ではなく、あくまでストーリー考案のためのプロセスなので、大量のコンセプトイメージを生み出すことを重視します。質より量です。

コンセプトイメージ制作ではPhotoshopの生成AIを最大限に活用
Midjourney V6 (alpha) による生成画像
Photoshopコンセプトワーク
Photoshopで生成画像を組み合わせながらコンセプトイメージを拡張していく
Photoshopコンセプトワーク

PhotoshopとAfter Effectsはとても相性が良く、レイヤー構造も共有可能なので、コンセプトイメージのデータを映像化に役立てる場合もあります。

After Effectsによる生成ビデオの修正および編集作業

コンセプトワークは、頭の中にある漠然としたアイデアを視覚化する役割を果たします。映像制作の初期段階で創造的なアイデアを探求する重要なプロセスです。
生成AIがストーリーのある映像を丸ごと生成するわけではないので、伝統的な映像制作のワークフローを継承することになります。

1人で映画を制作できるか?

このプロジェクトで実証できれば、生成AI活用のケーススタディとして「新しい映像制作」の1つのスタイルとして提案できるかもしれません。


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更新日:2024年3月5日(火)/公開日:2024年3月5日(火)

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