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【読書感想】文庫旅館で待つ本は

今日はどっぷり本の世界へ📖
絵本の合間に読む、気になった本の感想を書きます。



まずは一言

Instagramでフォローしている方のオススメ。
3月にした図書館の予約がやっと回って来ました(≧∀≦)


今日の本

『文庫旅館で待つ本は』
著者: 名取佐和子
発行: 筑摩書房(2023年)


感想

私の好きなタイプの本だ♪と気楽に読み始めたのはいいけれど、最後の「五冊目」は、今までの伏線回収に入り読みたい衝動が抑えられず久々に夜更かししてしまいました。(連休だからいいのだ)

「一冊目」「二冊目」…と、1章につき1冊の本にまつわる5つのお話でこの本は構成されています。

タイトルにある文庫旅館とは、主人公の若女将・まどかの曾祖父である清が、常連客から寄贈された戦前くらいまでのたくさんの古書を収めた書庫を併設した宿屋・凧屋旅館。
宿泊客は自由に閲覧できるので、年代物の書籍を目当てに宿泊するお客がいる一方、5冊の本はどれもそれほど興味がないお連れ様にあてられます。


出てくる5冊は、川端康成、横光利一、芥川龍之介、志賀直哉、夏目漱石と名だたる文豪が書いた小説ですが、殆ど私が読んだことのない本でした笑
(本好きといえないなぁ、お恥ずかしい笑)

それでも。
本アレルギーで古書を開く事が出来ない若女将・まどかが臭覚によって選書した本を、あらすじや感想をお客様から聞くという体でお話は進むので、私も一緒にその本の大体の内容を知る事が出来ました。
(作者の名取さん上手い!そして有難う*^^*)


1話1話がハートウォーミングなお話かと思いきや、身近にある色んな題材を扱っていて心にウエイトが置かれます。
でも、本の読めないまどかに話すことによってそれぞれの人が気づきを得て、旅館から出る頃にはそれぞれの方が新しい人生を生きようとするお話で爽快感がありました。


若女将・まどかは、鼻が利きます。
円の選書は、なぜだか悩みを抱えたお客様をにおいで感知し、そのにおいを元にその方に合う本を見つけるというもの。

でも自分はにおいがきつくて本を長く読めないからと…

「わたしがコーヒーと甘いものを提供する代わりに、お客様から本のお話を聞かせてもらいたくてひらくお茶会だったりします。」

『文庫旅館で待つ本は』一冊目より


最後の五冊目は、まどか自身がアレルギーが出ずに読めた夏目漱石の『こころ』。それは円が読むべき、そして今は認知症で聞こえているかどうか分からない円の祖母やそこに居た人達にも読んで聞かせるための本でした。

色んな想いが絡み合って出来た因縁。
まだ元気な頃に、円の祖母で大女将の三千子が言った言葉。

作り話のなかにときどき覗く”本当”を探してるの。

『文庫旅館で待つ本は』三冊目より


後から思うとすべての、本を読む事になっていた人や出来事は、この因縁にどこか繋がってる。
認知症の三千子が理解出来たかどうかは定かではないですが、長い時を経て真実を紐解くためにこのタイミングですべて揃ってその時を迎えたのかと思うと、感慨深いものがありました。

おもしろくて素敵な小説でした。






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