ただひとり、穴があいたまま立ち続ける
気づいてくれたのは風だけ
バランスがおかしくても立ち続けている
教えてくれるのは風だけ

愛するものを失って
はじめて穴があいたひとがいる
もとから穴があいているわたしは
嘆くひとを見つめる

かなしみの涙があふれる穴は
わたしと違って
愛を疑うことはない

風を通し続けるうちに
かたちがおかしくなったのだろうか
新しい穴と同じかたちのかけらで
わたしの穴は塞がるのだろうか

わたしは穴を埋めたいのだろうか
愛のかたちをわかるのだろうか

かつてここに
愛があったのだろうか

ずっとかたびっこで生きてきた
奪われたのか、もともとないのか

嘆いていいのだろうか
嘆きに耐えられるだろうか

かつてこの穴も
涙があふれていたのだろうか 

愛や涙に満たされた穴とは違い
かなしみはとどまらず
風が吹き抜ける

ほんとうはこわいのだ

乾かし続けないと
全身が腐ってしまいそうで
風よ吹けもっと吹けと
いつも叫んでいるのだ

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