マガジンのカバー画像

随想 ーー心を澄ますーー

35
心の奥底に潜む声を掬い上げるエッセイ・詩など
運営しているクリエイター

#散文詩

「弔うために生きよ」

 文庫本を閉じる前と同じ教室  聖パウロは今日も回心している  マスールのベールと同じ空…

100
coyoly
3年前
3

地殻変動

 罪悪感をずっと押し付けられてきた  普通ではない私がいけないのだと  社会に馴染めない…

100
coyoly
3年前
3

Vanishing Point

 ポケットの中にあるはずの世界が消えた  手のひらに収まる世界が  目の前には一つの世界し…

100
coyoly
4年前
1

Human Being −魔法使いの弟子−

 ラジカセを持ち入ってくる修道女  静まる教室  「考えなくていいから聞きなさい」  『星…

100
coyoly
3年前
3

タイムスリップ

音の向こうに 二十歳の娘がいた 玉音放送を耳にし 何を言ってるのか 何が起こったのか …

100
coyoly
5年前

幸福

ハッピーエンドを押し付けないで わたしから目を逸らさないで あなたが耳を塞ぐ痛々しさ それ…

100
coyoly
5年前
1

あはれ私は娼婦

終わるまでの時間をやり過ごしていた 何も感じることはなかった 「気持ちええやろ」「感じてるんやろ」 和姦に持ち込もうとする声も息遣いも すべてがどうでもよかった そのとき私は声が出なかった 声が出ない私への罰なんだと 不思議な理屈をぶつけられた すべてがどうでもよかった やり過ごし方だけは手慣れていた こんなことは何度目だろう そのまま人魚姫のように消えたかった こんな世界に付き合いきれない 涙を流れに委ねた なのにローレライは私を選ばず 消えることすら赦されず

有料
100

美しき天然

土を掘り起こし蛹を潰す 毒霧を撒き虫けらを窒息させる やってくる鳥を睨み猫を追い払う 魚の…

100
coyoly
5年前
1

微睡みの彷徨

冥府で蹲っていると 突然手を差し出された 暗闇に現れた光 再生への密儀 触れた瞬間 温も…

100
coyoly
5年前
1

浄夜

汚辱に塗れた肉体を 彼は撫で浄める 特に念入りに 胸を 穢され続けた 胸を たとえその…

100
coyoly
5年前
1

Different phase/12歳、1月13日の金曜日

小学校6年生の冬休み最終週 朝起きるとシーツが赤黒く汚れていた がに股で階段を降りると 動…

100
coyoly
5年前
1

うらみ

従兄が私の胸を揉みしだく 教師が私の全身を撫でまわす 小学生のわたしは声を出せなかった 父…

100
coyoly
5年前
6

ただひとり、穴があいたまま立ち続ける 気づいてくれたのは風だけ バランスがおかしくても立ち…

100
coyoly
5年前
2

思惟

 薄紅色の壁に囲まれた液体に浸る  わたしとあなたの境目は曖昧  そんな水がめが無数にある  囲いの向こうの水がめに  彼や彼女を感じれど  一度たりとも見たことはない  水がめから放り出されたその日  わたしは突然ひとりになる  ひとりが無数に誕生する  新しい世界に興奮するひとり  心細く泣きわめくひとり  悠然と周りを見渡すひとり  眩しさとともに  気配そのままの  彼や彼女と初対面  それぞれの個性を背負い  それぞれの名前をつけられ  ひとりひとりはこの

有料
100