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クリエイティブ業界の未来を拓く | hicard 北川怜於 × COTEN

株式会社COTENの挑戦を応援してくださる、法人COTEN CREW企業の皆様をご紹介します。
COTENを通じて人文知に投資することを決めた彼ら。
日頃、どのような問題意識を持って活動されているのでしょうか。

今回は株式会社hicard 代表取締役の北川怜於さんです。

北川怜於(きたがわ・れお)
デザイナー。1997年生まれ、慶應義塾大学卒。
学生時、デザインファーム「Basecamp」でデザイナーとしての業務経験を積む。2020年、クリエイティブスタジオ「hicard」を立ち上げる。

迷った時に出会ったCOTEN

COTENインタビュアー(以下、ーー)まずはhicardの事業を簡単に紹介していただけますか?

北川怜於さん(以下、レオさん:)hicardはいわゆるデザイン会社です。もともとは3人で始めた会社なんです。会社は2024年5月で丸4年になりました。今は、正社員や業務委託も含めて20名ぐらいです。
10年くらい前はアプリのUIを制作納品したら完了するお仕事が多かったんですけど、最近はパッケージやロゴなど世界観のコンセプトを立ち上げる部分からやって、それをWebやアプリに展開していくといった複合的なクリエイティブスキルが求められることが多くなりました。
なのでUIデザインだけじゃなく、UIデザインを軸にしてさらにクリエイティブな広告の仕事もやっています。

ーーありがとうございます。レオさんのnote記事を拝見したのですが、ユニークな組織体制を目指されているんですよね?

レオさん:はい。まだ構想段階で、まさに試行錯誤しているところですが、『各々のアイデンティティを確立させたスモールチームが「何かしら」で連動する組織を目指す』と掲げています。

ーーなぜその考えに行き着いたんですか?

レオさん:デザイン業界と言うのは分かりやすく労働集約型のビジネスなので、人を増やせば売上が上がるんですよね。
そして、特に僕たちがやっているUIやデジタルプロダクト領域は、デザイナーの数が本当に足りていないんです。さらに経営的な視点やチーム作りから関われる会社は本当に限られてくる。そういう意味ではブルーオーシャンなんですよ。
そのあたりでビジネスを拡大できるだろうという見通しは起業当時から感じていたんですけど、会社を作って丸2年くらいの頃、ここからどうなっていきたいんだろうって考えたら分からなくなってしまって。

ーーどういう時に違和感を感じますか?

レオさん:例えば、すごく優秀なデザイナーさんでも、カルチャーが違うと一緒に仕事をする想像がしにくいことや、チームに招きにくいと感じることもあって。会社としての成長を考えると、僕たちのアイデンティティに固執せずに柔軟に受け入れた方が良いとも思うんですけど、僕たちが目指している組織とは違う形になっちゃいそうだなとも感じるんですよね。
それで、どうしようってなっていたときに、COTEN RADIOさんに出会ったんです。
UIデザイナーみたいな人がなぜ少ないのか、シリコンバレー的なもの作りの文化が徐々に根付いたのかなとは思うけど、それ以前とどう違うんだろうか。そういえば世の中のことって全然知らないなとも気づきました。
例えば宗教のことは、すぐに明日の仕事に関わってはこないんですけど、とりあえずアンテナを広げていろいろなことをインプットしてたくさん勉強する1年にしようって思ったんです。
それで、COTEN RADIOさんを1年半ぐらい前から聞き始めました。ようやく先日、全て聞き終わったところです。

ーー全部聞いてくれたんですね。すごい。

レオさん:ポスト資本主義の回を見てすごく感動しました。僕たちが世の中に対して漠然と抱えている違和感とすごく近い部分を皆さんすごく勉強されて言語化されているんですよ。
僕たちはカルチャーづくりやモノづくりをしていくので、その中の一人ひとりの尖っているところはアイデンティティとして際立っている必要があります。しかし、大きな組織ではそういった個性は抑えられてしまいがちなので、むやみに人を増やすわけにもいきません。
一方で、世の中に大きな影響を与えるような大きなプロジェクト、大人数で関わるモノづくりはとても楽しいですし、やっていきたい。だけど、今の株式会社の在り方に則る形では実現は難しそうで、どうしたらいいんだろう。
COTENさんは、当たり前になりつつある資本主義の世界観を見つめなおしてあるべき姿を模索し続けていますよね。
僕たちも似たようなアプローチが必要なので、ぜひ法人COTEN CREWになりたいと思ったんです。

ーーCOTENは、資本主義っていう土台の中でちょうどいい中間地点みたいなところにいると思ってまして、それがレオさん琴線に触れた部分でしょうか。

レオさん:おっしゃる通りです。もう既に実践されている方が僕たちの人生の先輩たちにいらっしゃる感じがして、すごく共感できることが多くて、すごく勇気をもらいました。

分断されているクリエイティブ業界

ーーデザインやクリエイティブの業界で、他にレオさんが感じている課題ってありますか?

レオさん:そうですね、業界ごとの分断というのをすごく感じています。
デザイナーをめざす人たちって中高生の頃から図工や美術の授業が好きな人が多いんですよね。体を動かすことよりも黙々と一つのキャンパスに向かうことが好きで美大を目指すんです。実際に美大に入ったら、就職先の花形として広告業界が大きく構えていて。広告業界に入ると今度は、グラフィックスキルやコミュニケーションスキルを使って物作りをしていくんですけど、実は同じようなスキルはIT最先端のスタートアップでやってるような僕らも使うんですよ。
でも、広告業界の働き方が肌に合わなかった人たちが他の選択肢を求めたときに、同じようなスキルを使うからといって急にスタートアップ業界に入れるかというと、そうではないんです。

ーーなるほど。

レオさん:デザイン業界に限らず、はやりの手法ってどんどん出てくるじゃないですか。そのときの流行、概念が出てきてどんどん消費されていく。
新商品が出て、またすぐセールになるみたいな構造ともなんかすごく似てるかなと思います。
それぞれの業界ごとに独立して存在しているようで、実は共通して使用できるノウハウやテクニックもあるんです。その業界内でポジションを築くためには必要かもしれないですけど、そのために業界ごとの隔たりができることでブラックボックス化して、モノづくり業界全体の風通しが悪くなってしまうんです。

ーーまさに、それぞれの業界が分断してしまっている感じですね。

レオさん:そうですね。最近1人関わってくれてる優秀なグラフィックデザイナーがいるんです。
彼女は音楽ライブが好きでイベント演出とかにも興味があって、今後そういうことも仕事としてやっていきたいんだけども、現在やっているグラフィックの仕事とどう結び付けていいのか分からないって言っていて。
そういった人たちって多分世の中にたくさんいると思うんですよね。
例えばhicardが音楽関係のイベント演出を専門にやっている組織と一緒に連帯を組んでお仕事ができたら面白いですよね。
お互いに信頼して連帯をして、そこのお仕事には僕たちもちょいちょいグラフィックデザイナーやCG制作のデザイナーさんをアサインするような関係になる。
その上で「そっちの仕事を週2回でやって」くらいの感じで運用できたとしたら、それってすごく自由じゃないですか。

ーーいいですね。

レオさん:そういった環境が今のもの作り業界には整ってないんです。もちろんいろんな社外秘密があるから全部オープンにするのは難しいとは思うんですけど、人材のつながりがうまくできていないんですよね。

ーー各分野でサイロ化してるクリエイターの人を、部署移動させるような感覚でチームを組成したりということですよね。
クリエイターの生き方の選択肢も広がるし、クライアント側も「hicardに相談すれば、いろいろなことを連携しながら総合的に価値を出してくれる」となるので、双方にとって良いことに思えます。

レオさん:僕が今後やっていくことが世の中のスタンダードになれるかって言うとちょっと難しいのももちろんわかってるんです。ただ、社会の多様性と考えるとすごく意味のあることじゃないかなって思ってます。
僕と同じように考えてる人が世の中に何人かいたら、各々がいろいろと試してみてその中の一つでも次の時代に繋がる突破口みたいなものが垣間見えるみたいなことがあれば、それってすごいことですよね。

ーーそうですよね。

レオさん:メディア業界構造丸ごとっていうふうには思ってはないんですけれど、やっぱいろんな組織あった方がいいだろうなって思って、それを、今の社会のルールとか規定に縛られずに、一生懸命考えるみたいなことを僕たちはやっていきたいなっていう、おもってる感じですね。

ーーレオさんのような組織の考え方って、デフォルトにはならないにしても一つの選択肢としてみんなが享受できる社会になったら、もっと生きやすくなるかもしれないですね。
レオさん:はい。本当にそう思います。そこをやっていきたいなって思っています。

(編集:株式会社COTEN 内山千咲/ライター:森まゆみ


ここまでお読みいただきありがとうございました!

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