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5-5 IT開発向け「なぜなぜ分析」(実践)

入門編のおさらい

入門編ではなぜなぜ分析の目的や手順、用語の定義を行いました。
実践編では分析を行う上での定石や注意事項を解説して行きます。

一番注意すること

なぜなぜ分析で、特に見られる悪い例は
無理に要因を発散して収拾がつかなくなる
ことです。
後述のように、因果関係と原因、理由の違いを意識して
なるべくシンプルに「枝葉」ではなく「根」を見つけるようにしてください。

本当のなぜなぜは根本原因から

IT系に限ったことではないですが
「真因」を見つけるときに、連鎖の関係が複雑でない場合は、無理になぜなぜと繰り返す必要はなく
単に事実関係を推測ではなく調査により追究して行くことが重要です。
特に因果関係が単純なIT系の場合は「真因」が見つかってからが本当の「なぜなぜ分析」が始まるといっても過言ではありません。

真因かどうかの判断

最終的に直接的原因を遡って見つけた原因が本当に真因なのかは
因果関係が明確で対策が打てるかどうかで判断します。

また、「作り込み」と「検出」の2系統でなぜなぜ分析を進める場合でも
真因がわからなければ「検出」原因はわからないので、「検出」での分析では
まずは真因を見つけることを先に進めてください。

原因と理由の違い

原因は因果関係が明確で、を除けばが成り立たない関係
つまり因果関係が成立する場合は原因となり
成立しない場合は単純な理由でしかありません。

真因と根本原因の違い

真因へ対策することで事象は解消しますが
再発を防止することはできません。
再発を防止するためには
真因を招いた原因、真因を防げなかった原因まで追究する必要があります。
それが、根本原因となります。

追究(深掘り)と発散

追究(深掘り)とは因果関係を遡って行くことです。
「掘る」や「掘り下げ」という言葉のせいで、イメージとしては下がってゆくと捉えがちですが
実際は作業工程を遡って、コーディングから設計、要件定義へと上流へ遡ることを意識してください。
これを勘違いすると、別の要因へ発散して結局は真因を見つけることができなくなります。
このように因果関係を持たない要因の発散は「原因」とは言わず、「理由」として区別することを意識してください。
それにより発散状態を回避できます。
常に、これは「原因」か「理由」かを問いながら進めてください。

ただし、根本原因は真因とは違い、工程の遡りというよりは「なぜ防げなかった」かを問うて行くので、次のような考慮が必要です。

根本原因とは

IT系開発の場合、ほとんどの真因は、設計書やコードなどの成果物の不良によって発症します。
そして、その成果物のほとんどは人間の手によって作られ、人間の手によって最終的に評価されます。
そこでの真因は、ほとんどは人間のポカが原因となりますが、そのポカへ対策を打つとしても、人間の特性は千差万別なので、千差万別の対策を考えなければなりません。
そこで、再発防止を考える場合は、そのポカを防げなかった仕組みや環境要因を追究して、それを根本原因として対策を考えなければなりません。

つまり、根本原因での追究(深掘り)は、例えば
・作業(真因)から行為
・行為から仕組
・仕組から環境(根本原因)
へと遡って行く形になります。

根本原因追及の例

根本原因の追究(因果関係を明確にする)

作業(真因)(果):必要な設計事項の記載漏れ
 なぜ防げなかったか
行為(因):要件内容を十分把握していなかった

行為(果):要件内容を十分把握していなかった
 なぜ防げなかったか
仕組(因):要件定義書の記載方法が統一できていなかった

仕組(果):要件定義書の記載方法が統一できていなかった
 なぜ防げなかったか
環境(因):要件定義書の記載ルールの内容と運用に不備があった

根本原因への対策

根本原因である仕組みや環境要因を見つけるには
まずは、現状の作業手順や作業内容を詳しく調査し
どの工程にどのような問題があったかを
仕組みや環境面でなぜ防げなかったという視点で追究してゆきます。

結果的に防げなかった要因がわかれば、防ぐ方法は見えてきます。

ただ、IT系開発の場合は、そのほとんどが
情報の不備、コミュニケーションの不備から発生しています。

経験不足や業務知識の不足、プログラミング知識の不足
聞き違い、勘違いも、それは情報やコミュニケーションの不備になります。

対策例

これらを防ぐ方法としていくつか例を紹介します。

  1. 業務のシンプル化
    無駄な作業や無駄な資料が無いか調査し
    AIや自動化ツールなどを導入し効率化をはかります。

  2. 情報の集約
    資料や成果物が散乱しているとその関連性を保持するのが難しくなります。
    DOAのような集約型の管理を導入するなどを検討してください。

  3. チェック体制の強化
    二人で二つの業務を受け持つなどして
    経験や知識のバラツキを平均化します。

  4. 優先順の明確化
    まずは、仕事に余裕を持つことが重要です。
    問題が発生したときは優先度の低いものは後回しにするなどの
    リスク管理を事前に準備して了承をとっておきましょう。


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