視覚障害者の外出ー驚いた怖かったこと

視覚情報で行動していない文化のひとたちの日々の体験、なかなか知る機会がないかとも思います。

視覚障害当事者のかたがたも、毎日毎日いろいろなところへお仕事へ出かけていろいろな体験が日常の中に埋もれていたり、そもそも発信されない、はたまた発信するにしても視覚障害は晴眼者ベースのこの社会文化の中ではなかなか文字情報を扱うことが困難である、発信弱者・情報弱者の一面もありますから、尚更、知っていただきにくい面もある。

そのため、ちらりちらりとこういうところにも、日々の体験を書き溜めていこうと思っております。

本日は、視覚障害者の外出では実はしょっちゅう遭遇するのですが、なかなか怖いできごとをひとつ。

点字図書館へ行くとき、道路に時々ガードレールで歩道と分けられている、つまり歩道と車道が段差ではなく平坦な、歩道と車道一体型とでもいうのでしょうか?そんな道路を通っていきます。
その、歩道の部分に点字誘導ブロックがあるので、それに沿っていくのですが…

実は、こういう通りでは、ちょくちょく(いや、場所によっては非常によく)、歩道の白線や誘導ブロックを無視して、寧ろそれにまたがるような形でトラックなどがとまっていることがあります。

今回もどうやらそれだったらしい。
しかも上り坂なので、私としては実はかなりバランスを保ちながら歩行するのに精神を集中しています。
点字ブロックに白杖を沿わせるのですが、ブロックの上に足を置くとバランスを崩して上り坂を歩くことができなくなってしまうので、白杖だけブロックに沿わせながら、ブロックの横を歩きます。
しかしながら、ガードレールがあるところでは歩道は狭いし、ガードレールがないところではやはり車道に飛び出してしまっている恐れで、まっすぐ歩くことが難しく、ブロックにちょくちょく足裏が乗ってはバランスを崩しそうになりながら、結構ふらふらよろよろする道なのです。

そこで、白杖をわざわざ左手で持って誘導ブロックに沿わせ、自分は点字ブロックの右わきを歩きながら、しかしそうすると杖をブロックに沿わせているため右側の前方を確認できなくなるので、その分、右腕を少しまるく浮かせて自分の身体の前に構え、前方にもし看板などがあっても人が立ち止まっていたりなどしても体当たりせず腕が先にあたるようにして歩いていました。

すると、突然、目の前に圧迫感が!
この感覚は初めてではありません。目の前に大きなものがあるのだろう。しかも一瞬間何かどこかトンネルにでも入ってしまったかのような前にも上にも圧迫感。
これは…!と思いながらとにかく探るために急遽歩行速度を一気に落とし、白杖で前を探りながらそろーり…と進もうとすると既に時遅く、

白杖が何かに当たる前に私の胸に、固い縦に細いものがあたりました。

どうやら、大型トラックかな?しかも、後ろの扉が開いていたようです。
これがちょうど点字ブロックにまたがるようにとまっていたので、トラックの後ろの扉が上にがぱーっとあいている、その中に突っ込むように進んで、その端っこの壁(要するにがぱーっと開いているところ真後ろからいくと、盾の細い固いものが胸に激突する)だったのですね。
白杖で地面を探っていましたが、こういうトラックは当然ながら、車体は空中にあがっており、タイヤはもっと前のほうにあるので、白杖で地面を探ってもあたりません。

白線やブロックをまたぐようにとまっているトラックの後ろにごん、とぶつかることは実はよくあります…。
しかしながら、その上、後ろががぱーっとあいていただけに、怖かった。
そのトラックの空いている後ろ倉庫の中に勝手に飛び込まんとするような形になるわけですからね。その倉庫の中に右腕も一瞬入ってしまいますから。

…ぶちあたること自体、危険なので、そこから本当は問題視すべきなのかもしれませんが……しかし実際問題として、よくあるのです。

音の反響やら何か空気の圧迫感で、目の前に大きなものがある、ということに気付く場合もあります。
が、気付いた時は直前なので、大抵もう遅いです。
しかも、今回のように上り坂やら車道の脇でいつ車が来るかもわからないブロックを伝いながら身体のバランスを実は一生懸命保ちながら歩いているときなどは、非常にその場その場で心身の労力を注ぎ込んでいるため、気付いたりそれに反応判断することが遅くなることもあります。


もし、白杖歩行者を見かけたとき、目の前に車や自転車が停車していたら、ぜひとも躊躇せずに気軽に「あ、今目の前に車がとまっていますよ」など、声を発して教えてくださると命拾いいたします。本当に助かります。

と同時に…もしできましたら、突如話しかけられた瞬間というのは目が見えていないと誰がどこに向かって話しかけているのか判断すること自体に時間を要します(その上で大抵わからない)ので、最初に「そこの白杖のかた、ちょっと止まって」などと言っていただいた上で、「目の前に車がとまっていて、そのまま行くとぶつかってしまうので声かけました」などと説明していただけると、状況が本当に良くわかり、大変助かります。

相手がとまっていようが車にあたるということ自体、いのちの危険すらあります。
その上、今は車の側にも触られただけでブザーが鳴るとか、そんな機能がついている車もありますし、だいたい白杖や身体でぶつかってしまって車側が傷ついてしまう恐れもあります。

…にも拘わらず、点字ブロックや白線をまたがるように止まっていたり路肩に停めてある車には気付くことできず、ぶつかってしまうことが相当日常茶飯事となってしまっている、それが視覚障害者の外出・日常の一面としてあります。

どうか、一瞬、数秒のお手伝いが本当に当事者たちの命と心身を守り、生きる勇気をいただきます。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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