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2020年に過去最大売上を記録した漫画業界と電子書籍ストア各社の取り組みの変化

どうも、ご無沙汰しています。

5月は毎年恒例の京都精華大学での講義があり、6月は半年以上ぶりのコミティア136の開催があり、暗いニュースが飛び交う中で前向きにさせてくれるイベントが立て続けに発生したので、自分の気持ちを奮い立たせて執筆しています。

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講義終了後のアンケートには29名が回答してくれて、「ためになった度」が驚異の100%を叩き出したと、お誘いいただいたおおひなたごうさんからご連絡がありました。漫画家として食っていくためにいろんな選択肢があることを知れたのが良かったという声が多かったですね。

というわけで「令和時代の漫画家はどう生きるか」をテーマにしたマガジン、久しぶりの更新です。

今回も、京都精華大学での講義内容にも触れつつ色々書いてみたいと思います。

漫画業界、2020年の売上は過去最高に

2020年の漫画業界の市場規模は6126億円となり、前年比23%と大幅成長を記録しました。なんと、1978年の計測開始以来過去最大の市場規模となったそうです。1995-96年頃の、少年ジャンプが600万部発行していた黄金期と呼ばれる時代をとうとう超えてしまいました。

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2014年に電子コミックの売上計測が開始して、落ち込むことはなくとも大幅な成長も感じられなかった漫画業界(2018年まではほぼ横ばいで推移)でしたが、2019年と2020年に急成長を遂げています。アニメから爆発的な人気を博した『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』などが市場の成長に大きく貢献した、ということも言われていますね。

最近だと、週刊少年マガジンで連載中の『東京卍リベンジャーズ』がアニメ化によってコミックスの売上が『呪術廻戦』に匹敵するか、それ以上の伸びを記録していると言います。さらに実写映画が大ヒットを記録しているとなると、ここから『東京卍リベンジャーズ』人気がどこまで伸びるのか期待が膨らみますね。ちなみに僕は作者・和久井健さんのこれまた大ヒット漫画『新宿スワン』が大好きです。

これは余談ですが、2019年から京都精華大学での講義をお受けしていますが、2年前に累計発行部数が1000万部を超えていた作品が206作品だったのが、2021年5月時点では222作品と、この2年で16作品増えました。

他にも、NetflixやAmazonPrime、Huluなど、いつでもどこでも安価にアニメや映画、ドラマを観られる環境が整うことで、より一層漫画のメディアミックス戦略に追い風となっていくでしょう。

新型コロナウイルスによる巣篭もり需要も相まって、漫画業界はこの先もしばらくはデジタルを中心に盛り上がりそうです。

漫画ビジネスでヒットを狙うプレーヤーの増加

漫画以外の出版物を含めた出版業界の市場規模は、微増もしくは微減が続いていてほぼ横ばいといった状況でしょうか。下記のリンクを見ると、書籍の中でも売上を伸ばしているジャンルはあるものの、紙の雑誌や書籍の売上推移に比べて電子コミックが伸びに伸びていることは明らかです。

漫画自体の印税もさることながら、漫画は他の出版物と比べるとグッズ展開やアニメ化や映像化、ゲーム化など、メディアミックス戦略を考えても夢が膨らむビジネスです。少し前には、講談社と集英社がそれぞれIPを活用したゲーム開発への投資を発表しました。

こうした市場の成長性と多様な収益性を受けて、ここ数年で漫画ビジネス(オリジナルIPの創出)に商機を見出そうとするプレーヤーが増えてきているように思います。

出版社の中でも、漫画を作っていなかった企業が参入を目論んでいたり、「本屋」機能がメインだった電子書籍ストアもオリジナル漫画の連載本数を強化したり、非常に盛り上がっていますね。

漫画制作に資本を透過する企業が増えるということは、新しい漫画を制作する会社が増えるということです。それはすなわち、漫画のつくり手の需要がこれまでにない速度で高まっていることを意味します。

「令和時代の漫画家はどう生きるか」というマガジンにおいては、ここが重要なポイント。ということで、次回のnoteでは、引く手あまたの漫画家さんたちにとって、漫画連載のオファーが来た際に、どういう観点でメリット・デメリットを見極めるべきかについて書いてみたいと思います。

そして、とても便利な「オンライン持ち込みシステム」を持つ出版各社のサービスを分析するnoteも書いてみたいと思う今日このごろ。書きたいものは多いのに、書く時間を作れないもどかしさと戦っていますので、皆様は次回の更新を気長にお待ちください。

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