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革について

今回は『革』について改めて調べたことがあったのでそのことを少し述べたいと思います。

革とは、鞣し加工を行った耐久性のありながらも柔軟性がある動物の皮革のことです。
皮を取った後、鞣し加工をせずに乾かした場合、単に堅くなりもろくなってしまいます。これを防ぐために体毛や脂肪を取り除き、鞣し剤にさらすことで、繊維質の細胞組織がつながるため、伸縮性や弾力性、通気性が生まれ皮から革へと変化します。

紳士靴のアッパー革には、クロム鞣し※1がメジャーな鞣し加工となります。ソール革には、古来より知られている植物タンニン鞣し※2(別名:ピット鞣し)加工です。
紳士靴用のクラシックな革でよく耳にするのは、「カーフスキン」や「ボックスカーフ(19世紀末のロンドンの靴屋ジョセフ・ボックスから名を取ったカーフの革)」のような牛革※3だと思います。

ちなみに、1999年に発行された本「GENTLEMAN」の中に、『カーフスキンは紳士靴の標準的な素材だ。ただ、現在では、良質な革を入手するのが困難になりつつある。現在の畜産業は、革の品質の向上のためには何の努力もしていないからだ。』と記載されています。
食肉の副産物である以上、良質な原皮が入手できないことが原因だと思います。また、近年では比較的安価な紳士靴メーカーが有名タンナーのボックスカーフを使用することが増えたように思います。
そのことにより、大量生産に対応するべく原皮の確保に追われ、原皮の品質が落ち、結果として革の品質が落ちてしまったのではないのかとも考えられます。実際のところは不明ですが、1999年の本ですでに良質な革の入手が困難と記載されていたことから、2024年の現在ではより厳しくなっているのではないかと思います。ただし、鞣し技術の向上等により安定した質の革が生産されているとも考えられます。靴の業界に入ってみて、昔の革の方が質が良かったと度々聞くことがありますが、今回自分で考え調べることで自分なりの答えが見つかった気がします。

note : 村上紀之



※1 クロム鞣しとは、三価クロム塩等の溶液を鞣し剤として用いる方法です。下処理(不要な体毛や脂肪を取り除くこと)を終えた原皮をドラムと呼ばれる回転槽に入れて、クロム溶液と一緒に上下に回転させ「皮」から「革」へと変化させます。
特徴として柔軟性、伸縮性、染色性等が高いことが挙げられます。

クロム鞣しの革

※2 植物タンニン鞣しとは、植物から抽出したタンニンを活用して鞣す方法です。「動物の死骸が落ち葉等に埋もれた水たまりに浸かっていたものは、肉は腐っていたが皮は腐っていなかった」これが最初の植物タンニン鞣しと言われています。
実際に植物からタンニンを抽出して鞣し始めたのは、19世紀で場所はイギリスのようです。ピットと呼ばれる桶槽に濃度の異なるタンニン液を張っており、濃度の低いタンニン液に皮を浸し、徐々に濃度の高いタンニン液に浸して「皮」から「革」へと変化させます(約1ヶ月〜3ヶ月、長いもので1年)。
特徴として可塑性、成形性、耐摩耗性等が高い、また伸びが少ないことが挙げられます。

植物タンニン鞣しの革

※3 牛革とは、食用の牛肉を取った副産物である牛の「原皮」から不要な体毛や脂肪を取り除き、鞣し剤を使用することで、皮の主成分であるタンパク質を結合・固定・安定化することで腐敗や乾燥しにくい「革」に変化させたものです。また、この行為を鞣しと呼びます。
自然素材ということもあり、出来上がった革は一枚一枚個性があり、全く同じものはないに等しいですが、鞣しの技術等により、品質の安定した革が生産されていると言えます。また、世界中で牛肉が食べられていますので、食文化の違いによって作られる革に違いが出てきます。
例えば、ヨーロッパでは子牛を食べる事が当たり前なのでカーフと呼ばれる革を作るタンナーが多いです。

・ベビーカーフ:生後3ヶ月くらいまでの子牛の原皮を用いた革
・カーフ:生後6ヶ月くらいまでの子牛の原皮を用いた革
・キップ:生後6ヶ月〜2年くらいまでの牛の原皮を用いた革
・ステア:生後3〜6ヶ月の間に去勢され、生後2年以上経ったオスの成牛の原皮を用いた革(去勢=食用)
・カウ :出産を経験し生後2年以上経ったメスの成牛の原皮を用いた革
・ブル :去勢されず生後3年以上経ったオスの成牛の原皮を用いた革

ちなみに、重量が25ポンド(約11kg)以下の原皮をスキン、25ポンド以上の原皮をハイドと呼び、どちらも意味は原皮で重量で呼び名が変わる=原皮の大きさで呼び名が変わります。そのため、カーフとキップをカーフスキン、キップスキンと呼び、ステアとカウとブルをステアハイド、カウハイド、ブルハイドと呼びます。

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