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セルヴェの考え♯6 注文の少ない料理店

セルヴェはタクシーを降りて、目の前のレストラン風のコーヒー店に入った。
内装は至って普通。ソファー付きのテーブルが3つ、イスのタイプが5つ、カウンターが5つある。
ただ、気になったのは、なぜか内装がすべて青いこと。勿論白い部分もあるが、青が圧倒的に多い。

そんなお店にセルヴェは入った。
セルヴェはカウンターに座ることした。
すると、店員さんが来る。

おはようございます。なににしますか?

やあ、メニューはあるかな?

メニュー表お持ちします。

そう言うと彼女はメニュー表を持ってきた。セルヴェはこのメニュー表をみて驚いた。
サラダ、コーヒー、グリルチキン、ターキーサンドイッチ、コーンフレーク、お任せの7つしか載ってないのだ。
ここまで少ないメニュー表は初めてみた。

えーと…… これは全部かな?

そうですよ。

えーと…… このお任せとは?

あー それはキッチンの人がオリジナルで作ります。

どんな料理が出る?

それは私たちには分かりません。

なーなるほど…… 。

セルヴェは話を聞いて言葉を失う。そして少し考えたあと、ついになににするのかを意を決して注文した。

では、このお任せで。

え、お任せですか?

ああ、少し興味がある。

本当にお任せで?

ああ、本当だ。それとコーヒーはアイス、フレッシュだけ入れてくれ。

わ、わかりました。少々お待ちください。

ああ、頼むよ。

店員さんはこの人大丈夫か? みたいな不思議な顔をしていた。首を傾げていた。
どうやら、かなりヤバいものが出てきそうな予感だ。
メニュー表にあんなに大々的に書かれてあるし、冒険してみたい気分だった。メニュー表には青い星の真ん中に大文字で「お任せ!メニュー!」なんて書かれてあったらそりゃ興味は出るだろう。昔、親にあの場所に行くなと言われて、興味津々にその禁止場所に入って怒られるのと一緒だ。
子供なら誰しもがやってしまう。セルヴェは大人だが、心は子供のままだ。

先にコーヒーが来る。その10分後に料理が運ばれてきた。

それをみてセルヴェはまたもや驚く。目の前にでてきたのはハサミの形の揚げ物だ。

なんなんだ? これは?

私にも分かりません。

「なんでお前が知らんのだ!」とツッコミを入れたいところだが、そんな気にもなれない。

これはハサミかな?

そうですね。

これはハサミを揚げてあるのか?

いや…… それは無いはずです。恐らく。多分。

多分とか辞めろよ。

大丈夫です、美味しいですよきっと。

あーそう。

まあ召し上がってください。

そうだな…… 。

これは何でたべる? スプーンか? それともフォークか?

フォークでしょ、これは。さして。

なるほど。

セルヴェはフォークを使って、その物体を刺した。

本当にハサミでは無いのだな?

ええ、恐らく。

と、店員さんが見守る中、セルヴェはその揚げ物に少し躊躇いつつも激しく食いついた。
そこには味わったことのない、ジューシーな肉肉しい、味わい。中をよく見ると、レンコンとお肉だった。それをハサミの形にして揚げてある。

なるほど、中はレンコンとお肉か。

良かったですね、ハサミじゃなくて。

冗談は辞めてくれ。

すると、キッチンから1人出てくる。

どうかね? 私の自慢のハサミ揚げは。

キツイぞ、形とネーミングが。

ジャパンにあるのだよ、ハサミ揚げというものが。

ジャパンに? こんなのが家庭に出てくるのか?

ええ、まあ…… すこし形は違いますが。

なるほど、未知なる国だな。

そうですな。

聞くところ、このハサミ揚げを作ったこの男は1992年の春から1年間日本で暮らしていたそうだ。
その時に日本の料理を研究して、ペルーに持ち帰ってきた。
このお店はオーナーの嗜好でこのようなスタイルになっている。今は朝で人は少ないのだが、昼は混むそうだ。

なるほど、楽しませてもらったよ。また来るよ。

ぜひ! ありがとうございました!

そう言うと、セルヴェは会計をしてお店を出た。
すぐ近くにレアル・フェリペ要塞がある。

今日はまだ始まったばかりだが、朝から刺激をもらった。
「おかしなお店だ。これは日記が騒ぐな」と思いながら、パイプを吹かしながら場所に向かった。

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