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経営指標として経常利益率10%を達成するために社長が意識すべきこと

会社における経営指標の意味

「この経営指標って意味がないんですか?」

あるクライアントさんと会社の財務戦略の打合せをしている時の話です。私との打合せの前日に会社の数字の見方に関するセミナーで勉強された経営者からこんな質問がありました。

普通、会社の数字に関するセミナーでは「経常利益率は10%を目指しましょう」「流動比率は100%を超えていないとダメです」といった説明が行われます。

しかし、言われてみて私も改めて気がついたのですが、私が会社の数字の話をしている時にはあまり経営指標を使っていません。

このため、クライアントさんは「岩井さんの話は昨日勉強したこととどうつながるの?」と思われたご様子でした。


経営指標は第二歩目の道しるべ

もちろん、経営指標は大事です。

銀行で融資案件を審査する際には主要な経営指標をチェックして、「この自己資本比率では安全性の面でひっかかるかも」「この利益率なら収益償還も問題ないだろう」といったことを見ています。

また、京セラ創業者の稲盛和夫氏が「どんな業種でも経常利益率10%以上を上げなければいけない」と言っておられることを受けて、「ウチの目標は経常利益率10%を達成することです」とおっしゃる社長もおられます。

単純に売上高や利益を追うのが第一歩とすれば、利益率や流動比率などの経営指標を追いかけるのは第二歩と言えるのかもしれません。


社長の打ち手は数字にどう反応するのか

でも、・・・・・

私自身は、この第一歩と第二歩の間には大きなギャップがあるのを感じています。

例えば、売上高3,000万円の会社であれば、経常利益300万円を達成すると、

経常利益率=300万円÷3,000万円×100%=10%

となります。

これぐらいの規模であれば、「あと100万円売上が増えると」「あの経費を10万円削ったら」といったように、社長の打ち手と会社の経営指標が上手くリンクして理解されるのではないでしょうか。

しかし、これが、売上高が1億円、3億円と増えてくるとどうでしょうか。

やがて、今期は10億円を目指すといったステージになると

・商品のラインアップが増えている
・実際の仕事は現場の社員に任せている
・当初に思っていたよりも支払が発生する

という状況になります。

すると、仮に経常利益率10%を目指すといった時、「何をどうすれば、あと経常利益を2%増やせるのか?」がすぐには分かりづらくなります。


自己資本比率を高める方法は

私が銀行に勤めている時に、自己資本比率規制というのがありました。国際業務を行うために銀行は自己資本比率10%以上を確保しなければならないというものです。

自己資本比率を増やすには、単純に考えれば、

・増資をして資本金を増やす
・利益を上げて利益剰余金を増やす

のが王道です。

一方で、資本金も利益剰余金も変わらないのであれば、総資産を減らすことで自己資本比率を上げることが可能になります。このため、当時の銀行では計算上は資産に計上しなくてもよい信用保証協会付きの貸出金を増やすことを強力に推進していました。

支店で働く私たちも

・自己資本比率が大事なこと
・自己資本比率を増やすために信用保証協会付きの貸出金を増やすことが大事なこと

は理屈の上では分かりました。

でも、少なくとも私は「この保証協会付きの融資3,000万円を実行すると、自己資本比率にどれくらい貢献するんだろう?」ということが肌感覚では分かりませんでした。


仕事と会社の経営指標は結びついているか

もちろん、2万人規模の会社で社員一人ひとりが「自分の仕事を会社の経営指標と結びつけて考えながら日々行動する」のは難しいのかもしれません。

でも、中小企業であれば、少なくとも社長は「会社が取組んでいる仕事を経営指標と結びつけて考えながら日々行動する」ことが求められます。

しかしながら、現実問題として、ある程度の売上が上がっている会社の社長で「今月中にあの300万円の契約が取れたら、経常利益率が10%となる!」と即答できる方はごくまれです。


仮説と検証を繰り返していくと

このため、私が財務戦略をクライアントと打合せする際に意識しているのは、「実際の仕事と会社の数字に結びつけるプロセスをハッキリさせる」ということです。

数字なので、理論的にかつ整合性が取れるように業務プロセスを構築していきます。でも、実際には計画した通りには行きません。しかしながら、まだこれは仮説の段階です。

そもそも当初の計算の根拠となる数字も過去の事例や経験から算出しているので、最初のうちは「算出根拠となる単価は本当にこれで良いのか?」といったことが発生します。このため、実行した結果を踏まえて検証し、当初計画をより確かな仮説に進化させていくことが必要です。

そして、この地道な作業を毎回繰り返し、仮説と検証を愚直に繰り返していく過程において、たいていの社長は

「あと5件契約が決まれば損益分岐点を超える」
「あの毎月20万円の支払は5万円減らした方が良い」
「営業部で1人追加募集しても充分ペイできる」

といったことが感覚的に分かってきます。

そして、その感覚が備わってきた時に「自分の感覚における数字と経営指標を照合する」ことで、会社の仕事と数字が結びつく状況になります。


一歩半をとばさない

だから、

・第一歩:単純に売上高や利益を追う
・第二歩:利益率や流動比率などの経営指標を追いかける

とすれば、第一歩と第二歩の間の一歩半をどうやってつないでいくかがポイント。そして、この一歩半を吹っ飛ばしてしまうと、単に数字だけを追いかけてしまった某大手企業の二の舞になります。

経営指標を始めとする会社の数字は大事です。しかしながら、数字は会社の仕事と一貫性を持って、しっかり結びついてこそ初めて意味を持ちます


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