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経費削減優先は赤字会社の経営再建に際し、はたして本当に正しい対策なのか?

今からの11年前の2010年7月15日の日経新聞の「大機小機」という欄に「無駄削減優先論は正しいか」という記事が載っていました。

話の内容を要約すると以下の通り。

疑問点(提言):無駄削減優先論こそが財政再建を妨げている元凶ではないか。

理由
①無駄削減優先論は「無駄をなくせば財政再建は可能」という幻想を生んでいる。
②無駄削減優先論は国民的モラルハザード(倫理の欠如)を生んでいる。
③「無駄」という概念が、建設的な論議を阻害している。

結論:本当に必要なのは、限られた財源の中で選択と集中を行い、優先分野を明らかにしていくことだ。

上記は国の財政再建の話ですが、これを会社の場合に当てはめてみると、赤字会社の経営再建の話になります。

多くの会社は赤字になると、まず手をつけるのが経費削減です。人件費しかり、広告宣伝費しかり、です。

ここで、仮に今5,000万円の広告宣伝費を使って、1億円の売上高を上げているとします。

他の諸経費を除外して考えれば、5,000万円の投資で1億円の収入が得られるので、差し引き5,000万円のプラスになります。

しかし、5,000万円の広告宣伝費を半分の2,500万円に削った場合はどうなるでしょうか。

おそらく従来通り1億円の売上を上げるのは難しいでしょう。もし、売上が4,000万円に落ち込むようであれば、差し引きはプラス1,500万円で、投資効率としては経費削減前よりも落ちています。

現実の話はこれほど単純なものでもなく、また、資金繰りとの兼合いでどうしても大幅に経費を削減しなければならない場合も多いかと思います。

ただ、ここで問題は、経費を単純に削減しただけでは会社の業績は向上しないということ。やはり、会社は売上を上げてなんぼの世界ということなのです。

人件費のケースであっても、やむなくリストラしたり、給料を減らしたりしないと会社が立ち行かない時もあると思います。

しかしながら、単純に人を減らす、給料をカットするだけでは、会社に残った人の働く意欲も低下し、かえって業務の生産性が落ちて業況の低迷が長期化するという事にもなりかねません。

ある会社では毎月約30万円の給料をもらっていた2人の内、1名を解雇。残った1名はなかなか優秀な人だったのですが、給料は据え置きのまま実質2人分の仕事をやらされることになりました。しばらくして、会社に残っていた人は仕事と給料が割に合わないと感じ始め、新しい職場に移ってしまいました。

この場合、もし、仕事の配分と待遇に会社がもう少し気を使っていたら、結果は違っていたかもしれません。

先の記事の中にも以下のような指摘がありました。

「無駄の削減では財政の健全化はできない」ということと「歳出のスリム化に努力すべきだ」ということは別である。

経費の見直しを常に行うことで、本来払わなくもよい出費をできる限り減らすという努力を続けることは重要ですが、経営者は経費を削減したら事足りる訳ではないことを忘れてはなりません。

普段経費の見直しをほとんどやっていない会社ほど、業績が悪くなっていきなり経費の大幅カットを行い、かえって現場が混乱して事態をより悪化させている事例は多いように感じます。

それにしても、11年前と比べて財政赤字は大幅に増えていますが、財政再建に関する本格的な議論はいつも先延ばし。今は公的な支援でなんとか持ちこたえている会社も多いだけに、財政赤字の問題も無関心ではいられません。

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