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プロの専門家として仕事に取り組む際、心掛けたいマインドセットとは?:みずほ銀行に勤めている◯年前の私へ(財務サービス部編2)

足りない知識や経験に着目するのではく、今ある知識や経験を活かせる市場に着目する

財務サービス部に配属されて2、3ヵ月経った頃から、時々支店に訪問するという仕事が始まりました。金融派生(デリバティブ)商品の専門家として、支店に行って、担当者と一緒にお取引先にお伺いし、商品の説明を行うという仕事です。

私も前任店の時に、「為替リスクを回避するためにスワップを使いたい」というご要望を受けた際に、財務サービス部の人に担当先に同行訪問してもらったことがありました。立場変わって、今度は私が本部の専門家として、支店のお取引先に行くという訳です。

ただ、専門家といっても、研修生として基礎の基礎を学んだ程度。このため、複雑な取引を分かりやすく説明する能力はありません。このため、訪問する先は、当時支店でも力を入れていた「ワンストップ」という商品が中心でした。

この「ワンストップ」というには、銀行が融資をする際、貸出金とデリバティブを組み合わせた商品で、融資期間は1年間、途中で返済しない限り、貸出金利が年間を通してみると、割安になるというもの。

・お取引先:割安な金利でお金を借りられる
・銀行:割安な金利でお金を貸しても、一定の利益を確保できる

ということで、双方にとってメリットがあります。

構造がそれほど複雑ではなく、お金を貸す方にもお金を借りる方にもメリットがあるため、全社的にかなり流行っていました。そして、この「ワンストップ」を担当先にセールスする際に、同行してほしいという依頼があった際、私たちのような研修生も説明に行ったのです。

デリバティブのプロを自認する方からすれば、当時の研修生は専門家と言えるレベルではありません。

しかしながら、ある特定の知識レベルで、「財務サービス部の研修生>支店の担当者>お取引先」という構造が成り立つため、私も専門家の一人として仕事をしたのです。

当時はただ夢中になってやっていたため、自分があまり専門家かどうかはほとんど気にしていませんでした。

一方、起業してお客様から直接お金をいただくようになってから、「自分は何の専門家なのか?」と悩むことがありました。

私の場合、一つの仕事をずっとやってきた訳ではありません。

世の中には「営業一筋」「経理をやって30年」といったその分野の専門家の方から、たくさんおられます。この点、私も営業、人事や財務や総務など、いろんな仕事をやってきましたが、「○○一筋」という専門家ではないからです。

けれども、先の研修生時代を振り返ってみると、「財務サービス部の研修生>支店の担当者>お取引先」という条件の下では、

・お取引先:デリバティブ商品に関する疑問や不安が解消される
・支店の担当者:お取引先が納得するので、融資を増やせる
・財務サービス部の研修生:自分の知識を活かせる

という三方よしが成り立つのです。

つまり、「専門知識の多さ、経験や実績の有無に関わらず、一定の条件が揃う場面においては、専門家として仕事をしても問題ない」ということです。

経営者の中には、私から見ると、すごい知識や経験を既にお持ちなのに、「これが足りない」「あれがないとダメだ」と考えて、知識やノウハウを修得することに、かなりの時間とお金を使っておられる方がおられます。

もちろん、学びは大切です。そして、学ばないと成長しません。

しかし、インプットはアウトプットのためのもの。自分の知識や経験を活かして、クライアントさんのお役に立ち、お金を稼ぐという観点から考えると、「今の知識や経験を活かして専門家として役立つお客様を見つけて全力で貢献する」ことを優先した方がベターです。

その際、「○○の知識がないとダメ」「××という経験が足りない」ということで、見込み客と商談しても、成約しないケースも出てきます。

その場合は、説明の仕方によっては一度断られても、最終的に成約に至ることもあります。また、どうしても現時点で「○○がないとダメ」と主張する相手に対しては、こちらもある程度割り切って諦めることも必要です。

けれども、経営者ご本人が「○○の知識がないとダメ」「××という経験が足りない」と考えている場合、実はお客様はそうは思っていないのに、サービスを提供する側が想像でそのように解釈していることも少なくありません。事実と解釈は往々にして一致しません。

実際、あるクライアントさんには、「既に『あなたのサービスを受けたいと』言ってくれるお客様がおられるのに、『これを学んでから始めたい』というのは、かえってお客様に失礼ですよ」とお伝えしたことで、マインドセットしていただき、新しいサービスをリリースしてもらいました。

研修生時代は、ある意味純粋に、自分の学んだことを仕事に活かすことに集中していました。そして、限られた分野ではありますが、何かしらお取引先や支店にお役に立てたと思います。

この点、起業してからの方が、いろいろと考えることが増えたために、かえって余計な心配や悩みが増えたのかもしれません。

考えはできるだけシンプルにしたいですね。

自分を突き動かす原動力である心意気が自覚できると、自分の思考の癖も分かるので、よりシンプルに考えられるようになります。
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