見出し画像

情報漏洩を本気でなくしたいなら、社員への注意喚起頼りでは限界あり:みずほ銀行に勤めている◯年前の私へ(西新宿支店編6)

仕事で何を最優先するのかは、社員の判断任せではなく、会社が判断基準を明示する

昨今は個人情報保護の観点からもデータの持ち出しに関しては、すごく厳しくなっています。

しかしながら、私が西新宿支店で働いていた頃は、かなり緩やかでした。

平日の日中は取引先を訪問したり、ノルマをこなすための営業をしたり、ということで、融資案件の申請書を書く時間があまりありません。

急ぎの案件があって、日中に支店内で申請書を書いていると、「ちゃんと営業しろ!」と怒られます。つまり、営業担当者は「支店の中にいる=仕事をしていない」と見なされるのです。

このため、貯まった申請書を書けるのは支店の窓口が閉まった午後3時以降。けれども、夕方5時くらいまでは、当日の数字の集計作業や夕礼があるので、なんだか落ち着きません。

したがって、じっくり邪魔されずに申請書を書けるのはだいたい午後6時以降になります。そして、労基署との関係もあって、遅くとも午後11時前には支店を出ないといけなかったので、限られた時間で、集中して書類を作成する必要がありました。

それでも、取引先も多く、新規案件に加えて、既存の貸出金の延長申請などが重なると、どうしてもすべてを支店内で終わらせることは、物理的に不可能でした。

そこで、大半の担当者は週末の金曜日になると、

貯まっている融資案件の取引先のフォイルを紙袋に入れて持ち出す
 ↓
週末にまとめて申請書を自宅で書く
 ↓
週明けの月曜日に課長に提出する

ということを行っていました。

当時はまだデジタル化が進んでいなかったので、物理的に紙で持ち出すことを行っていたのです。

先輩の中には、取引先ファイルのコピーを一式自宅に揃えて、持って帰るのは、申請書を書く際に必要な最新の資料のみという強者もおられました。今から思うと、取引先に関するかなりの機密情報も含まれていたので、かなり問題になるかと思います。

しかしながら、当時は情報漏洩よりも、まずは持ち帰っても仕事を仕上げることが最優先で、週明けに提出する申請書の数が少ないと、課長から「週末に何やっていたんだ!」と怒鳴られることもありました。

今はデジタル化が進んだので、ファイルを一式持ち帰るということはないはずです。けれども、業務の性質上、

どんなに効率化しても営業時間だけは終わらない業務量がある
労働者保護の観点からも、会社で仕事をできる時間が制約されている
そのような現状に対して、組織としては必要悪として見て見ぬふりをしている

ことが続いていれば、まじめで責任感の強い社員が自宅でやろうと考えてデータを持ち出すということはなくなりません。

銀行においても、行員が書類を持ち帰った際に書類をなくして、処分を受けたということが何回かありました。

中には「つい飲みに行ってしまい」とか「電車の網棚に鞄を置いてしまい」といったケースもあり、支店においても、いろいろと注意喚起がなされました。

もちろん、それはそれで問題があることなのは事実。けれども、会社として本気で情報漏洩を防ぎたいのであれば

普通の人が営業時間内でその日の仕事を終えることのできる仕組みを作る

のが本筋です。

そこに手をつけないまま、あうんの呼吸で「やらないと、どうなるか分かっているよね」というプレッシャーを与えたまま、何か問題が起きた時に、該当者だけの処分で済ませるのはなんだか釈然としません。

幸運にも、私は持ち出した書類を紛失してなくすことはありませんでした。けれども、同じ課にいた先輩の方が鞄をなくしてしまい、その後転勤させられたのを間近で見ました。

でも、それはほんのちょっとした偶然の重なり合いの違いから生じたものであり、私の場合は、たまたまなくさなかっただけであると感じます。

リモートワークの進んだ今では、情報漏洩に関して気をつけなければならない点も大きく変わっています。しかしながら、会社が率先して「普通の人が営業時間内でその日の仕事を終えることのできる仕組みを作る」のが大切であるという点では昔も今も変わっていません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?