【稽古日誌】カスケードとカテーテル #17

2022.4.30(土)
今日は本番2日目でした。私は開場の15分前から外に出てお客様をご案内しているのですが、そのときにちょうど作品を想起させるようなことがありました。

会場に入るためのエレベーター近くでご友人と待ち合わせをしていた男性と少し話をしました。その男性のご友人が近くに自分の店を構え、お店でビールを安く提供しているので共通の友人と出店祝いに駆けつける、そのために待ち合わせをしている、とのこと。きっと最近は、空きテナントに新たに出店するという事例は多くあったことと思います。

この2年、あまりに多くのテナントが閉店を余儀なくされた。緊急事態宣言やまん延防止措置の影響でお客さんが来なければ、当然赤字を垂れ流すわけにはいきませんから閉店せざるをえません。会場近くでは工事の音がよく聞こえます。COoMOoNO主宰のもこさんが教えてくれたのですが、コロナ(対策禍)の影響で店舗の閉業が相次ぎ空きビルとなり、この機会に建て替え工事が会場近辺ではたくさん行われている、と。

出店祝いはめでたいことですが、その裏にある街の人々の事情には、ただ客として原宿で買い物を楽しんでいるときには知るよしもないような、多くのかなしい出来事があったと想像します。仕事をなくして路頭に暮れる人もいたでしょう、自分の店をたたみ好きな仕事から離れた人もいたでしょう。男性と話をしていてそのようなことを感じました。

一方、コロナ(対策)禍から学ぶこともあると思います。そもそもの以前から自身の大切なものを見失って生きていたことが、コロナ(対策)禍によって露呈したということです。この状況の中にあって失うものがあまり無かった、あるいは無くしていることに気づかないこと、気づいてなお傍観していられてしまうという体質。この社会は、こうもすんなりと自粛要請にしたがい、いっとき、ただの外出さえ悪だ、との空気を醸成することができました。そうした体質は、はたして生きていると言えるのか?
本番を裏で聞いていて、今日は刺さる台詞が多かった。上の男性は舞台のお客さまではありませんでしたが、思わぬ会話をすることができたおかげかもしれません。

最終日、どこまで作品がお客さまに届くのか。アンケートなどにお書きいただけると嬉しいです。

演出助手 寺原航平

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