見出し画像

音楽と私

音楽との出会いはタイミングというものがある。
出会った曲の素晴らしさがさっぱり分からないということはよくあることだ。
また一方で、この曲はまさに今の自分のために存在していたのではないかと思えるような出会いもある。
私はつい最近、そんな出会いをした。

Bill Evans "Undercurrent"

この一年ほど、私は精神的にかなり落ち込んでいた。色々なことが上手く行かず、自分を責め、過去の自分の全てが間違っていたんじゃないかと思うほど気が参っていた。

Wikipediaより

そんな時、出会ったアルバムが Bill Evans の "Undercurrent" だ。
このアルバムはピアノ、 Bill Evans とギター、 Jim Hall のたった二人だけによるもので、息を呑むほど美しく、繊細な演奏を堪能できる。
人生の美しさ、儚さ、そして悲劇を音楽を通してそのまま聴いているようであった。
そして、この音楽に自分も溶け出しているような感覚を抱いた。自分の抱いていた悲しみや絶望が音の中に滲み出ていた。

私は Bill Evans の音楽が好きだ。彼の音楽はいつでも自分の心に寄り添ってくれる。
私の心が穏やかな時は、世界はこんなにも美しいのだと思わせてくれる。
また、悲しみの底にいる時には一緒にどん底まで落ちてくれる。
彼の音楽には美しさと絶望が同居している。
そして、これは人生の希望である。
人間の美しさは絶望の果てにあるのだと教えてくれるのだ。
人は絶望を乗り越えることで、より美しく尊いものになる。

私は芸術の鑑賞と人生における経験は、相互に作用するものだと思う。
芸術を鑑賞することで、個人の経験がより奥深いものになるし、
個人の経験がまた芸術を味わい深いものにする。
その意味で、このアルバムと私が「今」出会ったことは私の人生の中で、かなり重要であったし、このタイミングだからこそこのアルバムの良さを十分に味わえたのだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?