世直しリョウ君 第一話:イタ過ぎたオトコ②
それから月が変わったある日の夕方、僕は仕事帰りに立ち寄った書店でヤツの奥さんに偶然会った。
「あの…さん、ですか?」
笑顔で軽く会釈した彼女だが、声の調子まで優しさと気品に満ちていた。彼女に会うのは結婚式の二次会以来でまだ二度目だが、僕にはすぐに彼女だと分かった。
「…コイツ、使えねぇ新人クンでさ、オレが面倒見てやってるんだ。」
式の二次会で僕が挨拶した時の、ヤツのコトバだ。酔って上機嫌だったが、隅々まで無礼とか不躾とかいう表現でしか言い表せないようなイタさが溢れていた。『