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#恋愛小説が好き

恋愛小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

急上昇の記事一覧

桜のしおり 春弦サビ小説

バンとドアを開け、彼女は本棚に一直線。 文庫本を取り出し、僕に突きつける。 そのページに僕の心を閉じ込め、ケンカの際には切り札にする。 その色褪せた桜の栞に魔力が宿っていると、志桜里は信じて疑わない。 これだから、かなわない。 僕はだらしなくゆるみそうになる頬を引き締め、彼女に告げる。 「うん、好きだよ。僕のほうがずっと」 (おわり) 春弦サビ小説に参加いたします スズムラさんのかわいらしい歌詞「ハートの栞」からインスピレーションをいただきました ありがとうございます

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居眠り猫と主治医 ㉚夏目氏、ご乱心 連載恋愛小説

「ご報告があります。欠食しないようになりました!」 ドヤ顔で胸を張る。 まだまだレベルは低いが、文乃にとっては大きな進歩だ。 「コンビニでひじきサラダとか買うようになったし、これも師匠の粘り強いご指導の賜物です」 こんな不健全な生態を変えられるなんて、やはり彼はただ者ではない。 師匠がダウンしたら共倒れだから、責任重大だと告げる。 「あっちに行っても3食きちんと取って、睡眠もしっかり確保する。私用に冷凍おかんボックス作っておくこと。わかりましたか?」 我ながらどの口が言う、

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📕小説(ショート)【メリーゴーラウンド】

 子どもの頃から乗り物酔いをする質。 家を出る前にアネロンニスキャップを1カプセル服む。 今まで試したどの酔い止めより私に合っている気がする。 残りは後1カプセル。  郊外型の大きなショッピングパークの中に、話題のメリーゴーラウンドはある。 ライドは2人がけの馬車だけ。 話題になっているけれど、私が乗るなんて思いもしなかった。  横顔に話しかける助手席の私。 時々私に向ける眼差し。 どう見てもデート中のカップル。 メリーゴーラウンドから降りても、このままのふたりでいられる

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居眠り猫と主治医 ㉙遠距離恋愛計画 連載恋愛小説

「まともな会話ができるうちに言っとく。来月、小笠原に行く」 いよいよ最後の晩餐かとうつむきそうになったが、文乃は目を見て話を聞くことにした。祐も包丁をまな板に置き、向き直る。 「期間限定で手伝いに行く。籍はあくまでクリニックにあるし、文乃とは別れない」 文乃の認識とはかけ離れていたので、理解するのに時間がかかった。 骨折したのは左手だし、院長にはせっかくだからドンと借りを返してもらうと、こともなげに言う。 「私のことほっぽって、イルカに走るとばかり…」 なんだそれ、と彼は

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春の終わり、夏の始まり 13

遅れてやってきた参加者も増え、同窓会はさらに盛り上がっていた。 あちこちで交わされる昔話、そして近況報告。 少々酔いを覚えた唯史は、義之を誘って居酒屋の裏手にある河川敷へと移動した。 春の夜風が二人の頬を優しく撫で、遠く関空の誘導灯が見える。 上空には無数の星がきらめき、喧騒を離れた穏やかな時が流れていた。 「ここは変わらんな」 と唯史がつぶやくと、義之は、 「そやな。でも人は変わる。唯史、その顔色の悪さとガリガリに痩せた体、俺が気づいてないと思ってるんか?いったい何があ

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春の終わり、夏の始まり 14

同窓会が終わった後、2次会へと流れる者も多かったが、義之はそのまま帰宅した。 義之は、祖父から譲り受けた平屋一戸建てに住んでいる。 畳敷きに寝転がり、天井を見ながら、義之は唯史のことを考えていた。 「何があった、唯史……」 久しぶりに見る親友の姿は、中学時代から大きくかけ離れていた。 いや、見た目はそれほど変わっていないのかもしれない。 他の同級生は、唯史の変化に気づいていない様子であったが、義之は一目でわかった。 唯史はもともと、色白の美少年であった。 だが今の彼は、

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居眠り猫と主治医 ㉘夏目先生のお料理教室 連載恋愛小説

次の日、スーパーに寄って手巻き寿司の材料を買いこんだ。 「あ。初デートだ」 「どこが」 昨日の彼はどこへやら、すっかりクールな夏目祐に戻ってしまっている。 おぼつかない手つきの文乃に業を煮やし、祐が包丁を取り上げた。 「刺身があとかたなくなる」 刺身包丁でなくても二回に分けて引くように切るといいと、職人技を見せてくれる。 文乃は卵焼きをねだって、その魔法のような箸さばきに目を丸くし、料亭並みの味だと絶賛した。 *** 満を持して、得意料理を披露する。 こころを救ってくれ

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「胸が張り裂けそう」 僕がそう言うと、君は胸に手を当てた。 僕の痛みは君の痛みで、君の痛みは僕の痛み。 どうしてこんなに、苦しいんだろう。 君の痛みがわかるから、僕は君を傷つけられない。 僕は自分が傷つくのが怖いから、君のことを傷つけられない。 共感が僕たちを襲う。

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【連載小説】ガンズグロウ vol.2「ガンズグロウ」

二次会へはいかなかった。 行っても話が合うとは思えなかったから、レナに話して一次会だけで帰った。 帰ってしばらくして、彼のメアドも電話番号もゲットしていないことに気づいた。 まあ、でも二度と会うことはないかなと思い、そのままにした。 翌日。 レナからメールが届いた。 「上坂くんがメアド知りたいって言ってるけど、教えてもいい?」 上坂くん?誰それおいしいの? 「上坂くんって誰だっけ?」 「昨日、さやかが最後まで話していた人だよー」 あぁ、彼か。 ならば教え

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伏見の鬼 10

 現金なものだ。  かの黒牛を尻目に、へぇへぇと楼主は低姿勢になり、掌を揉み手しつつ階上へ案内した。  作りは総司の馴染みの店とは違う。  階段も緩くゆったりとして、埃ひとつなく磨かれていた。  四枚引きの襖においても縁は黒檀であろうか、また引手も七宝焼きらしく、白地に紅葉が描かれていた。  鼻息荒く、楼主は声を掛けた。 「・・おいおい、当家随一のお客様や。ご挨拶をしいや」  襖の向こうで衣擦れの音がする。  それが幾重にも繋がり、やがて沈黙した。それを見計らい、楼主は勿体ぶ

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春の終わり、夏の始まり 12

同窓会は、地元の居酒屋で行われた。 入り口の引戸には「本日貸し切り」と書かれた札がかけられている。 カラカラと軽い音を立てて引戸を開けると、唯史を包み込んだのは暖かな照明と賑やかな声の波だった。 中学卒業以来、15年ぶりに見る、懐かしい顔ぶれ。 彼らは唯史の姿を見つけると、いっせいに歓声を上げた。 「唯史やん!めっちゃ久しぶりやなぁ!」 大学進学とともに東京に居を移した唯史は、中学時代の同級生と顔を合わせる機会がほとんどなかったのだ。 同級生たちは唯史を囲み、昔話に花を

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連作短編|揺られて(前編)⑥|明日へ

月の半ばは融資の取り引きも比較的落ち着いている。ここ数日は外出予定もほとんどない。自席でコーヒーを飲みながら今期収支を確認していると、固定電話の液晶がぱっと明るくなり相手が表示された。 『 頭取 』 義父からの電話でよい知らせは滅多にない。重い気持ちで受話器をとると、何やら電話向こうで怒っているのだが、何を言っているのかさっぱりわからない。 「とにかく!今すぐ来なさい!」 この支店から本店まで、営業車で二十分ほどで到着した。 頭取室のドアをノックし部屋に入ると、義父

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長崎異聞 34

 埠頭まで駆け寄った  然るに、時既に遅し。  高雄丸は曳航縄を四方に掛けられて離岸していた。  橘醍醐に暫し遅れてユーリアが駆け込んできた。額に汗を浮かべ、激しく咳込みながら悪態を異国語でついていた。 「・・・あああ。長崎に・・どう・やって私たちは帰るのでしょうか」  自らそれに気づき、荒い呼吸ながらそう言った。  醍醐は虜囚の如き有様の高雄丸から、視線を外さずに慰めた。 「安堵なされ。陸続きに街道を歩けばよいのです。幸いにも陸に船酔いは御座らん」 「積み荷は、積み荷はどう

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居眠り猫と主治医 ㉗病み医者 連載恋愛小説

かみ合わない会話に疲れたのか、祐の言葉がそこで途切れた。 どことなく彼らしくない気がして様子をうかがうと、顔色が悪いし覇気がない。 「あの…体調大丈夫なんですか。クリニック大変だって里佳子さんが」 「大丈夫なわけないし」 いきなり失踪されて寝れるか、と吐き捨てる。 あれほど自己管理が行き届いている人なのだから、ここまで憔悴するのはどう考えてもおかしい。 「…おかんボックスは?」 「作ってない。ひとりじゃ食べる気しない。なにも手につかない」 まるでメンタルをやられた守屋文乃

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【連載小説】ガンズグロウ vol.1「オフ会」

「合コン?!行く行く!」 「いや、正確には合コンじゃなくてオフ会なんだけどね……」 「男何人来るの?」 「6、7名だと聞いてますけど」 「くうぅーっ、久しぶりに燃えてきたぜ!」 「だから、さやか、合コンじゃないって……」 私の友人の一人、レナはパソコンでなにやらアニメやらの活動をしている。 そのレナがオフ会なるものを開くという。 もちろん男つき☆ 彼氏がいなくて干上がってしまったわたしに愛の手が差しのべられたのだ。 これは行かねば…… 当日はつけまもメイ

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恋なんか (詩)

恋はジェットコースターよね 上がったり下がったり、せわしない 今日、幸せに包まれたとしても 明日には気分は急降下 あなたの言葉や仕草に翻弄されてる 心の平安からは、遠ざかる一方 だったら ジェットコースターから降りればいいだけの話し でもね、降りたくても降りられないの あなたがいる限り

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居眠り猫と主治医 ㉕狙われた獣医 連載恋愛小説

すべてを遮断する気でいたけれど、里佳子とは何度か会っていた。 彼女も夏目祐のゴッドハンドにひれ伏したクチで、あっという間に意気投合した仲。そういう人との絆は、切っても切れない。 「ルリルリ元気ですか?」 彼女のインコはマメルリハという種類で、鮮やかなブルーの美女だ。 「ちょっとそれが聞いてよー」 英国王室御用達の超高級シードを買ってみたところ、愛鳥はそれ以外受け付けなくなったという。 「もー、破産。オーガニックって単語、聞きたくもない」 「うわ。真のプリンセス」 「ほんと

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54字の物語 『真夜中万華鏡』 #毎週ショートショートnote【輝き編】

 地元に就職した人が「計画停電?」と言っていた話を聞き……(平常運転やで!)逆もあるのかなあ、と。  新しい環境にやっと慣れてきた頃にやってくるGW。連休明けが苦手な私だからこそ、五月病になってないかな? って心配しちゃう時期でもあります。どうか無理しすぎないでね🙏💦

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春の終わり、夏の始まり 11

同窓会、当日。 12時に羽田空港を発った漆黒のスターフライヤーの機体は、定刻通り関西国際空港に到着した。 関西空港のターミナルに足を踏み入れると、即座に懐かしい匂いと音が唯史を包み込んだ。 有名な大阪土産の豚まんの匂い、そして関西ならではの勢いのある大阪弁。 故郷に帰ってきたという実感とともに、唯史の心の中には安堵感が広がっていった。 関西空港駅から、唯史は電車に乗った。 窓の外は、南大阪の田園風景が広がっている。 田植え前の田んぼからは、春先の土の匂いが漂ってくるように

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伏見の鬼 9

 大門屋は老舗である。  かの店舗前に五条大通りと、この遊郭を分かつ白木の門が立つ。  外籠はこの門で止められ、如何な大名籠であろうと徒歩でそれを潜らなければならぬ。謂わずと知れた娼妓の門抜けを防ぐためである。  総司は肩に隊服の羽織を引っ掛けて、懐手のままで、その構えを眺めている。件の店よりも余程商いに厳しいのか、張り見世には容色の劣る娼妓が既に居並び、艶のない嬌声をあげている。  あら、いい男。  お上がんなさい、お上がんなさい。  あら、眼がうちきに。  細い格子窓を介

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