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【地域で輝く学生vol.51】防災・減災動画「ぼうさい学生ニュース」が完成! ーマイナスをプラスに、等身大の感情を伝えるー学生による動画作成プロジェクトを終えて

近年、頻発する豪雨災害や地震・津波などの自然災害、今後発生すると言われている南海トラフ地震…。「いのちを守る」「被害を軽減」するためには正しい認識と備えが大切です。そこで、兵庫県と大学コンソーシアムひょうご神戸では、2023年度、大学間連携による防災・減災動画作成プロジェクトに取り組みました。その防災・減災動画「ぼうさい学生ニュース」が、2024年3月11日に、兵庫県公式「ひょうごチャンネル(兵庫県インターネット放送局)」https://hyogo-ch.jp/video/5177/  にて、ついに公開されました! ぜひ、ご覧ください。今回は、2023年6月から約半年間に及ぶプロジェクトに参加したメンバーの一人、神戸女学院大学 文学部 英文学科 岩谷優里さんのレポートを紹介します。

参加を決めた理由
神戸の街で生まれ育ち、阪神・淡路大震災による被災を経験した親をもつ私は、意識せずとも災害や防災に考えを巡らせる人間に育ちました。そんな中で知った今回のプロジェクト、これまで抱いてきた災害や防災などに対する思いを発信できる機会に関心をもち、参加を決意しました。

今回のミッション
今回の主なテーマは、助け合いの意識作りや防災リテラシーの向上につながる施策PR動画を学生達で制作することです。期間は約半年間と比較的長期的な計画でした。

初ミーティング 「緊張の顔合わせ」
7月12日の夕方、私は兵庫県災害対策センターにいました。プロジェクトメンバーたちとの初の対面での顔合わせが目的です。現地に早くつき、ロビーで待機していると学生たちが順にやってきました。皆それぞれの思いを抱いています。災害や防災への関心で参加を決めた者のほかに、動画作成という点に興味を持った者など動機は様々でした。個性が異なるメンバーたち、私は今後への期待に胸を膨らませました。

兵庫県災害対策センターでの顔合わせ 1


兵庫県災害対策センターでの顔あわせ 2


こうして始動したプロジェクト、完成に至るまでの半年間には様々な出来事を経験しました。その中でも印象に残っている場面が2つあります。

「マイナスをプラスに、等身大の感情を伝える」
私には当初から抱いていた葛藤がありました。それは、被災経験がなく、防災に関する知識も不十分な一学生に過ぎない私に今回の大役が務まるのかということです。大災害という未知な存在に関して、自問自答を繰り返すも、「実感がわかない」、「他人事として捉えてしまう」などという無責任な言葉ばかり浮かび、仕方がないと思いつつも、自分に嫌気がさしました。しかし、その事実を仲間たちに打ち明けると、彼等も同じような感情を抱いていると知り、安堵を覚えました。同時に、自分のマイナス面をプラスに捉えようという前向きな気持ちが芽生えました。私には災害時の実態や、そこから得られた教訓を伝えることはできません。しかし代わりに、経験が乏しいがゆえの恐怖や不安な感情を理解し、同じような心情を抱える人々に寄り添うことができると確信しました。これを機に、私の中での作品の方向性が明確になりました。当初の私は災害や防災を「人に教える」ということばかりに意識が向いており、それゆえに自身の知識や経験の不足を懸念していました。しかし、大切なことは教えるのではなく、「人に伝える」ということです。そこに正否や決まりはありません。従って、私自身の思いや、そこから生まれる独自の表現を大切にし、自分なりの伝え方をすればいい。それこそに価値があると気づくことができました。

兵庫県危機管理部総務課の方々とのミーティング

「あらゆる要素をひとつに、ニュース番組形態にした理由」
動画形態の決定には頭を悩ませました。その理由は、当初から10分程度の動画作成というテーマは存在したものの、その表現方法は学生たちに委ねられていたためです。これには様々な案が挙がりました。①実際の災害映像や災害経験者へのインタビューなどを含むドキュメンタリー形式、②ドラマ化、③アニメ仕立てなどです。仲間内で意見が割れ、議論の行き詰まりました。①~③全てを生かせる形態はないだろうか。そう考えていた時、以前大学においてベトナムの学生とオンライン上による交流を行った際に、日越両国の災害事情をニュース番組仕立てに動画作成した経験を思い出しました。これであれば、先述した案すべてを盛り込むことが可能です。実際に、作品の冒頭は過去の災害映像を映し出します。次に、半ばから後半にかけては災害時を想定した再現映像が挿入され、最後に、ひょうご備蓄キャンペーンのマスコットキャラクターに声を吹き込みアニメのようなシーンも設けることができました。かつての経験により発想に至ったアイデア、結果的に多様な要素が凝縮された動画の作成を実現につながったと考えます。これは重要な突破口となりました。


動画撮影 「集大成の時」

動画の撮影は、2023年11月半ばに行われました。約半年間に及ぶ準備の集大成を発揮する時です。本格的な機材に囲まれ、緊張感が漂う雰囲気の中撮影は行われました。それまで仲間たちと対面で会う機会は限られており、練習時間も十分とはいえない状況であったため、不安を抱えていました。しかし、そのような事情をものともせず、堂々と個性を光らせ、撮影を進めていく仲間たちの気迫に感情が高ぶりました。彼等に触発され、私もまた一言一句に心を込め発していきました。発信者としての責任に重圧を抱きつつも、その感情にひるむことなく情熱をもってカメラに挑んだ経験は忘れがたい思い出です。夕方に開始された撮影、気づけば深夜をまわっていました。

動画撮影風景 1


動画撮影風景2


動画撮影風景3


おわりに 「苦悩の先にある達成感、兵庫の街に届け」

果たして、どのような作品が完成するのだろう。先の見えないトンネルのなか、暗中模索を繰り返した日々がようやく終わりを迎えました。この動画を生まれ育った街に発信できる喜びで胸がいっぱいです。ここに至るまでには様々なことがありました。名案が浮かばず憤りを覚えた日々の数々、プロジェクトの離脱が頭をよぎったこともありました。しかしそれらを乗り越え、苦悩の先にある達成感に到達することができました。諦めず続けてこられた自分を誇りに思います。

最後になりましたが、この動画の完成に至るまで、本当に多くの方にご尽力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。特に、災害や防災に関してご助言くださった兵庫県危機管理部総務課の皆様、人と防災未来センター皆様、深夜にまで及ぶ動画撮影にご協力いただいた皆様、温かなサポートで私たちの成長を後押しくださった大学コンソーシアムひょうご神戸職員のお二方、そしてこの半年間をともに歩んだ仲間たち本当にお世話になりました。この動画が一人でも多くの方の記憶に刻まれ、少しでも長く世の中で発信が続けられることを願ってやみません。
(文:神戸女学院大学 文学部 英文学科 岩谷優里)

参考:兵庫県「ひょうごチャンネル」 防災・減災動画「ぼうさい学生ニュース」 https://hyogo-ch.jp/video/5177/