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3人に1人の子供が肥満になってしまったうんざりするようなアメリカ社会

今回紹介したいのは2014年にアメリカで公開した映画「Fed Up」アメリカの肥満増加とその背景を追ったドキュメンタリー映画です。残念ながら日本では劇場未公開。DVDも発売ならず。唯一Netflixという動画サイトで字幕での公開がされた模様です。
皆様はアメリカの学校給食をどんなものかご存知でしょうか?
前回紹介させていただいたイタリアの給食はオーガニックフードを中心に使ったイタリア料理のみを主体として、イタリアのマナーに従ったコースで前菜からデザートに向かって順に提供するというものでした。国によって給食もスタイルが大きく異なりますね。
アメリカはカフェテリアスペースがあり、そこで提供されるビュッフェ形式の学食を食べても良いし、持参したお弁当を食べても良い自由なスタイルです。
提供される食事の主な内容はナチョス、ハンバーガー、ピザ、ポテトフライ、フィッシュフライや肉の揚げ物、ボイル野菜、サラダ、生の果物(大体りんごかオレンジ)。
また、売店スペースもあり、内容は日替わりで映画の中に出て来る学校では月曜はパパ・ジョンズのピザ、火曜はフライドチキン、水曜はアービーズのバーガー、木曜はピザハット、金曜はマクドナルド。
構内にはシェイクの機械もあり、スナック菓子やチョコバーなどお菓子も買え、アイスクリームを自由に買うことのできる自販機があります。
牛乳は低脂肪牛乳、普通の牛乳、チョコ味の牛乳、いちご牛乳などから選べます。学校によって揃えは異なりますが低脂肪と通常の牛乳は必ず選択できるようになってます。
実にジャンクな内容です。果たして栄養や健康について知識のない子供たちが自分の健康の栄養バランスを考えて食べるものを選ぶでしょうか?当然多くの子供がハンバーガーやポテトフライ、ピザを食べ甘い牛乳を手に取ります。
肥満問題が初めて上がったのは1977年マクガバン報告です。近い将来アメリカ人の栄養失調の最大要因が肥満に陥るという内容でした。
医療費の高騰が懸念され食料生活指針をまとめます。脂肪分の多い肉や飽和脂肪、コレステロールや糖分の摂取過多が指摘されました。
卵、砂糖、乳製品、牛肉の各業界は売上の低下を恐れました。彼らは団結してマクガバン報告に猛反発し、圧力をかけ、なんと内容を見直すことになりました。
”摂取を控えるべき”という報告は削除され、代わりに低脂肪製品を推奨する内容に変わりました。
80年代になるとこの新しい指針に呼応し新しい市場が誕生します。
あらゆる製品の低脂肪バージョンが登場しました。脂肪を減らすと味が悪くなります。食べられたものではないです。そこで新たに味を魅力的にする方法として糖分を足したのです。
”カロリー3分の1脂肪分50%カット”と明記されていても糖分は通常の2倍。
1977年から2000年にかけてアメリカ人の1日の糖分摂取量は倍増。
青少年の2型糖尿病患者数は1980年0人だったのが2010年には57,638人。
アメリカでの学校給食本格化は第二次世界大戦以降。1946年にトルーマン大統領が学校給食法に署名。栄養不良の国民が増えたことが制度化のきっかけとなりました。
1981年レーガン大統領は経済再生計画により歳出削減及び失業率の低下を目指し学校給食に関わる予算を大幅に削減しました。
アメリカの給食に大きな変化が始まったのはここからです。多くの学校が調理室を閉鎖、ファストフードを導入しコストを削減。
2006年には全国の高校の80%が飲料メーカーと独占契約。
2010年オバマ大統領が学校給食の栄養改善の法案に署名。農務省は給食の栄養改善のため新たな基準を設けました。しかし給食用の冷凍ピザ70%を提供していたシュワン・フードが冷凍ピザを給食に残すよう農務省に手紙で訴えたのです。ミネソタ州の上院議員が動き押し問答の結果ピザは野菜だと認定されました。上にケチャップや野菜で作られたソースなどがかかっていればもはやアメリカの給食ではそれは野菜になってしまうのです。
2012年法改正で農務省は30年ぶりに給食予算を上げます。2ドル80セントだった給食費が2ドル86セントと1人6セント増加。
摂取カロリーも見直し果物と野菜の推薦摂取量を倍に増やしました。

しかし、ビュッフェ形式なんで食べるかどうか選ぶのは子供達自身です。
フライドポテトとピザは野菜のままです。
2012年半数以上の学校がファストフードを取り入れました。
学校には販売契約と引き換えに企業から援助がもらえます。
もはや学校は物資、食料品、資金の援助の甘い蜜から抜け出せません。しかも子供達はジャンクフードを喜び求めています。
アメリカ人の30%が肥満。40%は肥満ではないが代謝障害を抱えていて、合計するとアメリカ人の人口の半数です。
このままいくと20年後にはアメリカ人の95%が肥満に、2050年には3人に1人が糖尿病になります。

日本は平成27年度の学校保健統計調査によれば平成18年以降肥満傾向児は概ね減少傾向にあるみたいです。
子供に食事を提供する栄養士の皆様の役割の重要性を改めて自覚できる映画です。


映画の中に出てくる機能性医学会会長マーク・ハイマン博士がアメリカでのこんな事例を出しました。
180キロ13歳少年校庭で倒れ死亡。9歳少年心臓発作で死亡。8歳で脳卒中。20歳で心臓発作。30歳になる前に腎不全陥り透析が必要な若者が増加。

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