第26章 かみ の たーん
なるべく多くの五感を利用して、妄想に励む事が脳内の対策マニュアルを書き直す手段だと勇者は言う。たかが妄想することくらいで本当に幸せが訪れるのかと僧侶は信じきれずにいた。
僧侶「妄想をするとおっしゃっいましたが、具体的には、どんなことをすれば良いでしょうか。」
勇者「なりたい自分の状況・状態をつぶやき、それを妄想するという感じです。」
僧侶「それだけですか?」
勇者「ええ、私の場合は、毎日就寝前に5分程度行っています。私はこの行為が自己成長や自己実現にも効果的だと感じていまして、不安障害の症状が出なくなった今でも続けています。」
僧侶「なるほど、、よし、やってみますね。うーん、、、"神が現れて、私に力を与え、英雄になり、みんなが私に憧れますように。"」
勇者「あはは、それはそれで楽しい妄想かもしれませんが、効果は薄いでしょう。一つ目の大切なことを伝えますと、自分自身で実現可能な内容にしてください。"神が現れて"といった物理的に実現が困難なことをいれないようにという意味と、"みんなが"という部分にあるような、自分以外の誰かに何かをしてもらうことを期待するものはやめましょう。」
僧侶「例えば、どんな妄想がよいのですか。」
勇者「一つ考えてみましょうか。確か、、今朝、起きた時、不快な感じに襲われたとおっしゃいましたよね。」
僧侶「そうですね、夢の続きか、嫌なイメージが次々と頭に浮かびました。」
勇者「実際には、どうありたいでしょうか。例えば、、過去、もっとも良かった寝起きは、どんな寝起きでしたか。」
僧侶「えー、寝起きですか、、、"起きた瞬間不安がない"というのが理想です。」
勇者「なるほど、妄想する上で、2つ目の大切なことをお伝えしますと、否定ではなく、ポジティブな単語で表現しましょう。"不安がない"ではなく"安心"、"危険がない"ではなく"安全"、"悲しいことがなかった"ではなく"楽しいことがある"という具合です。」
僧侶「なるほど、"起きた瞬間気持ち良い"みたいなことですよね。そんな、良い寝起きなんてしたことあったかな、、、、あっ!友人と旅行に出かける日の朝ですかね。すごくワクワクして起きた気がします。」
勇者「なるほど、では、目をつむり、その時の自分を思い出してみてください。思い出せなければ想像でもよいです。どんな自分が見えますか。」
僧侶「うーん。楽しみすぎてニヤニヤ笑顔でしょうか。」
勇者「良いですね。じゃあ、次に別の感覚器で意識してみましょう。例えば、どんな音が聞こえますか。」
僧侶「音ですか。あぁ、、鳥のさえずりや、川の流れる音、自然の音がするイメージが心地よいです。」
勇者「では、匂いや、味、触覚や温度の感覚なんかは思いつきそうですか。」
僧侶「あぁ、春のちょうど良い気温を感じます。」
勇者「良いですね。では、目を閉じ、リラックスして、まずこうつぶやいてください。"朝、目が覚めると、今日一日が楽しみで自然とニヤニヤしている。"」
僧侶「"朝目が覚めると、今日一日が楽しみで自然とニヤニヤしている。"」
勇者「次にニヤニヤしている光景を思い出しながら再度呟いてください。」
僧侶「"朝目が覚めると、今日一日が楽しみで自然とニヤニヤしている。"」
勇者「次は、音や温度も、より詳細な様子を思い出しながら、それを10回繰り返して下さい。」
僧侶「"朝目が覚めると、今日一日が楽しみで自然とニヤニヤしている。" "朝目が覚めると、今日一日が楽しみで自然とニヤニヤしている。"、、、、」
勇者「はい、お疲れ様です。それで大丈夫です。ちなみに、最後、3つ目の大切なことをお伝えしますと、過去でも未来でもなく、現在形で表現してください。」
僧侶「ははっ、これだけですか。簡単すぎてちょっと不安です。」
[攻略の手引き]
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