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「ホンダ、『脱ガソリン』へ布石 自動運転などに資源集中」に注目!

ホンダ、「脱ガソリン」へ布石 自動運転などに資源集中 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ホンダは苦戦する中国市場の立て直しに動きます。5月から希望退職の募集を始め、現地合弁会社の正社員の14%にあたる約1700人が応募しました。電気自動車(EV)を中心に価格競争が激しい中国でいったん身を縮めてしのぐ一方、米IBMと連携し自動運転の開発を急ぎます。中国の構造改革を進め、次世代技術に資源を集中させて「脱ガソリン」の実現を急ぎます。

「(自動運転関連など)知能化技術の中国勢の進化はものすごいスピードだ」。ホンダの五十嵐雅行中国本部長は中国勢の躍進に驚きます。

中国の新車販売に占める電動車比率は約4割に上りますが、ホンダはEVの車種拡大で後れを取りました。2022年4月からEVブランド「e:N」の第1弾を発売しましたが、第2弾が投入されたのは2024年4月と2年かかりました。

この間、中国の市場環境は激変しました。新エネルギー車最大手の比亜迪(BYD)は販売台数を約3倍に増やしました。政府は新エネ車に対して手厚い補助金制度を設けており、それを受けて中国勢は価格競争力や先端技術を磨き急成長しました。

中国勢のシェアは急伸しています。中国汽車工業協会によると、2020年に38.4%あった中国ブランドのシェアは2024年1〜4月では60.7%まで上昇しています。

厳しい市場環境で、ホンダは苦戦を強いられています。中国の年間販売は過去最高だった2020年度から3年連続で減少しました。

調査会社マークラインズによると、ホンダの中国シェアは2023年度に2021年度比1.1ポイント減の4%に下落しました。1〜4月の中国販売台数は28万台と前年同期比11%減で、日系3社の中では最も大きな減少率となりました。

今回、ホンダは立て直しに向けて、事業の合理化に動きます。ホンダと中国国有大手の広州汽車集団の合弁会社「広汽ホンダ」が5月から希望退職の募集を始めました。工場の稼働率の落ち込みで余剰気味となっていた従業員を減らします。いったん身を縮めて収益を改善させます。

2025年3月期は海外事業などの持ち分法投資利益が100億円と、前期比で91%減る見通しです。中国で構造改革費を計上する影響が出ます。藤村英司最高財務責任者(CFO)は「固定費の減少効果は来期、またはそれ以降に出てくる」と強調します。中国で収益を改善してキャッシュを確保しながら、中国と並ぶ主力市場の北米で攻めに出ます。

ホンダは15日、米IBMとソフトウエアの技術開発に関する覚書を結んだと発表しました。EVに使う半導体の高性能化やソフトの開発期間を短くする共同研究を検討します。

車の価値や性能をソフトが左右する「ソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)」の時代が到来しつつあります。ソフト開発のスピードが世界販売に大きく影響します。IBMとの連携で自動運転などの早期実用化につなげる狙いがあります。

EVコストの3〜4割を占める電池関連にも手を打ちます。日韓の電池材料メーカーと連携し、約1兆7000億円で電池製造から完成車まで生産します。電池コストを下げ、EV価格を早期にガソリン車並みにして対抗します。

北米はホンダの業績をけん引します。2024年3月期の連結決算(国際会計基準)は営業利益が前の期比77%増の1兆3819億円となり、16年ぶりの最高益となりました。

コストパフォーマンスの良いハイブリッド車(HV)で稼ぎます。金利上昇やインフレが進む中で、価格を抑えたい消費者ニーズをつかみます。

足元のEV需要は欧米で減速しています。米テスラは2024年1〜3月期に4年ぶりに減収減益となりました。競合が足踏みするなか、稼ぐ力が向上するホンダにはEVで挽回余地が生まれつつあります。

ホンダは2040年に全ての新車をEVか燃料電池車(FCV)にする「脱ガソリン」を掲げます。中国市場をいち早く立て直し、EV開発を進めて北米事業の収益をさらに拡大できるか。スピード感を持って攻勢をかけられるかが問われます。

ホンダは将来的なSDVの実現に向けて、処理能力や消費電力、半導体設計の複雑化などの課題を解決するため、IBMと次世代半導体・ソフトウェア技術の長期的な共同研究開発に関する覚書を締結しました。

2030年以降、社会全体で知能化/AI技術の活用が大きく加速し、モビリティにおいてもこれらを用いたSDVが主流になると見込まれています。SDVでは従来のモビリティに比べて、求められる処理能力や、それに伴う消費電力の飛躍的な高まりに加え、半導体設計の複雑化が予測されます。両社はこれらの課題を解決し、競争力の高いSDVを実現するために、次世代の半導体やソフトウェア技術を自ら研究・開発する力を手に入れることが重要であるとのことです。

ホンダは今回のIBMとの協業を通じて、世界最高レベルの処理速度と省電力性能を備えたSDVの実現を目指します。自動車が次のステージに移っていく中、他社よりも魅力ある商品展開に期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。