社会を1ミリずつ変えていく
先日、ジェンダーギャップについて考えるオンラインの勉強会に参加した。身近な男女格差について話し合う中で、20代と思われる女性がつぶやいた。
「私はまだ結婚していないが、母は結婚したら安心、結婚したらなんとかなると思っている。そう言われるたびに、このままじゃダメなのかと思う」と。するとほかの年配の参加者も続けた。「結婚しても子どもがいないと、肩身が狭い。老後の話をしても、周囲から自己責任だといわれる」と。
そんな話を聞きながら自分も若いころ、父に「結婚はまだか」と言われ、イラっとしたなあと思い出した。かつて映画をきっかけに流行った「ありのままで」という歌詞。その後令和の時代になったのに、「ありのままで」を許容する社会は広がりを欠く。
女性は結婚して子どもを産むことが幸せ、そんな物差しはずっと変わっていないように思う。だが日本は本当に結婚、出産で女性が幸せになれる社会になっているだろうか。
35〜54歳女性の半数が非正規
6月21日に世界経済フォーラム(WEF )が発表した世界各国の「ジェンダーギャップ指数」の2023年度版。日本は総合ランキングで146カ国中125位。前回から順位を九つ落とした。しかも、先進7カ国(G7)では断トツの最下位だ。特に政治や経済の分野での遅れが目立つ。
中でも気になるのが女性管理職率の低さだ。内閣府が今年6月に作成した全国女性の参画マップによると、企業や組織の管理職に占める女性の割合は15.7 %と2割にも満たない。家事や子育ての比重が女性に偏り、仕事との両立が困難なことが背景にある。その証拠に結婚出産期にあたる年代に女性の労働力率がいったん低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇する、いわゆる「M字カーブ」は、年々なだらかになっているものの解消はしていない。2020年の就業状態等基本集計結果によると、女性の労働力率は25〜29歳が最も高く87.0%だが、子育て世代が多い30〜34歳になれば79.6%、35〜39歳は78.2%と下落する。40〜44歳で80.8%と多少回復するもののその後も20代の水準には回復しない。
さらに令和3年版の内閣府男女共同参画白書によれば、35~44歳の女性の非正規雇用者の割合は49.5%、45~54歳でも57.7%で、約半数が非正規雇用。女性が出産や子育てで離職したのちに、再び正規雇用で働く社会構造が成り立っていないことが見て取れる。つまり、多くの女性が結婚や子育てを諦めてキャリアアップを図るか、家事や子育てを優先しながら働くか、そんな選択を迫られていることになる。
「分断しない社会をつくりたい」
私自身は結婚して子どもを産んだ。その人生に後悔はないが、子育てを理由に転勤を断ったためにその後希望していた部署に行けなかったり、昇進の機会を逃したりしたことはあり、「結婚しなかったら、もっと好きなだけ働けたら、別の選択肢があったのでは」と思ったことは数知れない。
冒頭の勉強会。ため息が漏れる中、「でも」と最後に参加者たちが言葉を続けた。「このままじゃだめだよね」「家族がいる、いない、子どもを産む、産まないで分断しない社会をつくりたい」「もっと横のつながりをつくりたい」
地方都市の小さな勉強会で参加者が連帯したところで社会はすぐに変わらない。でも、その取り組みがつながって線になればいまの「当たり前」が1ミリは動く気がする。そして大切なのはその積み重ねだ。
母親である前に、妻である前に、女性が一人の人間として、自分らしくいられる時代のために、できることを探し続けたい。未来を諦めたくない。
(空)
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